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3.無愛想なコルネ。

コミカライズも応援よろしくお願いいたします!!

(*‘ω‘ *)









 しかし、問題はすぐに発生した。



「あの、ライルさん」

「ん、どうしたの。リーナ」



 コルネを弟子にとって一週間が経過して。

 ふと、困った表情でボクに声をかけてきたのはリーナだった。こちらが首を傾げていると少女はしばし悩んだ後、どこか申し訳なさそうにこう口にする。



「その、コルネさんのことなのですけど――」

「ライル! 少し良いですか!!」

「ふえ!?」



 だが、それを遮るように割って入ってきたのは目くじらを立てたアーシャだ。

 彼女の意識外からの介入に、ボクは思わず奇妙な悲鳴を上げる。青髪の公爵令嬢はこちらの答えを聞くより先に、鼻息荒くこう続けるのだった。




「コルネさんの態度、どうにかしてください!!」――と。




 ……いったい、なにがあったのか。

 ボクは苦笑しつつ、アーシャからの報告を聞くのだった。









 ――アーシャ曰く、コルネの真剣さは感心できるものだったという。



「凄いですね……」



 ライルに教えられたことを一心不乱に繰り返し、才があるわけでもないにもかかわらず、少年は日々確実に成長を見せていた。

 そのことは素人である公爵令嬢の目から見ても明らか。

 だからアーシャは、それに対して素直な賛辞を贈ろうと少年に声をかけた。



「素晴らしいですね。昨日と比べて、また腕を上げたのではないですか?」



 そして、少なからずの世間話を試みる。

 だが――。



「………………」

「……あの?」

「………………」

「コルネさん、聞こえていますか?」

「………………」

「………………」



 返ってきたのは、ただただ沈黙だった。

 少年は聞こえないはずのない距離にいながら、完全に無視を決め込んだのである。アーシャはそのことに違和感を覚えるも、相手が気付かなかったのだと前向きに考えた。


 その上で気を取り直して、もう一度大きめの声をかけた時だ。




「あの、コルネさ――」

「……聞こえてるよ、うるせぇな」




 あまりに粗暴で、気遣いの欠片もない言葉が返ってきたのは。

 コルネはあからさまに不機嫌な様子で、肩越しにアーシャを見て言った。




「練習の邪魔。もう絶対、話しかけるなよ?」――と。




 有無を言わせぬ口調で。

 アーシャは、そのあまりにふてぶてしい態度に言葉を失った。

 そんな彼女を見やってから、コルネは軽く舌を打って作業に戻る。黙々と作業を再開し、背中からは誰も寄せ付けない雰囲気を醸し出すのだった……。









「躾がなっていません……!」

「あらら……」



 事情を話し終えたアーシャは最後にそうまとめた。

 ボクはそれを苦笑いしつつ聴いて、考える。


 躾という言葉が正しいかどうかは分からない。だけど、この話を聞く限り非があるのはコルネの方だと思われた。たしかに練習の妨げになるかもしれないが、他者からの賛辞を無下にするのは褒められたことではない。



「あの、ライルさん。私も同じようなことがあって……」

「リーナも……?」




 そう思っていると、次に声をかけてきたのはリーナだ。

 曰く彼女もアーシャ同様に、声をかけたら邪険に扱われたという。それを確認して、コルネの言動が相手を選んだものではないことが分かった。

 それとなると、問題は中々に大きい。



「今日はもう遅いですから、一度帰ります。ですがライルの方から、コルネさんに指摘しておいてくださいませんか?」

「う、うん……」

「それでは、お願いしますね」



 そんなこんなで、気付けばもう外も暗くなっていた。

 女子二人は帰宅する時間になっており、解決はボクに託される。短く挨拶を交わすとアーシャは不機嫌そうに、リーナは困惑したように去っていった。

 彼女らを見送ってから、ボクはアトリエの方にいる少年のもとへ向かう。

 すると見えたのは、脇目もふらず同じ作業を繰り返す彼だ。



「コルネ。今日はもう遅いから、続きは明日にしようか」

「…………分かった」



 ひとまず、いきなり叱るのは悪手だろう。

 そう思って最大限優しく、ボクは少年にそう声をかけた。

 作業をしていた手を止めたコルネは、道具を所定の位置に戻すと帰り支度を始める。どこか寂しげなその背中を見て、ボクは意を決してこう言った。




「あのさ、コルネ? 少しだけでいいから、みんなと仲良くできないかな」




 すると、支度を進める彼の手が止まる。

 沈黙が場に降りてきて、どことなく緊張感が広がった。

 静かな時間の中、ボクはコルネの言葉を待つ。すると返ってきたのは――。



「関係、あるのか?」

「え……?」




 どこか、焦りを感じさせるような。





「修繕の技術そのものと、関係あるのか?」






 空気がいっぱいに入った風船のように、張り詰めた言葉だった。

 ボクはそれを受けた瞬間、思わず眉をひそめる。


 だが、その間をどう受け取ったか。

 コルネは荷物を担ぐと、一つため息をついて踵を返した。

 そして最後に、ボクの顔をジッと見てからこう言うのである。





「関係ないことは要らない。技術だけでいいから」――と。





 それはきっと、アーシャたちに向けたような鋭利さで。

 あまりに突き放した言い方に、ボクは何も言い返せなかった。いいや、きっと何を言っても今の彼には届かなかっただろう。

 少年の背を見送って、小さく息をついた。




「………………」





 静かな作業場でボクはただ、彼が作業していた場所を見つめる。

 どうやら、コルネには何かしらの事情がありそうだった……。





 


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― 新着の感想 ―
「何かしらの事情」を聞かずに雇っていたのですね… もし殺戮兵器の修繕の片棒を担がされていたら(゜o゜;;
[一言] 師匠の話も聞かん奴はクビですね
[良い点] 面白いです でも主人公がなんで言い返さなかったのかは疑問です このお店の真髄でもある寄り添う気持ちを否定されてるのに
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