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7.それはきっと、満開の笑顔のこと。

あとがきに、謎の後押しを受けて連載に踏み切った作品の情報あります。

面白いと思った方は、ぜひ応援してやってください……。










「それで本当に、ティローに経典を渡してしまったのですか?」

「うん。あの本をいま、本当に必要としている人は他にいるからね」

「念のために確認しますけど、依頼主がどなたか、憶えていますか?」




 店を休みにして、しばらくしてからアーシャがやってきた。

 彼女に事の次第を説明すると、分かりやすくため息をつかれてしまう。ボクはほとんど言い返せずに、苦笑いをしつつ紅茶を口にすることで誤魔化した。

 すると少女も、仕方ない、といった様子で言う。



「まったく。ライルらしい、といえばらしいですからね。今回の一件はわたくしから、国王陛下に便宜を図っていただけるよう、お願いしてみましょう」

「助かるよ。本当に……」



 彼女はこちらの返答に、また一つ大きなため息。

 しかし、すぐに気持ちを切り替えたように訊いてくるのだった。



「ところで、その『幸せの魔法』って、結局なんだったのですか?」



 それは、経典に込められていた力について。

 古代エルフが秘匿し、ついには廃れるまで明かされることのなかった魔法。それがいったいどのような内容であるのか、アーシャは興味津々の様子だった。

 最近になって知ったのだが、アーシャは魔法学を専門に学んでいるらしい。だからこれは、学術的好奇心というか、そういった観点からの質問だ。



「うーん、そうだなぁ……」

「むぅ、なんですか。その、ニヤニヤとした顔は……!」



 だけど、ボクはあえて濁す。

 すると少女は、唇を尖らせてこちらに身を乗り出してきた。



「い、いひゃいよ、あーひゃ……」

「素直に答えないから、でしょう?」



 そして、思い切りボクの頬を左右に引っ張る。

 こうなったら、答えるしかなさそうだ。


 ボクは痛む頬を手で押さえながら、ゆっくりと窓の外を見た。




「それは――」




 ゆっくりと目を閉じて、思いを馳せながら口にした。

 深い森の奥にあるエルフの村、その中央にあるであろう……。





「きっと、満開の笑顔、かな」――と。





 


https://book1.adouzi.eu.org/n8617gv/

新作書きました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 謎の後押しとはなんでしょうね・・・ うーん、不思議。 そして、こっちはこっちでこの空気感が(๑•̀ㅂ•́)و✧
[良い点] 更新お疲れ様です(◍•ᴗ•◍) [一言] そういや王女様の依頼だったな……これ報酬とか大丈夫?
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