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2.青年修繕師――ローンド・ディスガイズ。

お待たせしました(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

更新、改めて頑張ります。












「あ……? 古本の修繕、だって?」

「古本、ってお前。経典だよ、経典」

「知らねぇよ。まとめてしまえば、それも古本には違いねぇだろ」



 ボサボサ髪の青年が、身内の男性に対して乱暴な口調で言う。

 もっともこれが彼の話し方であり、相手もそれを理解していた。だから感情を上手く誤魔化しつつ、こう続ける。



「ローンド。お前ならきっとできると、そう見込まれた話なんだぞ?」



 すると青年――ローンド・ディスガイズは、小さく鼻で笑った。



「……きっと、か。ずいぶん、低く見られたものだな」

「あぁ、すまない。今の言い方は間違いだったな」

「あぁ、そうだぜ? だってよ――」



 そして、歪に口角を上げながら宣言する。




「世界一の修繕師の俺様に、直せねぇものなんてねぇよ」




 ――この時ローンド・ディスガイズ、二十三歳。


 実力はたしかだが、無礼な口振り。

 それは、おおよそライルの知る祖父とは程遠い人物だった。





「まったく、馬鹿らしい依頼だぜ」



 そんな彼は、依頼書を確認してそう漏らす。

 曰く宗教的な何かの本の修繕、とのことだった。経典だのなんだの、そういった言葉の意味をローンドは知らない。

 彼からしてみれば、上っ面を整えることが最優先なのだった。


 そのため、古代エルフ文字も見様見真似。

 親類の男性が念押しをして置いていった参考書も、数ページ読んだだけで放り投げた。だが当然ながら、そんなことをしていて作業が進むわけもない。


 さらに言ってしまえば、完全に詰んでしまうのだ。

 ローンドは先ほどから同じページと、顔を突き合わせ続けている。



「………………」



 そして、いよいよ限界が訪れた。




「だあああああああ!? ほんとに、馬鹿らしい!!」




 青年修繕師は、そう叫んで道具を後方に投げ捨てる。

 経典を投げないのは、せめてもの良心か。


 とかく、彼がなにかに八つ当たりしたくなっていたのは確かだ。

 その証拠に、足元にあった古びた箱を蹴り上げる。



「はぁ、はぁ……! ホントに、こんな古臭い本の何が大切なんだよ……」



 あまりに感情が荒ぶったらしい。

 ローンドは、肩で呼吸をしながらそう言うのだった。




「……あ? 誰だよ、こんな朝っぱらに……」




 すると、その時だった。

 誰かが自分の店の中に入ってきた音がしたのは。

 青年修繕師は頭を掻きながら、やる気なさげに客を出迎えた。



「いらっしゃい……。まだ、開店前だけどな」



 大欠伸一つ。

 そこに至ってようやく、ローンドは客の姿を確認した。


 そして――。



「………………」




 言葉を、失った。

 何故ならそこにいたのは、まるで絵画の中から出てきたような美女。長い耳をしているところを見るに、エルフであろう。

 青年は完全に呼吸を忘れて、見惚れていた。



「あ、あの……」



 そんな彼の様子には気付かず。

 その女性は、どこか緊張した面持ちでこう名乗るのだった。




「わ、わたしはエリザです! 修繕の手伝いにきました!!」――と。




 だが、この時のローンドの耳には彼女の名前しか入らない。

 間違いなく、これが彼にとっての初恋であったのだから……。




 


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