7.夜の闇の、その中で。
ちょっと修正入れてて遅くなりました。
申し訳ないっす_(:3 」∠)_
一人の青年の声がした。
「あはは、ありがとうね。お姉さん!」
「こんなこと、今回だけだから」
「うん、分かってる」
それに応えたのは、若い女性。
淡々とした口調の中にも、どこか優しげな色を感じさせる声だった。
「僕の母さんも、きっとお姉さんみたいに優しかったんだろうね」
「知らない。アタシは、別に優しくもない」
「ううん、優しいよ。だって――」
それを聞いた青年は、楽しげにそう言う。
女性は否定した。それでも、構わず口にした青年の言葉に……。
「――誰かのために、自分が嫌いなことができるんだから」
「…………」
何も言い返せず、黙り込むのだった。
◆
「何かが、変だ。それなのに……」
手紙を受け取って、宿に戻ってきた。
どうして、この時刻にリコさんがあの場所にいたのか。そして、突然に飛び出していったアルミンはどこにいったのか。分からないことばかりで、頭がこんがらがりそうだった。
それに、どこか不思議な感覚もある。
ボクが先ほどまで話していた相手は本当に、領主様の子供なのか、と。
そこまで考えてから、ボクは手渡された手紙に視線を落とした。そして、
「……駄目だ。落ち着かない」
堪えられなかった。
どうにも胸がざわついて、落ち着かない。いまのうちに、寝る前に手紙の修繕をしなければならない。そんな焦燥感にも似た何かに背中を押されるようにして、ボクは一心不乱に手紙の修繕を行った。劣化した文字は次第に鮮明になり、意味を取れるようになっていく。
それでも、あえて最後まで読まないでいた。
中途半端な気持ちで挑んではいけないと、そう思ったから。
そして――。
「ふぅ……」
ようやく修繕が完了した時には、すっかり夜が明けていた。
そうやって初めて、内容に目を通す。すると、
「……え?」
ボクの頭の中には『あり得ない』という言葉がよぎった。
しかし、修繕し終えた物語は真実だと告げている。不思議な感覚は依然として胸の中に残っていて、その『あり得ない』と共存していた。
手の中にある二通の手紙。
それらは、どちらも大切なもので……。
「信じて、いいんだよね。……アルミン?」
だとしたら、少しでも早く。
何もかもを失ったと思っている彼に、届けなければいけない。
そして、伝えなければいけなかった。
もう『顔を思い出せない』不思議な青年の想いを……!




