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3.ルゼインという修繕師。

(*‘ω‘ *)最近、疲労が抜けないw










「くそ……! あのガキ、生意気な目をしやがって……!!」



 ルゼインは自身の工房に帰ってきて、すぐにそう悪態を吐いた。

 リーナのおかげである程度は片付いた部屋を大股で歩き、乱暴に酒を取り出す。そして、出しっぱなしのグラスにそれを流し込み、一気に煽った。

 そこでようやく一息つけたのか。

 彼はやや乱暴にグラスをテーブルに置くと、何かを探し始めた。



「…………あぁ」



 そうして、間もなく。

 助手の気遣いで、分かりやすい場所に置かれたそれを発見した。そこにあったのは、小さな女の子が付けるようなネックレス。

 見たところ、安物に過ぎない。

 しかし、ルゼインはそれを大切そうに握りしめると胸に抱いた。



 仄暗い部屋に、静寂が降りてくる。

 その中で彼は音もなく、小さく、肩を震わせるのだった。









 ――真夜中の工房。


 ボクは黙々と、リーナの脚部の構造を確認していた。

 そうやっていて分かったのは、一つでもミスを犯したら機巧少女は動かなくなってしまうだろう、ということ。

 理由は単純だった。

 人間に神経があるのと同じく、リーナにも脳に繋がる神経部品があるのだ。



「信じられない……」

「いかがなさいましたか?」



 あまりの精巧さ、緻密さに思わず感嘆の声を漏らす。

 すると、リーナはそれに首を傾げるのだった。



「キミを作ったのは、あの……ルゼインさん、なんだよね?」

「えぇ、そのようです。正確な記憶が残っているわけではありませんが、私が起動したときに周囲にいたのはマスター、ただ一人でした」

「メンテナンスも、全部……?」

「はい、そうです。マスターはメンテナンスの都度、何かしらの機能を追加していきました。その結果、私はこのように動けるようになったのです」



 あくまで淡々と話すリーナ。

 でもボクには、彼女の話すすべてのことが衝撃だった。

 だって、こんな技術があって良いのか。これは、まるで一人の人間を作り出そうとしていると、そう言っても過言ではないように思われた。


 いったい、ルゼインは何を思って行動しているのか。

 一度、手を止めてそれを考えた。すると、



「本当に、優しい方なのです。マスターは……」

「え……?」



 不意に、初めて感情を乗せたようにリーナが言う。

 少し驚いて顔を見ると、機巧少女は微かに目を細めていた。



「マスターにとって、私は助手に過ぎません。壊れれば、また新しい機巧少女を作れば良いでしょう。しかしあの方は、私が不調を訴えるたびに、必死に直そうとするのです」

「………………」



 そして、そう語るのだ。

 口調はすでに、淡々としたものに戻っていた。

 微かに細めていたように思えた目も。でも何故だろう、ボクには――。



「リーナ。キミには、もしかして……」



 だが、そこまで口にして。

 本当にそんなことがあり得るのかと、現実を疑った。

 だって、そうだろう。機巧少女に――【心が宿っている】だなんて。



「いいや。でも、だとしたら……?」



 しかしボクには、やはりそうとしか思えなかった。

 だからこそ、ルゼインという人物が分からない。


 このように精巧な機巧少女を作り、改良し、修繕を繰り返してきたのに。

 それなのに、どうして彼はボクに依頼した……?



「………………」



 リーナの頭に触れた時。

 彼は恐ろしく感情を昂らせ、ボクに掴みかかった。

 普通に考えれば、自分の培った技術を盗み見られるのが、嫌だったのだろうと考えられる。だとしたら、それこそ彼はどうしてボクに修繕の依頼などをしたのか。



「ライルさん……?」

「ねぇ、リーナ。少しだけ、訊きたいのだけど――」



 ――それにはきっと、何か理由がある。



 ボクにはそう思えて仕方なかった。

 だったら、確かめよう。


 ルゼインという修繕師の胸の中にある『思い』を。




 この修繕を果たすには、そのピースが必要不可欠だ、と。

 そう、感じたから……。




 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(◍•ᴗ•◍) [一言] おいまさか似姿を……?
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