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5.問題発生。








「う、うーん……どうしましょうか」

「あそこまでハッキリと拒否されるとは、私も思っていなかったな。王位継承争いの際に何があったかまでは、さすがに知らないからね」





 日がすっかり落ちた夜のこと。

 ボクたちは用意された宿で、昼の出来事を話していた。



「領主様に取り次いでもらうより前に、門前払いなんてな」

「うん……」



 ジャックの言った通り。

 ボクたちは領主様の臣下の人々から、やんわりと追い払われたのだった。しかし完全な拒絶ではなく、どこか含みがあるような言い方で。

 その中で何度も語られたのは……。



「領主様が塞ぎ込んでる、って言っていたよね」



 ガーディスを統治する領主――ノア様はいま、心に深い傷を抱えているのだ、ということ。それ故に外界との接触を極力避けている。

 そのような状態である彼に、仇敵の使者を会わせる、というのは無理な話。臣下の人々も苦し紛れに色々と言っていたが、主を想う気持ちは痛いほど伝わってきた。



「でも、原因はなんだろう。教えてもらえない、かな……?」

「難しいだろうね。臣下たちの様子を見る限りは」

「ですよね……」



 ボクは腕を組んで考える。

 しかし、解決策はちっとも浮かんでこない。



「もしかしたら、手紙の内容がヒントになるかもしれないけど……」



 そこでふと、修繕途中の手紙のことを思い出した。

 陛下からノア様へ宛てた手紙。すなわち、肉親へと向けた言葉だ。



「まずは、これを何とかしないと、かも」

「なるほど」



 ボクが手紙を示すと、リンドさんは納得したように頷く。

 そして、他の仲間たちに目配せをしてこう言った。



「それなら、ライルくんの作業を邪魔してはいけないね。ボクたちは、各々の部屋に戻って休息を取ることにしよう」

「はい。分かりました」



 つまり、今日はここまで。

 ボクは同意して、みんなが部屋を出て行くのを見送った。そして改めて、陛下から預かった手紙に向き合う。修繕道具を取り出し、作業を開始しようとした。

 だが、その時である。




「もしもーし! キミが、国王陛下からの使いかな?」

「…………へ?」




 見知らぬ青年が部屋の入り口前に立っていることに、気が付いたのは。

 あまりに物音がしなかったので、ボクは呆気に取られてしまう。そうしていると、相手はにこやかに笑いながらこう名乗るのだった。





「初めまして。僕の名前はアルミン――」





 あっけらかんとした口調で。





「この街の領主、ノアの息子だよ!」――と。





 







「まさか、息子さんが堂々と現れるなんて……」

「あはは! 驚いたかい?」

「……それは、うん」



 アルミンと名乗った彼は、まるで自室かのようにベッドに腰かけて笑った。あまりに奔放な雰囲気に圧倒されて、なかなかツッコミが追いつかない。

 だけど、そんなボクの様子を楽しむようにアルミンは訊いてきた。



「それで、ライルくんは父さんに手紙を届けたいんだよね?」

「え、あ……そうだけど」



 完全に会話の主導権を取られつつ。

 ボクがそう答えると、彼は途端に難しそうな表情で腕を組んだ。



「むむむー? なるほど、それは難しいぞ……」

「その、いったい何が難しいのかな」



 そして、そんなことを言うので意を決して訊いてみる。

 するとアルミンは、一つ息をついて。



「これから話すことは、キミの仲間には言っちゃ駄目だからね?」



 また表情を変えて。

 静かに、ノア様の身に起きたことを語り始めたのだった。




 


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