表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/143

7.夜の闇の、その中で。

ちょっと修正入れてて遅くなりました。

申し訳ないっす_(:3 」∠)_








 一人の青年の声がした。



「あはは、ありがとうね。お姉さん!」

「こんなこと、今回だけだから」

「うん、分かってる」





 それに応えたのは、若い女性。

 淡々とした口調の中にも、どこか優しげな色を感じさせる声だった。



「僕の母さんも、きっとお姉さんみたいに優しかったんだろうね」

「知らない。アタシは、別に優しくもない」

「ううん、優しいよ。だって――」



 それを聞いた青年は、楽しげにそう言う。

 女性は否定した。それでも、構わず口にした青年の言葉に……。




「――誰かのために、自分が嫌いなことができるんだから」

「…………」




 


 何も言い返せず、黙り込むのだった。









「何かが、変だ。それなのに……」



 手紙を受け取って、宿に戻ってきた。

 どうして、この時刻にリコさんがあの場所にいたのか。そして、突然に飛び出していったアルミンはどこにいったのか。分からないことばかりで、頭がこんがらがりそうだった。


 それに、どこか不思議な感覚もある。

 ボクが先ほどまで話していた相手は本当に、領主様の子供なのか、と。

 そこまで考えてから、ボクは手渡された手紙に視線を落とした。そして、



「……駄目だ。落ち着かない」



 堪えられなかった。

 どうにも胸がざわついて、落ち着かない。いまのうちに、寝る前に手紙の修繕をしなければならない。そんな焦燥感にも似た何かに背中を押されるようにして、ボクは一心不乱に手紙の修繕を行った。劣化した文字は次第に鮮明になり、意味を取れるようになっていく。


 それでも、あえて最後まで読まないでいた。

 中途半端な気持ちで挑んではいけないと、そう思ったから。


 そして――。




「ふぅ……」



 ようやく修繕が完了した時には、すっかり夜が明けていた。

 そうやって初めて、内容に目を通す。すると、



「……え?」



 ボクの頭の中には『あり得ない』という言葉がよぎった。

 しかし、修繕し終えた物語は真実だと告げている。不思議な感覚は依然として胸の中に残っていて、その『あり得ない』と共存していた。


 手の中にある二通の手紙。

 それらは、どちらも大切なもので……。





「信じて、いいんだよね。……アルミン?」




 だとしたら、少しでも早く。

 何もかもを失ったと思っている彼に、届けなければいけない。








 そして、伝えなければいけなかった。

 もう『顔を思い出せない』不思議な青年の想いを……!





 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お待ちしていました、これからも楽しみにしてます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ