2.青年修繕師――ローンド・ディスガイズ。
お待たせしました(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
更新、改めて頑張ります。
「あ……? 古本の修繕、だって?」
「古本、ってお前。経典だよ、経典」
「知らねぇよ。まとめてしまえば、それも古本には違いねぇだろ」
ボサボサ髪の青年が、身内の男性に対して乱暴な口調で言う。
もっともこれが彼の話し方であり、相手もそれを理解していた。だから感情を上手く誤魔化しつつ、こう続ける。
「ローンド。お前ならきっとできると、そう見込まれた話なんだぞ?」
すると青年――ローンド・ディスガイズは、小さく鼻で笑った。
「……きっと、か。ずいぶん、低く見られたものだな」
「あぁ、すまない。今の言い方は間違いだったな」
「あぁ、そうだぜ? だってよ――」
そして、歪に口角を上げながら宣言する。
「世界一の修繕師の俺様に、直せねぇものなんてねぇよ」
――この時ローンド・ディスガイズ、二十三歳。
実力はたしかだが、無礼な口振り。
それは、おおよそライルの知る祖父とは程遠い人物だった。
◆
「まったく、馬鹿らしい依頼だぜ」
そんな彼は、依頼書を確認してそう漏らす。
曰く宗教的な何かの本の修繕、とのことだった。経典だのなんだの、そういった言葉の意味をローンドは知らない。
彼からしてみれば、上っ面を整えることが最優先なのだった。
そのため、古代エルフ文字も見様見真似。
親類の男性が念押しをして置いていった参考書も、数ページ読んだだけで放り投げた。だが当然ながら、そんなことをしていて作業が進むわけもない。
さらに言ってしまえば、完全に詰んでしまうのだ。
ローンドは先ほどから同じページと、顔を突き合わせ続けている。
「………………」
そして、いよいよ限界が訪れた。
「だあああああああ!? ほんとに、馬鹿らしい!!」
青年修繕師は、そう叫んで道具を後方に投げ捨てる。
経典を投げないのは、せめてもの良心か。
とかく、彼がなにかに八つ当たりしたくなっていたのは確かだ。
その証拠に、足元にあった古びた箱を蹴り上げる。
「はぁ、はぁ……! ホントに、こんな古臭い本の何が大切なんだよ……」
あまりに感情が荒ぶったらしい。
ローンドは、肩で呼吸をしながらそう言うのだった。
「……あ? 誰だよ、こんな朝っぱらに……」
すると、その時だった。
誰かが自分の店の中に入ってきた音がしたのは。
青年修繕師は頭を掻きながら、やる気なさげに客を出迎えた。
「いらっしゃい……。まだ、開店前だけどな」
大欠伸一つ。
そこに至ってようやく、ローンドは客の姿を確認した。
そして――。
「………………」
言葉を、失った。
何故ならそこにいたのは、まるで絵画の中から出てきたような美女。長い耳をしているところを見るに、エルフであろう。
青年は完全に呼吸を忘れて、見惚れていた。
「あ、あの……」
そんな彼の様子には気付かず。
その女性は、どこか緊張した面持ちでこう名乗るのだった。
「わ、わたしはエリザです! 修繕の手伝いにきました!!」――と。
だが、この時のローンドの耳には彼女の名前しか入らない。
間違いなく、これが彼にとっての初恋であったのだから……。




