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5.他の誰でもない、キミだから。

作者の喉が緊急事態(腫れててものが呑み込めない)ですが、頑張ります。

うおおおおおおおお_(:3 」∠)_









 ――目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。



「こ、こは……?」



 ボクはゆっくりと身を起こし、呆然と周囲を確認する。

 どうやらここは、どこかの寝室らしい。らしいというのは、とかく庶民の自分が使用するそれとかけ離れていたから。あまりに豪華な一室は、それこそ貴族が扱うようなものだった。とてもボクのような人間に、この部屋の代金が支払えるはずがないだろう。



「起きましたか? ……ライル」

「アーシャ……?」



 そんな心配をしていると、部屋の中に入ってきたのはアーシャだった。

 安堵したように微笑む彼女を見て、ボクはおおまかな流れを把握するに至る。



「……アーシャが、用意してくれたの?」

「えぇ、出過ぎた真似とは思いましたが……」

「そんなこと、ないよ」



 どうやら、気を失ったボクを助けてくれたのはアーシャのようだった。

 いつも当たり前のように一緒にいるから忘れていたが、彼女は公爵家の御令嬢。だとすれば、このような場所に寝かされている状況も納得できた。

 ボクは一つ息をつく。

 そうしていると、アーシャは持ってきた果物の皮をナイフでむき始めた。



「……そういえば、今日は何日なの?」

「今日、ですか?」



 彼女のそんな姿に見惚れつつ。

 しばしの時間が経過して、疑問が解消されると浮かんだのはそんな疑問だった。ボクが訊ねるとアーシャは手を止めて、少しだけ間を置いてから答える。



「え……!?」



 ボクはそれを聞いて、背筋が凍る思いがした。

 何故なら倒れたあの日から、三日以上も経過してしまっていたのだから。



「い、急がないと……!」

「なにをしているんですか、ライル!?」



 大慌てでベッドから降りようとするボクに、アーシャが驚いていた。

 だけど、そんなことを気にしている場合ではない。ただでさえ『手に負えない量』の依頼を抱えているのだ。数日のロスは、致命的な影響が出てしまう。

 そう考えて、立ち上がろうとした瞬間だった。



「あ、う……?」

「あぶない!」



 床に足をつくと、膝から力が一気に抜けて倒れかけたのは。

 そんなボクの身体を必死になって支えてくれたのは、アーシャだった。彼女はゆっくりとこちらの身体をベッドに横たえると、思い切り眉間に皺を寄せて言う。



「まったく、貴方は数日も気を失っていたのですよ!? いきなり無理しないでください!!」

「あ、う……うん、そうだね。うん……」



 物凄い剣幕で叱責され、ボクは引き下がらざるを得なかった。

 そしてようやく現在の自分が、修繕なんてろくにできる状態ではないこと理解する。そうなってはさすがに仕方ない。ボクはゆっくりと、身を休ませるのだった。



「………………」



 すると急に、部屋の中は静かになって。

 耳に入ってくるのは、アーシャが黙々と果物の皮をむく音だけになった。献身的に支えてくれる彼女に感謝の念を抱くと、ふとあの日の自分を思い出す。

 いまになって思うと、ボクは彼女に対してなんと失礼なことをしたのか。こうやって休養し、冷静になって考えるとあり得ないことばかりだった。


 自分らしくない、というのかは分からないけど。

 少なくとも相手の気遣いを無碍にするのは、間違っていたと確信できる。



「……ねぇ、アーシャ。その――」

「どうしました?」

「…………」



 そのことを謝罪しようと、アーシャに声をかけた。

 小首を傾げる少女の姿に気が引けたが、ボクは勇気を出して頭を下げる。



「あの時は、本当にごめん。……どうかしてた」

「………………」



 するとアーシャは微かに息を呑み。

 しかしすぐに、首を左右に振ってこう口にした。



「ここ最近の貴方は、なにかに憑かれているようでした」――と。



 それはきっと、彼女だから察知できたこと。

 ずっと誰よりも一緒にいて、誰よりもボクのことを見てくれていたアーシャだからこそ。ボクがいつものように無茶しているのではないと、見抜いてくれていた。

 そのことに気付いてくれたのは、アーシャ以外にいない。



「いったい、何があったのですか? ……ライル」



 だからこそ、彼女はボクに改めて訊ねるのだ。

 その言葉を聞いてようやく、怯えていた自分と決別できた気がする。



「うん。……アーシャになら、話せるよ」





 ボクはそう前置きしてから。

 あの日から今まで、なにがあったのかを白状し始めたのだった。



 


https://book1.adouzi.eu.org/n3751ip/

↑異世界恋愛書いてみました。勢いで。




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