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6.リーナの思いと、ライルの提案。

次回、たぶんこの章の山場かな。

追記:あとがきに、ちょこっと設定吐き出しときます(またか









 ルゼインからの情報――リーナの設計図で、作業の速度は格段に上がった。

 理屈さえ分かれば、あとは手先の器用さの問題。かなり癖の強い構造はしていたけれど、以前のように手探りで確認しながら、というのよりは万倍マシだ。

 ひとまず、今回の不具合の原因は膝から腰へかけての神経回路の問題だった。



「どうかな、リーナ……?」



 ボクが訊ねると、少女は自身の脚を曲げ伸ばしして確認する。

 そして、こちらを見て頷くのだった。



「問題、ありません。ライルさんは、凄いです」

「いいや、そんなことないよ。凄いのはルゼインさん、キミの――」



 そこまで口にしてから、ボクは言葉に詰まる。

 いま、自分でも驚くほど自然に『キミのお父さん』と、口にしようとしていた。それが何を指すのか気付いて引っ込めたが、リーナには勘付かれたらしい。

 しばしの沈黙の後に、彼女は少しだけ小さな声でこう言った。



「……たしかに。私にとってマスターは、そういった存在かもしれません」

「リーナ……?」



 リーナはそう口にすると、自分の手をジッと見つめる。

 表情は変わらない。それでも、なにかを言いたげにこちらを見てきた。



「どうし、たの……?」

「ライルさん。少しだけ、聞いて下さいますか?」

「………………」



 そして、声をかけると意を決したように。

 リーナは真っすぐに、そう言った。ボクは無言で頷く。


 すると、機巧少女は静かに語り始めるのだった。




「マスターは、本当に優しい方なのです。不器用で、強面で、気性が荒くて、誤解を招くことばかりですが、私のことを大切に扱ってくれています」




 そっと、自身の胸に手を当てて。




「そして同時に、私のことを娘代わりにしている、そのことも知っています。だからこそ、身体にエラーが起きた時、必死になって直してくださるのでしょう。それこそ、親が子供の風邪を必死に治してあげようとするのと、同じように」

「リーナ……」

「ですが、ライルさん。私は――」




 ボクが口を開くと、リーナはそれを遮って言うのだ。




「私は果たして、そんなマスターの心に寄り添えているのでしょうか? ……私は所詮、機械仕掛けの人形に過ぎません。どんなにあの方のことを想っても、それを伝えたり、心を通わせる手段を持たないのです」――と。




 そして、それを聞いた瞬間に。

 ボクは先日のことを思い出して、同時に確信した。

 間違いない。この機巧少女には『ある』のだ――と。




「どうすれば、良いのでしょう。ライルさん……」

「………………」




 不安げな声色。

 ボクは、そんなリーナに歩み寄って目線を合わせた。

 彼女の頭を優しく撫でて、笑ってみせる。



「大丈夫だよ、リーナ」

「ライルさん……?」



 小首を傾げる機巧少女。

 そんな彼女に、ボクは一つ決意を固めてから提案した。



「ねぇ、リーナ? もし、キミが本当に想いを伝えたいなら――」





 それはきっと、ボクにとっても大きな賭け。

 そして、一つの『親子の絆』を繋ぐために失敗できないものだった。



 


補足設定:レナとリーナ、読みが違うだけで綴り同じです。


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