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【8/23紙最終巻】追放された元雑用係、規格外の技術で「最高の修繕師」と呼ばれるようになりました~SSSランクパーティーや王族からの依頼が止まりません~  作者: あざね
エンディング

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5.冒険者たちの未来。









「いや、しかしリンドがついに騎士団長か! スゲーな!」

「本当におめでとうリンド、それにシエスタも」

「ジャック、リコ……ありがとう」



 とある喫茶店で、数年振りに懐かしい面々が集まっていた。

 リンドにシエスタ、そしてジャックにリコの四名は、近況報告をしている。その中で最初に話題に上がったのは、リンドの騎士団長就任の件だった。入団して間もなくは『冒険者上がり』と揶揄されていたというのに、彼は実力をもってそれを覆したのである。

 ジャックとリコは嬉しそうに笑って、何度も頷いていた。



「でも、私は何もしてないわよ……?」



 だが、そこでふとシエスタが首を傾げる。

 どうやら今の祝辞に自分の名があったことに、疑問を抱いたようだった。すると、そのことに言及したのはリンド。彼は凛とした態度で、シエスタにこう伝えた。



「何を言っているんだ、シエスタ。キミが家を守ってくれているから、私は安心して任に就けているんだよ。感謝し切れないのは、こちらなのだから胸を張ってくれ」



 夫婦とは、すなわち一蓮托生である。

 どちらかが欠けては、力を出し切ることはできないだろう。



「そうだぜ、シエスタ。家族ってのは、力になるんだよ」

「……そうね。ふふふ! それなら、貴方たちはもっと強くなるんじゃない?」



 リンドに賛同するようにしてジャックが言うと、シエスタは納得して笑った。

 そして、ちらりとリコのお腹を見ながらそう口にするのだ。



「そうね。ジャックには、もっと働いてもらわないと」



 彼女の言葉を受けて、リコは愛おしそうにそこを撫でる。

 リコに新たな命が宿ったと分かったのは、半年ほど前のこと。もうずいぶんと大きくなったお腹に、三人は期待や慈しみの眼差しを向けていた。この四人の集まりにおいて、リコの妊娠はとかく明るい話題だったのは想像に難くない。

 だが少し気恥ずかしいのか、ジャックはおどけてこう言った。



「もっと働け、って……勘弁してくれよー……」

「ははは! だけど、そうも言っていられないだろう?」



 冒険者稼業も、決して楽ではない。

 時には命を張ることだってあり、危険とは隣り合わせだ。

 それでもリンドは明るく笑ってジャックに、期待するように言うのだった。



「だって、ジャックはこれからリーダーになるのだからね」

「それが性に合わない、ってんだよー!」



 リンドが元いたパーティーでは、また新たな動きがあったのだ。

 結果として次期リーダーはジャックということになり、しかし堅苦しい立場が苦手な彼は思い切り頭を掻いてうな垂れている。そしてテーブルに突っ伏し、動きを止めた。

 すると、そんなジャックに声をかけたのはリコ。



「でも、頼りにしてるからね……?」



 彼女は夫の耳元で、静かにこう囁くのだった。




「……お父さん?」――と。




 その言葉にジャックは、勢いよく面を上げる。

 そして身体を微かに震わせながら、こう叫ぶのだ。




「うおおおおおおお! もうこうなったら、やってやるぜえええええええ!!」




 彼の宣言にリンドとシエスタは顔を見合わせ、嬉しそうに拍手を送る。

 リコは少し恥ずかしそうだったが、満更でもない様子だった。

 だが、そこでふとジャックはもう一人のことを思い出す。



「なぁ、リンド。……あいつ、いまどうしてるんだ?」

「彼のことかい? 心配はいらないさ。だって――」




 リンドはそこで言葉を切って。

 窓の外にある王城に、視線を投げながら言うのだった。




「彼はもう、立派な騎士になったのだからね」――と。









 ――王城の中庭。

 そこは、とても不思議な場所だった。

 誰もいない時でさえも、どこか賑やかな雰囲気が漂っている。綺麗な花々が並んでいる様子には心が休まり、茶会を開けばいつもより会話が弾むのだ。だが、どうしてここがそのようになっているのか。真相を知る者は、王城内には『二人』しかいない。



「……そう。ありがとう」



 エルタ王国の王女、フランは何者かと言葉を交わしていた。

 いま、この中庭には彼女しかいない。


 だがフランは、確かに誰かと話していた。

 そして、小さく微笑みながら『来訪者』を待つのだ。



 それは、とても懐かしい日の約束。

 叶うはずがないと、誰もが思っていた夢物語。

 妖精の姿が見える不思議な少年少女の、一時の邂逅のはずだった。しかし、






「フラン王女、少しお時間よろしいでしょうか」






 一人の騎士が、恭しく片膝をついて頭を垂れる。

 彼の手には『あの日』に与った約束の品。



 いつか自分の力で、返しに行けるようになりたい。

 そう願って、願い続けて、ついに辿り着いた。



 孤児であった少年と、一国の王女。

 そんな御伽噺のような関係は、いま現実となる。



「うん、ひさしぶりだね」




 フランが愛らしい笑みを浮かべ、そう言った。

 騎士はゆっくりと面を上げる。その顔は、ずいぶんと大人となっている。それでも二人を繋いでいる絆は、決して変わることがない。

 彼らには、彼らだけの時間の流れがあった。




「長らくお待たせして、申し訳ございません」

「ううん。そうでもないよ」




 騎士の青年――テーニャは、小さく口元に笑みを浮かべる。

 そして、手の中の『絆』を差し出しながら言うのだ。





「たしかに、お返しに参りました」――と。




 


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