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2.どうしても直したいもの。

ハチャメチャに久しぶりの更新です。

皆様、申し訳ございません。


また、タイトルからお察しのようにコミカライズ始まりました。

コミックグラスト様にて、日高様の素晴らしいイラストで物語が紡がれております!!


是非ご一読の上、応援よろしくお願いいたします!!

<(_ _)>











 ――弟子にしてほしい。



 少年ことコルネの申し出は、ボクにとって驚きでしかなかった。

 何故なら自分なんかに弟子入り志願をしてくる子がいるだなんて、思いもしなかったから。ただそれ以上にこちらの頭を悩ませたのは、コルネのあまりに真剣な眼差しだった。

 彼の瞳には、ある種の悲壮感が漂っている。

 あるいは焦燥感、とでも呼べばいいのだろうか。


 その正体は分からない。

 ただ事実としてあるのは、彼が本心からボクに頼んでいることだった。



「えっと……どうして、弟子入りしたいのかな?」



 その上で、そうコルネに訊ねる。

 すると少年はしばし、唇を噛むようにしてからこう答えた。



「どうしても、直したいものがあるんだ」――と。



 それを耳にして、思わず首を傾げる。



「え、もしよかったらボクが修繕するけど――」



 そして、思った言葉を口にした瞬間だった。







「それじゃ駄目なんだよ!!」







 コルネが、店内に響き渡る声でそう叫んだのは。

 他のお客様が皆、何事かと彼のことを見た。しかしコルネはあくまで真剣に、周囲の目など気にした様子もなくボクに視線を投げかけてくる。

 そして、改めてこう言うのだった。



「お願いだ……頼む! 俺を弟子にしてくれ……!」



 深々と、頭を下げながら。

 あまりにも真っすぐな願いを向けられて、こちらはつい答えに窮した。普通なら断って然るべき状況だろう。だってボクには、まだ弟子を取るような技量があるのか怪しいのだから。でもしばし悩んだ後にボクが口にした言葉は、それとは真逆のものだった。





「……分かったよ。どこまで、力になれるか分からないけど」





 決め手は、コルネの真剣な眼差し。

 どこか既視感さえ覚えるそれを信じよう。

 ボクはそう考えて、生まれて初めて弟子を取ることにしたのだった。







「それで、あの子が噂の……?」

「うん。もしよかったら、仲良くしてあげてね」

「仲良く、ですか。善処はしますけど……」



 後日のこと。

 その日は、店にやってきたアーシャと休憩時間に雑談をしていた。

 簡単に用意した昼食を食べ終えて、彼女との会話の中に出てきたのは弟子入り志願の少年の話。一応の賄いとして、簡単な食事を提供したのだが、当のコルネはそれに手を付けようともしていなかった。


 黙々と、ボクの教えた修繕の基礎を復習している。

 そのあまりの一心不乱さには、舌を巻いてしまう、というのが正しい表現であるように思われた。特別なにか、秀でた才能があるわけでもなかったけれど、コルネはその実直さから平均以上の速度で技術を習得している。



「それにしても、本当に良かったのですか?」

「うん?」

「ライルとしても、弟子を取るなんて本意ではなかったのでしょう?」

「あぁ、そのことか……」



 そう考えていると、ふとアーシャがそう訊ねてきた。

 ボクは少し考えてから、こう返事をする。




「でも、どこか似てるような気がしたから」




 自然と出た言葉。

 それに気付いてからボクは、あえて取り繕うように笑うのだった。




「とにかく、真剣だからね。それを信じたいんだ」――と。







 コルネという少年を迎えての『リペア・ザ・メモリーズ』には、また新しい波がやってきている。そのようにも思われたのだった。




 


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― 新着の感想 ―
[一言] 弟子が師に対して横暴な態度なんてあり得ない そんな弟子は世の中に存在できない
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