7.苦難さえも、糧にして。
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「えっと、お隣の方は……もしかして?」
ボクがティローの隣に立つ女性を見て言うと、彼は一つ頷く。
そして、彼女は優しい笑顔を浮かべて名乗るのだった。
「はい、私がエリザです。貴方のお爺様――ローンド様のお手伝いをしていました」
それを耳にして、ボクは不思議な感覚を抱く。
初めて会ったというのに、そのような気がしないというか。それでいて絵画の中からそのまま出てきたような美しさに、心を奪われてしまったかのような。親しみと同時に憧れを抱いてしまうような美貌に、ボクは声を失ってしまったのだ。
もっとも、本人はその自覚がないのだろう。
それがまた多くの男性を悩ませそうだ、と思わされた。
「む……ライル?」
「え、いて!? なんで怒ってるのさ、アーシャ!?」
「怒ってなんかいません。ただ鼻の下を伸ばすライルを見ていると、妙にイライラしてしまっただけです」
「怒ってるじゃないか!?」
「怒っていません!!」
などと考えていると、隣の公爵家令嬢に脇腹を強めに小突かれる。
理由の分からない暴力に抗議すると、これまた意味不明なことを言われてしまった。そんなこんなで、ボクとアーシャが言い合いをしていると――。
「ぷ……あはは!」
「まったく、相変わらず気の抜ける方ですね」
そんな様子を見たエリザさんは吹き出し、ティローには呆れられてしまう。
彼らの反応にボクたちは、ハッとして互いの顔を見合わせた。そして、どうしようもなく恥ずかしくなってしまう。一気に顔が熱くなるのを感じたけど、それはアーシャも同じだろう。真っ赤な果実のように頬を赤らめた彼女は、視線を逸らしうつむくのだった。
「アーシャさん、でしたか?」
「……はい?」
すると、そんなアーシャに声をかけたのはエリザさん。
彼女は少しだけ悪戯っぽく、こう言うのだった。
「大丈夫ですよ。……取ったりしませんから」――と。
ボクには、その意味が分からなかった。
だけどアーシャにとっては、弱点だったらしく……。
「ひぅ……!?」
公爵家令嬢は、短くそう悲鳴を上げて縮こまるのだった。
◆
「……え、それじゃあ!」
「はい。自分とエリザさんが、今回の神殿修復に手を貸すように遣わされました」
「よろしくお願いしますね!」
そんな一幕があってから。
ボクたちは互いの近況を話し合う中で、目的の一致を見出した。
どうやらボクが陛下から受けた依頼――神殿修復の手伝いとして、二人がエルフの村から派遣されてきたらしい。と、いうのも経典の修繕、その実績からだったらしいが……。
「私はきっと、長に言われなくても立候補してたと思います」
エリザさんはそう言うと、また優しく笑みを浮かべた。
そして、おもむろに祖父の墓前へ向かと――。
「……お久しぶりですね、ローンドさん」
彼女は静かに雪上に膝をついて、語り掛けるのだ。
その後姿を見て、ティローがボクに言う。
「彼女は貴方に、心の底から感謝している」
「え……?」
彼の言葉に、ボクは思わず首を傾げてしまった。
するとまたティローは呆れたように、肩を竦めつつこう続けるのだ。
「本当に優しい女性だからな。……貴方の祖父が犯した過ちさえ、今では必要な試練だったのだろう、と考えているそうだ」
「そう、なんだ……」
それを聞いて思わず声が詰まる。
どれ程の悲しみを背負って、日々を過ごしてきたか分からない。
だというのに、エリザさんはそれすら受け止めて前を向くことを選んだのだ。そんな彼女の後ろ姿を見て、ボクは黙って唇を噛む。そして……。
「ティロー、絶対に……成功させよう」
そう、決意を口にするのだった。
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