6.愛する者を失った領主。
明日の更新、少し修正入れるので遅れるかも。
申し訳ない<(_ _)>
一人の男が、辺境の街へとやってきた。
しかし自身の意思をもって、ここへたどり着いたのではない。王位継承の争いに敗れ、数名の臣下、そして最後まで息巻いていた母と共にガーディスに流れてきた。
決して恵まれた門出ではない。
事実、意気消沈した彼の母は早くに亡くなってしまった。
街で唯一の肉親を失った男は、途方に暮れながらも人々のために尽力する。それが王族である自分の務めだと信じていたから。そして、ある時のことだった。
『領主様、今年も綺麗な花が咲きましたね!』
『あぁ、そうだな……』
領主となった彼は、一人の女性に恋をした。
自身の屋敷に奉公にきていた人で、清水のように澄んだ声が美しい女性だ。彼女と共にいると、不思議と心が安らいでいく。
そして民のために粉骨砕身、一所懸命に尽くす彼に女性が惹かれるのも自然な流れだった。二人はいつしか将来を語り合うようになり、その間には一人の男児が誕生する。
不幸続きだった人生の中。
領主がようやく手に入れた幸せだった。しかし、
『どう、して……』
何故、彼の幸福は永く続かないのだろうか。
子供を産み、みるみるうちに弱っていく妻を見ながら領主は、
『なぜ、なにもかも、こぼれおちていく……』
水泡のように儚い、彼女の命の終わりを見送ったのだった。
◆
「………………」
その話は、あまりに悲しいものだった。
ノア様の心を蝕んでいるのは、なにも王位継承争いに敗れたことだけではない。むしろそれはキッカケに過ぎず、問題はもっと別の場所にあるのだった。
「父さんは今でも、自分は独りだと思い込んでいるんだ」
アルミンはそう語ると、悲しげに目を細める。
たしかに、彼の言う通りなのかもしれない、そう思った。だけど、
「キミは、どうなの……?」
「ん、僕のこと?」
絶望するには、まだ早い。
何故なら、ノア様にはアルミンという子がいるのだ。
いま目の前にいる青年は、孤独に苛まれる彼の心を救う助けになる。
「ねぇ、アルミン。キミから――」
「あーっと!? そういえば、用事を思い出したなぁ!!」
「…………へ?」
そう信じて、声をかけようとした。
しかし、彼はそれを遮るように言って部屋から出ようとする。
ドアノブに手をかけて、唖然とするこちらを振り返って小さくこう言った。
「僕は、駄目なんだ」――と。
意味は、分からなかった。
だからそれを訊ねようと立ち上がると、彼は――。
「待って! アルミン!!」
一目散に、部屋を飛び出していった。
全力で追いかけても、まるで追いつけない。切れる息に耐え切れずボクが立ち止まったのに対して、青年は変わらず軽やかな足で夜闇の中に溶けていった。
光のない水の都の只中で、ボクは肩を上下に揺らして汗を拭う。
「駄目って、どういう……?」
そして、疑問を口にした。
彼という支えがあればノア様は救われるはずなのに。
そんな考えが拭いきれずに、ボクは困惑の声を漏らし続けていた。すると、
「あの……」
「……え、リコさん?」
思わぬ人物に、声をかけられる。
薄暗い中でもどうにか目を凝らすと、そこにいたのはリンドさんの仲間である女性。リコさんは少しだけ緊張した面持ちで、ボクに何かを差し出してきた。
「これ、いまの男の子が落としていったみたいだけど」――と。
それは一通の手紙。
だがしかし、それもまたやけに古びている。
ボクは手に取って宛名と、差出人を確認した。そして、
「アルミンから、ノア様へ……?」
また小さく、首を傾げるのだ。
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