5.向き合うこと。
一日空いて申し訳ないっす(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
応援よろしくです!
「思い出の修繕、かぁ……」
幼い日のボクは、祖父から言われたことを思い出して考え込んでいた。
あれから一通りの修繕技能は教わったのだけど、どうにも自分が直した物と、祖父が直した物の間には差があるように感じる。
それは明確に目に見える指標ではない。
でも、そこに存在しているのは事実だと思われるのだった。
「どういうこと、なのかな。思い出……修繕……?」
祖父が直した花瓶と、同じ物を並べて観察し続ける。
言語化が難しいのだけれども、祖父の修繕した花瓶からは歴史のような深みを感じた。外見に至っては、同一のそれの方が綺麗なのに。
どうして、修繕した物の方が親しみやすいのだろうか。
「うーん、分からない!! 難しいよ!!」
「おぉ、今日も悩んでいるんだな。ライル」
「あ、お爺ちゃん!」
お手上げとばかりに万歳すると、そこに祖父が現れた。
彼は優しい笑顔を浮かべながら隣にやってきて、二つの花瓶を見るのだ。
「ねぇ、お爺ちゃん。思い出って、目に見えないよね。でも、どうしてお爺ちゃんの直した物からはそれを感じるの……?」
「ほほう。ライルはなかなか、感性が優れているみたいだな」
「…………え?」
そんな彼にボクが訊ねると、なぜか褒められる。
面食らっていると、祖父はまた微笑んで言うのだった。
「こっちは、それを理解するまでに数十年かかったからね。たしかに思い出は目に見えない。そもそも、それを修繕に落とし込む意味が分からなかった」
「そうなの……?」
「あぁ、そうだよ」
そして、ボクの視線まで腰を落とす。
皺だらけの手でこちらのそれを取って、こう語るのだった。
「でもある日、気付いたんだ。修繕は物を直すだけじゃない、ってことに」
祖父はボクに花瓶を触れさせ、頷く。
「修繕師が相手にしなければいけないのは、物だけじゃないんだよ。その持ち主である依頼者こそ、向き合わなければならないんだ」
「依頼者さん……?」
彼はボクが訊き返すと、ゆっくりとこちらの頭を撫でた。
小さく頷いて、こう結論付けるのだ。
「ライルは、焦っちゃいけないよ? ゆっくり、誰かの心に寄り添うんだ」
その言葉には、どこか悲しい感情も見えるような気がして。
ボクの胸の奥深くに、強く残るのだった。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます!
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより★★★★★で評価など。
創作の励みとなります。
応援よろしくお願いします!
<(_ _)>




