2.どうしても直したいもの。
ハチャメチャに久しぶりの更新です。
皆様、申し訳ございません。
また、タイトルからお察しのようにコミカライズ始まりました。
コミックグラスト様にて、日高様の素晴らしいイラストで物語が紡がれております!!
是非ご一読の上、応援よろしくお願いいたします!!
<(_ _)>
――弟子にしてほしい。
少年ことコルネの申し出は、ボクにとって驚きでしかなかった。
何故なら自分なんかに弟子入り志願をしてくる子がいるだなんて、思いもしなかったから。ただそれ以上にこちらの頭を悩ませたのは、コルネのあまりに真剣な眼差しだった。
彼の瞳には、ある種の悲壮感が漂っている。
あるいは焦燥感、とでも呼べばいいのだろうか。
その正体は分からない。
ただ事実としてあるのは、彼が本心からボクに頼んでいることだった。
「えっと……どうして、弟子入りしたいのかな?」
その上で、そうコルネに訊ねる。
すると少年はしばし、唇を噛むようにしてからこう答えた。
「どうしても、直したいものがあるんだ」――と。
それを耳にして、思わず首を傾げる。
「え、もしよかったらボクが修繕するけど――」
そして、思った言葉を口にした瞬間だった。
「それじゃ駄目なんだよ!!」
コルネが、店内に響き渡る声でそう叫んだのは。
他のお客様が皆、何事かと彼のことを見た。しかしコルネはあくまで真剣に、周囲の目など気にした様子もなくボクに視線を投げかけてくる。
そして、改めてこう言うのだった。
「お願いだ……頼む! 俺を弟子にしてくれ……!」
深々と、頭を下げながら。
あまりにも真っすぐな願いを向けられて、こちらはつい答えに窮した。普通なら断って然るべき状況だろう。だってボクには、まだ弟子を取るような技量があるのか怪しいのだから。でもしばし悩んだ後にボクが口にした言葉は、それとは真逆のものだった。
「……分かったよ。どこまで、力になれるか分からないけど」
決め手は、コルネの真剣な眼差し。
どこか既視感さえ覚えるそれを信じよう。
ボクはそう考えて、生まれて初めて弟子を取ることにしたのだった。
◆
「それで、あの子が噂の……?」
「うん。もしよかったら、仲良くしてあげてね」
「仲良く、ですか。善処はしますけど……」
後日のこと。
その日は、店にやってきたアーシャと休憩時間に雑談をしていた。
簡単に用意した昼食を食べ終えて、彼女との会話の中に出てきたのは弟子入り志願の少年の話。一応の賄いとして、簡単な食事を提供したのだが、当のコルネはそれに手を付けようともしていなかった。
黙々と、ボクの教えた修繕の基礎を復習している。
そのあまりの一心不乱さには、舌を巻いてしまう、というのが正しい表現であるように思われた。特別なにか、秀でた才能があるわけでもなかったけれど、コルネはその実直さから平均以上の速度で技術を習得している。
「それにしても、本当に良かったのですか?」
「うん?」
「ライルとしても、弟子を取るなんて本意ではなかったのでしょう?」
「あぁ、そのことか……」
そう考えていると、ふとアーシャがそう訊ねてきた。
ボクは少し考えてから、こう返事をする。
「でも、どこか似てるような気がしたから」
自然と出た言葉。
それに気付いてからボクは、あえて取り繕うように笑うのだった。
「とにかく、真剣だからね。それを信じたいんだ」――と。
コルネという少年を迎えての『リペア・ザ・メモリーズ』には、また新しい波がやってきている。そのようにも思われたのだった。




