表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/143

9.心。

次回、山場かな……今度こそ。


新作で勘違い系?を書いたので、あとがきの下にあるリンクから飛べるようにしておきました。応援よろしくお願いいたします。







 ――『苦悩を解いてやれ』




 ルゼインさんの言葉が、耳に張り付いて離れない。

 彼はなにかを感じ取っている様子ではあったが、どういう意味なのだろうか。ボクはそれが気になって仕方なかった。修繕の依頼を受ける上で、依頼者の心に寄り添うことは大前提だ。だからきっと、これが分からないと前には進めない。


 そう考えてボクはもう一度アーシャと共に、リンドさんの家を訪ねることにした。



「とりあえず、義手と義足の手筈が整ったことは伝えないと。それに――」

「ルゼインさんの言葉が、気になるのですね」

「……うん」



 隣を歩く少女に確認するように言うと、見事に考えを言い当てられる。

 こちらが眉をひそめると、アーシャは優しく微笑んだ。



「大丈夫です。ライルなら、きっと……」

「……アーシャ?」



 そして、そんな風に口にする。

 こちらが思わず首を傾げていると、彼女は空を見上げて話し始めた。



「……お母様のことを思い出したのです」――と。



 ボクはそれに思わず黙り込み、耳を傾ける。

 すると少女は一度、二度と頷いてから言うのだった。



「きっと、お母様は最期まで幸せでした。ライルに思い出の衣装を修繕していただいて、本当に安心したように眠りについたのです。だから――」



 アーシャはボクの手を取って、最後にこう告げる。



「自信を持って下さい。ライルなら、きっとできます」

「アーシャ……」



 迷わなくていい。

 自分が正しいと思ったことをやればいい。

 彼女の瞳は、そう語っているようにも思われた。



「もし、それで障害にぶつかったなら。こちらも手伝いますから!」



 そして、力強く笑う。

 そんなアーシャの表情を見て、ボクはどこか勇気が湧いてきた。



「……ありがとう、アーシャ」

「え、あ……ラ、ライル!?」



 だから、思わず彼女の頭を撫でてしまう。

 そうすると少女は驚き目を丸く、頬を赤く染めるのだった。

 アーシャの反応を見て、ボクは自分がなにをしているのかに気付く。



「あ、あれ? ――ごめん! つい!」



 慌てて手を離して、謝罪した。

 だが、それに対して返ってきたのは少し意外な言葉。



「…………い、いえ。不快では、ありませんでしたから」



 困惑したように、しかしどこか弾むようなアーシャの声。

 ボクはまた、首を傾げてしまうのだった。



「そ、それより! 早くリンドの家に行きましょう!」

「そう、だね!! うん!!」





 ……なんだろう、この空気。

 ボクたちは互いにそう言い合って、改めて歩き始めるのだった。



 




 そうして、しばらくするとリンドさんの家が見えてくる。ボクはほんの少しだけ緊張しながら、しかし勇気を持ってドアをノックしようとした。


 だが、その時である。



「どうして分かってくれないんだ!?」



 家の中から、リンドさんの悲鳴のような声が聞こえてきたのは。



「え……!?」



 ボクとアーシャは一瞬だけ顔を見合わせるが、すぐに家の中に飛び込む。

 そして、大慌てで二人が言い争う場所――リビングへと向かった。



「いいんです! もう、もう――」



 そこにたどり着く。

 すると、そこにあったのは――。



「私のことはもう、放っておいてください……!!」

「分からない、どうして……!?」




 感情をむき出しにして言い争う、リンドさんとシエスタさんの姿だった。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ