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6.コルネの両親。

コミカライズ次回更新は18日ですね(*‘ω‘ *)

原作者も一人の読者として楽しみつつ、修繕師という物語を最大限伝えられるように頑張っています。応援よろしくお願いいたします!!









「……そう、か。最近コルネが何をしているのかと思えば、なるほど」




 コルネに聞かれるわけにはいかない。

 そう考えたボクとアルフォンスさんは、外を歩きながら情報を交換しようとしていた。家から少し離れたところで、先に口を開いたのはアルフォンスさん。

 コルネの父は静かにそう漏らすと、心痛な面持ちでボクに言った。



「本当に、キミには迷惑をかけたね。コルネは少し頑固というか、これだと決めたことは曲げないから苦労しただろう?」

「それは……はい、それなりに」

「ははは。別に遠慮する必要はないよ、これでも私はあの子の父親だからね」

「………………」



 あまりに真っすぐな謝罪に、逡巡するも素直に答える。

 するとコルネの父親は気にした素振りも見せず、柔らかな笑みを浮かべて言うのだった。ただ気になったのは、そう口にして笑う彼の表情に陰があるように見えること。

 息子のことを理解しているできた父親。

 ただ、その奥から滲み出ていたのは後ろ暗い思いに感じられた。



「……キミは、どうやら他人の機微に敏感なようだね」



 そんな考えが、アルフォンスさんにも伝わったらしい。

 彼は足を止めるとそう言って、どこか悲しげに目を細めて眉間に皺を寄せた。数歩先でボクも足を止め、相手の言葉を待つことにする。

 そうするとアルフォンスさんは、またあの笑みを浮かべて提案した。



「立ち話もアレだからね。近くの公園に行かないかい?」









「恥ずかしい話なのだけど、私と妻――いや、元妻のアイネは離婚していてね」




 すっかり日の落ちた公園で。

 長椅子に並んで腰かけるアルフォンスさんは、そう切り出した。両手を結んで口元を隠しながら、慎重に言葉を選びながら。彼はただ、事実を語るのだ。



「原因は、私の浮気と暴力。言い訳にしかならないが、当時の私は仕事で大きなミスをして職を追われてね。酒に溺れて、とかく自堕落な暮らしをしていたんだ」



 自分を肯定するでもない。

 むしろその声色から感じられたのは、過去の自分への恨みにも似たような感情だった。殺したいほど、と例えても良いのかもしれない。アルフォンスさんは自分の身の上を打ち明けるたびに、結んだ手を強く握りしめていた。家々から零れる頼りない明かりの中よく見れば、そこには微かに血がにじんでさえいる。



「先に断言しておくが、私とアイネの離婚にコルネは関係ないんだ。あの子は私のような馬鹿な父親を持ったばかりに、幼い日のほとんどで両親の喧嘩を目の当たりにしてしまった。……本当に、悔やんでも悔やみきれないよ」



 そう語って、彼は唇を噛んだ。

 ボクは嫌というほどに伝わってくる悲痛さに、思わずたじろいでしまう。しかし、この先の話は自分から訊ねなければ進むことはなかった。

 だから覚悟を決め、涙なく泣く彼に向けて言う。




「それがコルネの件と、どんな関係があるんですか……?」

「…………あぁ、そうだね」




 すると、アルフォンスさんもまた覚悟を決めたのだろう。

 ボクの顔をジッと見つめながら、答えるのだった。




「私の憶測も入るが、おそらくコルネは――」




 あの少年が修繕の技術に拘る理由。

 その可能性を……。




「私とアイネの離婚の原因が、自分にあると考えているんだ」






 


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