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4.辺境の街、ガーディス。

新作も応援よろしくね。

職業ものとして、通じるところは……ある???









 ガーディスへの旅は片道一週間と少し。

 平坦な道を進むので、そこまで大きなストレスはなかった。それに、リンドさんたちが常に目を光らせているからだろう。夜盗の類は出現せず、出てくるのは弱い魔物だけ。

 トラブルらしいトラブルもなく、ボクたちは目的地に到着した。

 そして、街の門まで到達した時だ。



「ふむ。王都からの使者、か……」

「あれ……なにか、問題ありましたか?」

「いいや。問題はない、通って良いぞ」

「……んん?」



 ほんの少しの違和感。

 それを覚えつつ、ボクたちはガーディスへと足を踏み入れた。

 すると一番に目に入ってきたのは、見たこともないほど大きさの噴水だ。しかも湧き上がる水はとかく澄み渡っており、跳ねる水飛沫が心地よい。

 さすがは『水の都』と称されるだけはあると思った。



「凄い、ですね……!」

「そうだね。私も初めてきたが、これはシエスタへの良い土産話になる」



 感嘆の声を上げると、リンドさんが同意するようにそう返してくれる。



「それに、水の上に浮いているみたいで不思議ですね。建物の意匠も独特だけど、計算され尽くしたように均整が取れている!」

「ははは、ライルくんにとっては夢の街かもしれないね」

「あ、あはは……」



 それが嬉しくて、歩きながら思わず饒舌になってしまった。

 ボクは恥ずかしくなって頬を掻く。そして、ようやく気付くのだ。



「あ、でも――」




 周囲の人々の視線を受けて。




「ボクたち、あまり歓迎されていないみたいですね」――と。




 なんだろう、と首を傾げた。

 門番の人もそうだったが、王都からやってきた、というのが珍しいのだろうか。でも交易なんかは盛んに行われているし、少なくとも人の出入りはあるはず。

 それなのに街の人々は、ボクらを見るとどこか気難しい表情を浮かべるのだ。



「歓迎されていない、というより。腫物扱い、だな……」

「……腫物扱い?」



 頭を悩ませていると、そう声をかけてきたのはジャック。

 彼は少しだけ不満そうな顔をしながら、周囲に強い視線を送って牽制していた。しかし、腫物扱いとはどういうことだろうか。



「きっと、重要なのは国王陛下からの『使者』という部分かな。ライルくんは、今回の依頼について陛下からどのくらい話を?」

「内容ですか? うーん……」



 ボクはそれを受けて、依頼内容を思い出す。

 陛下曰く、辺境の領主へと手紙を届けてほしい、とのことだった。手紙の内容はまだ判然としていないが、どうやら肉親に宛てたものであるのは察している。

 リンドさんは考え込むボクに、小さく頷いてこう補足をしてくれた。



「ここの領主様はね、陛下の弟なんだ」

「弟……?」



 それを聞いて、ボクは自分の作業との一致を感じる。

 その上で訊き返すと彼はまた小さく頷いて、二人だけにしか聞こえない大きさの声でこう説明してくれた。




「陛下たちが若い頃、王位継承争いがあったんだ。異母兄弟だった二人のどちらが跡継ぎとなるか、それぞれに派閥ができた。特にその中で仲が悪かったのは、陛下たちの母君だった、ということみたいだけどね」

「なるほど。それで……」



 そこまで聞いて、大まかな事情は察する。

 今のような事情があったのでは、歓迎されないのも無理はなかった。つまるところ、ボクたちは敬愛する領主様の敵とも呼べる相手からの使者、なのだから。

 街の人々も噂を聞いて、自然とボクたちから離れていった。



「でも、依頼はしっかりと果たさないと!」

「その通りだね」



 しかし、ここで引き返すわけにはいかない。

 ボクがそう意気込むと、リンドさんはそう返してくれた。その時、



「あれ、リコさん。どうしたんですか?」

「え、あぁ……」




 彼のパーティーメンバーの一人。

 魔法使いのリコさんが、人混みの一角をジッと見て立ち止まっていた。その意味が分からずに訊ねると、彼女はハッとした様子でこちらを向く。

 そして、何度か首を左右に振ってから答えるのだった。




「気にしなくていい。ただ街の景色を眺めていただけだから」

「そう、なんですか……?」



 とてもそんな風には見えなかったけど……。

 そんな言葉を呑み込んで、ボクはひとまず納得することにした。

 事の本題とは無関係なのだから、まずは領主様の屋敷へと向かおう。



「それじゃ、行きましょう!」




 そう考え、ボクは率先して号令をかけた。

 リンドさんの仲間たちは、口々に賛同の声を上げてくれる。





 ただ一人。

 どこか上の空なリコさんを除いて……。




 


https://book1.adouzi.eu.org/n7845hs/

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