7.アルフォンスの過去。
この部分は余談でもあるので、読み流し可(?)です(*‘ω‘ *)
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あと、ページ下部に新作のリンクあります。
――どん底だった。
アルフォンスは王都の学園を優秀な成績で卒業し、王城にて勤めていた。俗にいう出世街道というものを歩んでおり、誰もが彼に一目を置いている。アルフォンスもそれを理解していたし、人々の期待に応えようと励んでいた。
結婚し子供も生まれた。
公私ともに順調だ。
だが同時に、順風満帆な人生を歩む彼のことを妬む者がいた。
「お前、この仕事やっておけって言ったよな?」
「え、それは先輩が請け負ったものでは――」
「うるさい! 口答えするな!!」
災難だったのは、その相手が自分よりも身分が上だったこと。平民出身であるアルフォンスのことを良く思わない人々は一定数いたのである。体裁の上では身分関係なく扱われていた。しかしながら、それはあくまで表面的な話。
貴族という存在がある以上、彼に勝ち目はない。
だが、アルフォンスは不幸なことに生真面目な性格をしていた。そのため、
「こんなの、おかしいだろ! ――不公平だ!!」
真正面から、その不合理に立ち向かう。
不器用だと言った方が、あるいは適切なのかもしれない。しかし、その不器用ながらも実直な性格故に自分は逆境を跳ね返してきた。そんな自負が、アルフォンスの中にもあったのだろう。だからこの問題も、一所懸命に戦えば解決できる。
そう思った。
それが大きな失敗、その始まり。
気が付けば、仲の良かった同僚も離れていた。
自分にまで危害が及ぶのではないか。そう考えて、誰もがアルフォンスを腫物のように扱うようになっていった。貴族である先輩や上司は、そんな彼を見て嘲笑う。
何もかもが、崩れていく。
自分を気遣ってくれた相手も、上司に告げ口をし始めた。
誰も信じられない。
誰も頼れない。
アルフォンスの精神は、次第に追い込まれていった。
だから、その日がくるのは遅かれ早かれ必然だったのかもしれない。
「おい、アルフォンス……? なんてこと、してくれたんだ!!」
「…………!?」
ある日、彼は仕事で大きなミスを犯した。
注意力散漫による単純な記載漏れ。しかしそのことによってもたらされた損害は、国の運営に影響を与えるほどの大きさだった。
言い逃れは不可能。
どのような道筋を辿っても、責任はアルフォンスにあったのだから。
「ふざけんなよ、お前……!」
その時には、もう彼に言い返すだけの力は残っていなかった。
周囲に頼れる相手はいない。
誰もが自分を監視する敵のような場所。
虚勢を張り続けるにも、限度というものがあったのだ。だから、
「お前は、今日限りでクビだ!」
その宣告に抗う勇気も気力も、そして体力もなかった。




