エピローグ 『想い』を繋ぐ修繕師。
※最終巻発売しました!
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人の『想い』というものはそれぞれだ。
美しく感じるものもあれば、時に共感できないものもあるだろう。それでもボクは、人は必ず誰かしらを『想って』いるのだと信じたい。
がむしゃらにもがき続けた数年間で、ボクは貴重な経験に恵まれた。
たくさんの成長をして、大きな挫折も経験した。
だからこそ、胸を張って言える。
人と人がいる限り、そこには必ず『想い』というものが生まれる。そして、それはきっとまた人から人へ、新しい形と意味を持って繋がっていくのだろう。
ボクがしてきたのは、その一端に少しだけ手を添える程度のこと。
人はみな、誰もが思い悩んで、それでも前を向く。
それこそがきっと、尊いものなのだろう。
◆
「うん? どうしたの、アトリエにくるなんて珍しいじゃないか」
「ねぇ、お父様! これは何? すっごくキラキラしてる!」
ボクが修繕をしていると、一人の少女がひょっこりと顔を出した。
彼女はこちらが手にした品を見て、目を輝かせる。
「あはは、なんだと思う?」
そんな姿が、どこか懐かしくて。
ボクはほんの少し、意地悪な問題を出した。
「えー……っとね、お父様が作ったんだよね?」
だけど、幼い子供には分からないだろう。
そのことは予想済みで、ボクは彼女を膝の上に乗せて依頼品に触れさせた。
「いや、残念ながら不正解だね。ボクがやっているのは『修繕』さ」
「しゅう、ぜん……?」
答えを伝えても、どうやらピンときていないらしい。
首を何度も傾げながら、道具と依頼品を交互に見比べていた。
その時だ。
「あぁ、もう! ここにいたのですね!?」
「あ! お母さま!!」
部屋の扉の方から、妻の声が聞こえたのは。
彼女は膝の上の彼女を見ると、頬を膨らしながら言った。
「お父様はお仕事中ですよ! ほら、こっちにきなさい?」
「えー……いいではないですか、お母さま……」
そんな幼いやり取り。
ボクはどこかおかしくなって、思わず笑ってしまう。
そして、ちょっとだけ不機嫌な妻に向かって、優しく言うのだった。
「いいよ、アーシャ。この子も、興味あるみたいだしさ」
「……ライル…………」
するとアーシャは、毒気を抜かれたように一つ息をつく。
そのまましばし考えてから、彼女はこう提案した。
「そうですね。では、たまには私たちに修繕を教えてくださいませんか?」
「え!? アーシャにも!?」
「良いではないですか! 私だって、少しは興味あります!!」
「それ、この子のこと言えないんじゃない……?」
「……なにか、文句でも?」
「いえ、なにも」
それに驚きはしたが、こうなっては仕方ない。
ボクは作業をいったん終了し、練習用の道具を取り出した。そして、
「いいかい? これは、人の『想い』を繋ぐ大切なものなんだ」
最愛の娘に、そう語り掛ける。
彼女はまだ分からないのか、少し不思議そうにしていた。
ボクとアーシャはそんな娘の姿に思わず笑いながら、でも真剣に伝える。
「だから、決して雑に扱ってはいけないよ?」
「はい! 分かりました!!」
「よし、それじゃあ――」
元気な返事。
それを聞いて、ボクは大きく頷く。
そして、胸の高鳴りのままにこう宣言するのだった。
「みんなで一緒に、やってみようか!」
こうして、また一つの繋がりが生まれて。
繋がれた手はいずれ、大きな未来へと続いていく。そう、これは――。
そんな『想い』を大切にする、一人の修繕師の物語。
これにて完結です。
連載開始からちょうど3年間、ありがとうございました。
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