6.ティローの知る修繕師。
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「……相手に寄り添う、ですか」
ボクの話を聞き終えたティローは、どこか難しい顔を浮かべて言う。
そこには、何か悩みごとがあるようにも思えた。けれども彼はすぐに首を左右に振って、小さな笑みを浮かべてこう続ける。
「あぁ、きっと。ライルさんなら、大丈夫なのでしょう」
そして、おもむろに立ち上がった。
どうやらコーヒーを飲み終えたらしい。ボクのカップもちょうど空になったところで、ティローが気を利かせてくれたようだった。
彼は何も言わずにこちらのカップを受け取ると、工房を出ようとする。
だが、何かを思い出したように振り返るのだ。
「あぁ、そうです。その経典について、なのですが――」
こちらが彼を見るのを確認してから。
最後に、こう口にした。
「風の噂では、数十年前に修繕を試みた男がいたそうです」――と。
◆
――工房を出て、廊下の窓際に立ったティロー。
彼は夜空を見上げて、何かを思案したようにこう呟くのだった。
「……相手に、寄り添う」
眉をひそめて。
どこか、忌々しげに。
「いったい、どの口が言うのか……!」
ティローは、強く唇を噛んだ。
握りしめた拳。手のひらに爪が食い込むのも、気にならなかった。
「いえ、今はまだですね。……ひとまず、お手並み拝見といきましょうか」
されども、一つ大きく息をついてから。
青年は肩越しに、ライルの工房への扉を見た。
「『最低の修繕師』の孫――ライル・ディスガイズ」
最後にそう言い残して、彼は客間へ向かう。
その行く先は、明かりの一つもない暗闇だった……。
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