7.不思議な繋がりを持つ、少年少女。
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よければ、あとがきまでお読みください!!
次回で、第2章は〆かな。
――数日後。
アーシャはまた、王城にいた。
そして、フラン王女の姿を探す。やや駆け足に捜索すること十数分、彼女の姿は先日と同様、中庭にあった。ひとまず安堵したアーシャは、ゆっくり王女に歩み寄る。
「こんにちは、フラン様」
「アーシャお姉ちゃん、こんにちは」
声をかけると、フランは表情を変えずにそう答えた。
妖精との会話の途中だったのだろうか、王女は小さく手を振ってからこちらを振り返る。そして小さく首を傾げて、こう言うのだ。
「いま、妖精さんから聞いたよ? あの男の子の話だよね」――と。
珍しく、嬉しそうに目を細めて。
それにアーシャは、心の底から驚いた。
今日、ここにくるまでテーニャの話などしていない。
だから王女がそう口にするのは、まずあり得ないことだった。――そう。本当に、妖精と情報を共有でもしない限りは。
「それならもう、わたくしが話す必要はない、ですか?」
「ううん。細かいことは知らないの。だから、聞きたいかな」
アーシャは速くなる胸の鼓動を感じながら、そう訊ねた。
するとフランは、首を左右に振ってから答える。だとすれば、しっかりと提案しなければならない。そう思って、公爵家令嬢は真っすぐに王女を見た。
「フラン様。もし、よろしければ――」
◆
「……え、王女様には会いたくない?」
「はい……」
ボクはテーニャの言葉に、驚いてそう答えた。
修繕終了の期日に、少年は時間ピッタリにやってきてそう話すのだ。
アーシャに頼んで彼とフラン王女を再会させる、という算段だったのだけど。まさか、その前段階で断られるとは思ってもみなかった。
というか、そもそも――。
「相手が王女様だって、知ってたの?」
ボクは、そのことに驚いた。
以前会った時の彼は、高貴な少女、としか言っていない。
つまるところ、テーニャ自身はその子が王女だとは知らないはずなのに。
「妖精たちが、話をしてくれたんです」
「あぁ、そうなのか……」
こちらの困惑を察してか、彼は簡単に種明かしをしてくれた。
独自の情報網、というやつなのかもしれない。
ボクはそう納得して、改めて訊ねた。
「それで、どうしてなの……?」
どうして、テーニャはフラン王女に会いたくないのか。
それについて、彼は微かに笑って言った。
「えっと、ですね――」
あどけなくも、整った顔立ち。
そこに恥じらいも、僅かに見せながら。
「昨日、伝えたんです。いつか僕の力で、返しに行ってみせます、って」――と。
それは、もしかしたら彼なりの誓いだったのかもしれない。
あの日のような弱い自分ではなく、いつか強い自分になって、と。
「……そっか」
ボクは少年の言葉を聞いて、どこか誇らしくなった。
そして、そんな彼に自分ができることは、一つしかないと再確認する。
奥の棚から、髪飾りを取り出して。
テーニャに手渡しながら、ボクはこう伝えるのだった。
「今度は、守ってあげなくちゃ駄目だよ?」
「…………はいっ!」
輝くそれに、負けないくらいの満面の笑みで。
少年はボクに頷くのだった。
修繕師にできるのは、あくまで『思いを繋ぐ』こと。
だったらボクは、何度でもテーニャたちの力になろうと誓った。
「……あ、でも。それだったら――」
だけど、そこでふと思い付くことがある。
テーニャを呼び止めて、ボクは少年にこう言った。
「相談に乗ってくれそうな人がいるんだけど、どうかな……?」――と。




