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2.高圧的な依頼。

(*‘ω‘ *)










 それは、ある昼下がりのこと。

 客足もまばらになって、ボクもそろそろ昼食を摂ろうと思っていた時だ。鼻歌交じりに修繕道具を片付けていると、誰かが入店してきた。



「あ、はい! いらっしゃいませ!」



 ボクはすぐに気持ちを切り替えて、そう応対する。

 やや駆け足で出入口へ。すると、そこに立っていたのは――。



「けっ……。どんなに立派な店かと思えば、ずいぶんチンケだな」

「申し訳ありません。お世話になります」



 ガタイのいい一人の男性。

 そして、本当に小柄な女の子。


 なにやら悪態をついた男性に対して、女の子は謝罪をしながら頭を下げた。ボクはそのことに若干、面食らいながらも椅子に腰かけるように促す。



「……はい。それでは、今回の依頼はなんでしょう?」



 二人が着席したのを確認して、そう訊ねた。

 すると、男性どこか不機嫌なまま、女の子の頭をポンと触って言う。



「こいつ――オレの助手であるリーナの、修繕を頼みたい」

「女の子の、修繕……?」



 ボクはその言葉に、思わず唖然とするのだった。







「……な、なるほど。機巧少女――こんなに精巧で、自律しているのは初めて見ました」

「けっ。そりゃ、オレの手製だからな。当然だ」

「そ、そうなんですか……?」



 一通りの話を聞いて、ボクはようやく事態を呑み込む。

 なにやら男性の態度が気になったがとにかく、この女の子は機巧少女――いわゆる、自律人形というものらしい。最初、入店してきた時には気付かなかった。

 それほどまでに精巧で、人間として違和感のない立ち振る舞い。



「ちょっと、ごめんね?」



 ボクは一言、声をかけてから女の子――リーナの頭に触れようとした。

 すると隣の男性客は、目の色を変える。そして、



「馬鹿野郎! 関係ない場所、触ろうとすんじゃねぇぞ!?」



 そう突然に声を荒らげた。

 驚いたのは、ボクだけじゃない。

 リーナも無表情ながら、主である彼の方を見ていた。



「え、でも。修繕するなら――」

「うるせぇ! こいつの技術はオレの物だ! 盗ませはしねぇぞ!?」

「そ、そんな!? 盗むだなんて、人聞きが悪い!!」

「口答えすんな、若造が! てめぇは、黙って壊れた部分を直せばいいんだ!」

「…………な!?」



 そして、そんな口論の末に。

 男性はボクの胸倉を掴みながら、こう啖呵を切ってきた。



「いいか、若造? このルゼイン様の技術を少しでも盗んでみろ。二度と表を歩けないような身体にしてやるからな……!?」



 彼――ルゼインは、そう言ってボクのことを突き飛ばす。

 いったい、なんだって言うんだ。


 さすがにボクも、腹が立って仕方なかった。

 だから思わず不満を口にしようと――。



「マスターが、申し訳ありません。私が代わって、謝罪いたします」

「え……?」



 ――した、ところで。

 今までほとんど口を開かなかったリーナが、頭を下げながらそう言った。

 マスター、というのはルゼインのことらしい。



「……あぁ、いや。大丈夫だよ」

「ありがとうございます」



 ボクはそんな少女の姿に毒気を抜かれ、頬を掻いた。

 すると、リーナは感謝を述べる。



「……それで? この依頼、受けるのか?」

「………………」



 しばしの沈黙の後に。

 ルゼインが腕を組みながら、偉そうにそう訊いてきた。

 ボクは、数秒の間を置いてから――。



「分かりました。お受けいたします……」




 やや歯切れ悪く。

 リーナのためを思い、そう答えるのだった。




 


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[良い点] この依頼は断るべきでしょ
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