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6.愛する者を失った領主。

明日の更新、少し修正入れるので遅れるかも。

申し訳ない<(_ _)>







 一人の男が、辺境の街へとやってきた。

 しかし自身の意思をもって、ここへたどり着いたのではない。王位継承の争いに敗れ、数名の臣下、そして最後まで息巻いていた母と共にガーディスに流れてきた。


 決して恵まれた門出ではない。

 事実、意気消沈した彼の母は早くに亡くなってしまった。

 街で唯一の肉親を失った男は、途方に暮れながらも人々のために尽力する。それが王族である自分の務めだと信じていたから。そして、ある時のことだった。



『領主様、今年も綺麗な花が咲きましたね!』

『あぁ、そうだな……』



 領主となった彼は、一人の女性に恋をした。

 自身の屋敷に奉公にきていた人で、清水のように澄んだ声が美しい女性だ。彼女と共にいると、不思議と心が安らいでいく。

 そして民のために粉骨砕身、一所懸命に尽くす彼に女性が惹かれるのも自然な流れだった。二人はいつしか将来を語り合うようになり、その間には一人の男児が誕生する。



 不幸続きだった人生の中。

 領主がようやく手に入れた幸せだった。しかし、




『どう、して……』




 何故、彼の幸福は永く続かないのだろうか。

 子供を産み、みるみるうちに弱っていく妻を見ながら領主は、




『なぜ、なにもかも、こぼれおちていく……』




 水泡のように儚い、彼女の命の終わりを見送ったのだった。











「………………」




 その話は、あまりに悲しいものだった。

 ノア様の心を蝕んでいるのは、なにも王位継承争いに敗れたことだけではない。むしろそれはキッカケに過ぎず、問題はもっと別の場所にあるのだった。



「父さんは今でも、自分は独りだと思い込んでいるんだ」



 アルミンはそう語ると、悲しげに目を細める。

 たしかに、彼の言う通りなのかもしれない、そう思った。だけど、



「キミは、どうなの……?」

「ん、僕のこと?」



 絶望するには、まだ早い。

 何故なら、ノア様にはアルミンという子がいるのだ。

 いま目の前にいる青年は、孤独に苛まれる彼の心を救う助けになる。



「ねぇ、アルミン。キミから――」

「あーっと!? そういえば、用事を思い出したなぁ!!」

「…………へ?」



 そう信じて、声をかけようとした。

 しかし、彼はそれを遮るように言って部屋から出ようとする。

 ドアノブに手をかけて、唖然とするこちらを振り返って小さくこう言った。



「僕は、駄目なんだ」――と。




 意味は、分からなかった。

 だからそれを訊ねようと立ち上がると、彼は――。



「待って! アルミン!!」



 一目散に、部屋を飛び出していった。

 全力で追いかけても、まるで追いつけない。切れる息に耐え切れずボクが立ち止まったのに対して、青年は変わらず軽やかな足で夜闇の中に溶けていった。

 光のない水の都の只中で、ボクは肩を上下に揺らして汗を拭う。



「駄目って、どういう……?」



 そして、疑問を口にした。

 彼という支えがあればノア様は救われるはずなのに。

 そんな考えが拭いきれずに、ボクは困惑の声を漏らし続けていた。すると、




「あの……」

「……え、リコさん?」



 思わぬ人物に、声をかけられる。

 薄暗い中でもどうにか目を凝らすと、そこにいたのはリンドさんの仲間である女性。リコさんは少しだけ緊張した面持ちで、ボクに何かを差し出してきた。



「これ、いまの男の子が落としていったみたいだけど」――と。




 それは一通の手紙。

 だがしかし、それもまたやけに古びている。

 ボクは手に取って宛名と、差出人を確認した。そして、



「アルミンから、ノア様へ……?」





 また小さく、首を傾げるのだ。




 


面白かった

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