10.愛しているからこそ。
長くなる。どうしても、長くなる(´;ω;`)
あとがきに勘違い系の新作あります。
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「二人とも、落ち着いて下さい!」
「ライルくん……!?」
ボクとアーシャがリビングの中に駆け込むと、リンドさんは驚いたように目を見開く。そして、そこで緊張の糸が切れたのか――。
「う、うぅ……ああああああああああああああああああああああ!!」
シエスタさんは、声を張り上げて泣き出してしまった。
ボクとリンドさんは唖然として、その場に立ち尽くしてしまう。
なにもできなかった。だからただ、子供のように泣きじゃくる彼女のことを見ていることしかできない。
しかし、その中でも一人だけ。
アーシャだけは、すぐにシエスタさんのもとへと駆け寄った。
「大丈夫です。ゆっくり、深呼吸をして……?」
「う、う……!」
そして優しく、彼女の気持ちが落ち着くように声をかける。
すると、次第にシエスタさんの呼吸も穏やかになった。そこに至ってようやく、ボクは何があったのかを訊ねる。
「いったい、何があったんですか……?」
「………………」
ボクの問いかけに、しばし苦い顔をしたのはリンドさんだ。
彼は数秒の沈黙の後に、こう口にする。
「シエスタに、指輪の修繕の話をしたんだ。そうしたら――」
彼女は途端に感情的になり、口論になった、と。
シエスタさんの方を確認すると、彼女もそれを認めるようにうつむいた。そしてまた、静かに涙を流し始める。
どういうことなのだろうか。
ボクが眉をひそめると、静かに口を開いたのはアーシャ。
「ライル。申し訳ございませんが、リンドと外に出ていてくださいませんか」
「アーシャ……?」
「ここは、任せてください」
少女はそう言うと、また優しくシエスタさんの背中を撫で始めた。
ボクはリンドさんと視線で会話して、頷く。
ここは、彼女を信じよう。
そう思って、ボクたちは一度外へ出るのだった。
◆
男性陣が出て行って。
リビングに残ったのは、アーシャとシエスタだけになった。
まだシエスタの方はすすり泣いていたが、幾分かは落ち着いたらしい。
「ごめんなさい。情けないところを……」
「そんなことないです」
謝罪する相手に、首を左右に振るアーシャ。
あえて原因を追究することはなく、ただ静かにシエスタの心の準備が整うのを待った。そうして、しばしの時が流れた頃。
彼女はゆっくりと口を開くのだった。
「私はもう、いいんです……」――と。
アーシャが首を傾げる。
するとシエスタは、やや目を伏せて続けるのだった。
「私が一緒にいると、きっとリンドさんを不幸にしてしまうから……」
その言葉を聞いた瞬間。
アーシャは、彼女の中にある葛藤を理解した。
「シエスタさん……」
「だって私、もう子供も産めないんですよ……? リンドさんって、子供が大好きなんです。そんな彼から、夢を奪うようなこと……!」
「…………」
シエスタは、優しいが故に苦悩していたのだ――と。
シエスタは間違いなく、リンドを愛している。
だが自分が共にあることで、生涯に渡って彼に重荷を背負わせてしまう。自分と共にあることは彼のためにならない。だから――。
「私、幸せでした……。今までで、もう十分なほどに……」
――自分は、身を引こう。
愛している。
この世界の誰よりも、愛している。
だからこそ、自分は彼に相応しくないのだ。
それが、シエスタの思いだった。
「シエスタさん……」
アーシャはそれを聞いて、しばし黙り込む。
少女の様子を見て、シエスタはやや自嘲気味に笑って言った。
「ごめんなさい。こんな話をして……」
――情けないですね、と。
本当に、自分のことを軽蔑するようにして。
「貴方たちにまで迷惑をかけて、本当に――」
「シエスタさん。ちょっと、すみませんね……?」
そして、この話を終わりにしようとした。
その時だった。
「……え?」
リビングに、乾いた音が響いたのは。
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