2.古びた手紙。
「突然の呼び出し、誠に申し訳ないな。ライル・ディスガイズ」
「い、いえ! 大丈夫です!!」
国王陛下の私室を訪ねると、彼はいつもより厳しい表情でそう言った。
昨日の夕刻。急遽として届けられた依頼状にもあったが、どうやら相当の悩みのようだ。ボクは一つ覚悟を決めてから、静かに息をついた。
すると、その間を見計らったように国王陛下はこう切り出す。
「修繕師ライルよ。少しばかり、使いを頼めるか」
「使い、ですか?」
そして出てきた内容に、思わず首を傾げてしまった。
てっきり修繕の依頼についての話かと思えば、どこに何かを届けるのだろうか。そう考えていると国王陛下は、引き出しの中から一枚の紙を取り出した。古びた手紙、だろうか。
それを机の上に置くと、腕を組んでこう続けた。
「これは、とある辺境領主に宛てたものだ。ずっと出そうと秘めていたのだが、ついにこの歳になるまで時が流れてしまった」
「拝見してもよろしいですか……?」
「あぁ、良いぞ。いずれにせよ、お前に依頼をすると決めたのだからな」
「そ、それでは失礼します」
手紙を受け取って、慎重に中身を確認する。
宛て先は彼の言ったように、王都から離れた辺境の領主へ向けたもの。具体的な内容は、文字が掠れてしまい読み取れなかった。
ただ、端々に見ることのできる言葉を拾うと――。
「陛下……これは、もしかして……?」
「すまぬ。詮索はしないよう、頼みたい」
「…………はい」
ボクは口にしかけた言葉を呑み込んで、静かに頷いた。
その様子を確認して、陛下は改めてこう訊いてくる。
「それでは、再度問うが。――受けてくれるか?」
神妙な面持ちで。
ボクは陛下の言葉の後に、一つゆっくりと息をついてから答えた。
「分かりました。この手紙は必ず、ボクが修繕して届けます」――と。
8章終了まで、明日から1話ずつ更新予定です。
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