5.コルネの家庭。
うおおお_(:3 」∠)_
毎日更新がんばれ、わたしぃぃぃ!!w
「何度も言っているでしょう! 私はもう、あの人に会いたくない! ――思い出すだけで、気分が悪くなるんだから!!」
「それは、そうかもしれないけど……でも!!」
思わず身を隠しつつ、言い合う二人の姿を確認する。
すると、そこにいたのはやはりコルネ。もう一人はおそらく、彼の母親だろうか。だけど、どうにも会話の雲行きが怪しかった。
口論の内容はどうやら、とある人物を巡ってのものらしい。
胸のざわめきを覚えながらも、ボクは息を殺して耳を澄ませた。そして、
「頼むから、父さんにもう一度――」
「帰って! 私は絶対、彼には会わないから!!」
「母さん……!!」
乱暴にドアが閉められる音と共に、彼らの会話は途切れたのだった。
最後に聞こえた言葉。
ボクはそれから、コルネの家庭の事情の一端を感じ取った。
まだ確定事項ではないかもしれないが、もしかしたらコルネの両親は――。
「…………くそ!」
そこまで考えた時、少年はそう言うと駆け出した。
深く介入することには気が引けたが、ここまできたら無視はできない。そう思ったボクは、慌てて彼の背中を追いかけた。
◆
そして辿り着いたのは、少々寂れた民家。
コルネは沈んだ表情のまま、そこへと入っていった。
「ここが、彼の家……?」
きっと間違いないだろう。
ボクは玄関前まで足を運び、悩んだものの意を決してそれを叩いた。そうすると間もなく、コルネの声とは違うそれで応答があって……。
「やあ、どなたかな?」
姿を現わしたのは、とても優しい眼差しをした一人の男性だった。
どこかやつれているけれども、穏やかなその表情には安心感を覚える。年齢は三十代後半、といったところだろうか。皺だらけの衣服を身にまとった男性は、不思議そうにこちらを見てから言うのだった。
「もしかして、コルネの友達かい?」
「え、いや――」
そう訊ねられ、とっさに否定の言葉が出そうになる。
だが、その時だった。
「なんで、アンタがいるんだよ」
「……コルネ?」
奥の扉から、少年が出てきたのは。
こちらを認めた彼は驚きに目を大きく見開き、しかしすぐに怒りに顔を歪めた。拳を震わせ、次いで駆け出し力任せにボクを突き飛ばす。
尻餅をついて見上げると、そこには今にも泣きだしそうなコルネ。
少年は感情に任せた言葉を羅列させ、それでも最後にはハッキリとこう言った。
「他人の家のことに、首を突っ込むな!!」――と。
強く、そして暴力的なものだった。
「こら、コルネ! お客様になんてことをするんだ!!」
「うるさい、うるさいうるさい!!」
そして、一連の行動を咎める男性を押し退けて奥の部屋へ消えていく。
結果として取り残されたのは、ボクとその人だけ。しばしの静寂が流れ、ひとまず立ち上がると会話の口火を切ったのは男性だった。
「……キミは、いったい誰なんだい?」
遠慮がちに、彼はボクにそう訊ねる。
こうなっては素性を隠すなんて、まったくの無意味だった。
「えっと、ボクの名前はライル・ディスガイズです。修繕師をやっていて――」
そう考え、素直に答える。
これまでの経緯をすべて話すと、男性は静かに頷いた。
「――あぁ、そうか」
その上で、納得したようにそう口にする。
そして一つ息をついてから、こう名乗るのだった。
「わたしの名前は、アルフォンス。……コルネの父だよ」――と。
小さな笑み。
その中に、ハッキリと自嘲的な色を浮かべながら。




