2.少年からの相談。
近日また、更新できそうです。
「それで、リンドはなんて言ったと思いますか? ――『アーシャ様はまだまだこれから、発展途上ですからお気になさらず』ですよ? 失礼とは思いませんか!?」
「あ、あはは……」
ある日の昼下がり。
ちょうどお客さんの波もひと段落したタイミングで、アーシャがやってきた。お茶を出すと、矢継ぎ早に出てきたのはリンドさんの話。
なにやら公爵家で集まりがあったらしく、その際に彼女の逆鱗に触れる言葉があったらしい。ボクは苦笑いをしながら、それを聞き流していた。
「まったく……。わたくしだって、一人の女性なのです。気にしていることは気にしていますし、本当に無神経です!」
「でも、そうやって家族みたいに触れ合えるのは、いいことだよ?」
「家族ですか? あぁ、そう言えば訊きたかったのですが――」
そして、こちらがお茶を一口しようとした時。
何気なくアーシャはこう言った。
「ライルのご両親に、ご挨拶したいのですが……」――と。
ボクはカップを持った手をピタリと止めて。
ちょっとだけ息を呑んでから、彼女に気取られないように答えた。
「あぁ、ボクの両親、か。話してなかったっけ?」
「そうですね。お爺様のお話は常々耳にしていましたが――」
その時である。
「……っと、いらっしゃいませ!」
お客さんが、店に入ってきた音が聞こえたのは。
ボクは一度会話を切って、椅子から腰を持ち上げて確認した。
すると――。
「あれ、テーニャ……?」
「こんにちは。ライルさん」
そこにあったのは、常連となった一人の少年の姿だった。
◆
「テーニャが一人で修繕依頼にくるなんて、珍しいね」
「そう、ですね……」
「…………?」
ひとまず修繕する剣を受け取って、ボクは少年にお茶を入れた。
しかし、どこか彼は浮かない表情を浮かべている。というよりも、何かを悩んでいるようにも思われた。いったい、どうしたというのだろうか。
アーシャに目配せをすると、どうやら彼女も気になったらしい。
ボクは小さく頷いてから、テーニャに訊ねた。
「なにか、あったのかな?」
「…………」
すると彼は、やや目を伏せてから。
「あの、リンドさんのことなんですけど……」
そう、語り始めるのだった。




