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9.家族の絆だった銀時計。

新作の応援もよろしくです!

執筆意欲が高まります!!

また、コミカライズの次回更新は25日の模様です!!









「そう、だったんですか……」




 アルフォンスさんの話を聞いて、ボクは言葉が出なかった。

 いいや。正確に言えば何も言うべきでないと、そう思ったのだ。これは部外者が口を挟むべき内容ではないのかもしれない、そう考えてしまって。

 ただ、そんなこちらにアルフォンスさんは語るのだ。



「あぁ、その銀時計は妻との思い出の品でね。恥ずかしい話なんだが、婚約の際に私から彼女に贈ったものなんだよ」

「婚約の、ですか?」

「そうだね。あの時は、クサイ台詞を使ったものだよ」



 そう言うと、彼は真っ暗な空を見上げて口にする。




「この銀時計のように、私とキミで幸せな時間を刻み続けよう」――と。




 それは、きっと本心だったのだろう。

 しかしいつしか、歯車が少しずつズレ始めてしまった。

 そして、皮肉にも思い出の銀時計が壊れた瞬間に、彼の家族は……。



「は、はは……。本当に、私は馬鹿だったよ」



 そこまで語ってから、アルフォンスさんはまた自嘲気味に笑うのだ。

 きっと、いまのような反省を幾度となく繰り返してきたのだろう。自分の犯した過ちを悔い続けて、叶わぬ贖罪の念を自身に抱き続けて。

 そして今は、コルネがそれを――。



「もしかして、コルネが直したいものって……?」

「そう、きっとその銀時計だ」

「………………」



 アルフォンスさんは語っていた。

 コルネは、二人の不仲の原因が自分にあると勘違いしている、と。

 一つ一つがバラバラになっていたピースが、次第に形となって全貌を見せ始めた。つまりあの少年が、意固地になって修繕の技術だけを求めているのは……。




「………………」




 ――家族の絆を元に戻したい、ということか。



 その結論に至って、ボクは息を呑んだ。

 コルネの想いはきっと、とても純粋なものに違いないだろう。

 しかし、たとえ銀時計が直ったとして、その想いが果たされることはあるのだろうか。そこまで考えて、ボクは胸の奥に強い焦燥感、あるいは嫌悪感を抱いた。


 何故なら、分かっていたから。

 答えは出ていた。


 コルネの願いはきっと、届くことはない。

 だって、でも、だって――。




「ライルくん……?」

「え……」

「どうしたんだい。ずいぶん、顔色が悪いけれど」

「あ、あぁ……。すみません、大丈夫です」




 思考の渦に囚われそうになった時。

 心配そうなアルフォンスさんの声に、引き戻された。

 気付かぬうちに、呼吸すら忘れていたらしい。額には汗がにじんで、頬を伝っていた。それを拭ってから、ボクは深呼吸を一つ。

 そして、アルフォンスさんに訊ねた。



「……アルフォンスさん。一つだけ、教えてください」

「なんだい……?」




 舌先が緊張で乾く。

 それでも、ボクはその問いを口にした。





「貴方は、どう思っているんですか? その――」








 その問いは、夜の空気の中に溶けて。

 自分の声なのに、ひどく遠くに感じられたのだった。




 


あ、面白かったら☆評価など!

<(_ _)>


https://book1.adouzi.eu.org/n8248hn/

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