6.季節外れの墓参りで。
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神殿修復の依頼を断る理由はなかった。
それが祖父――ローンド・ディスガイズの残した課題であれば、なおのことだ。国王陛下は『キッカケ』という風に濁していたが、三者の関係を引き裂いた事件は経典の修繕に他ならない。その経緯を察したからこそ、ボクは二つ返事で引き受けたのだった。
「ライル、少し表情が硬いですよ……?」
「あ、え……そ、そうかな」
「ずっと眉間に皺が寄ってます」
「………………」
そう考えていると、心配そうに声をかけてくれたのはアーシャ。
彼女は小さく首を傾げながらこちらの顔を覗き込むと、指で自身の眉間をトントンと叩きながら言った。その指摘を受けてようやく、ボクは自分が険しい顔をしていたと気付く。
どうやら自分で思っているより、今回の一件に入れ込み過ぎているようだった。
「……やはり、気になりますか?」
「そう、だね……」
アーシャもそれを理解しているのだろう。
静かに訊ねられ、ボクは一つ息をつきながら答えた。
ここまで緊張する依頼というのは、もしかしたら久し振りかもしれない。彼女が訊いてきたように、ボクにとって家族の問題は大きいのだ。
祖父と父、そして自分。
もうすでに袂は分かったと考えているが、気にしないのは無理だった。
「それなら、ローンドさんにご挨拶してきませんか?」
「え、挨拶って……」
そう思っていると、アーシャがそう提案してくる。
一瞬だけ何を言われたか理解できず、呆けてしまうが……。
「……あぁ、そういうことか」
ボクはすぐに合点が行って、彼女に頷き返すのだった。
◆
――祖父の墓に夏季以外でくるのは、初めてだった。
すっかり雪化粧がされた墓標は、少しばかり寂しさを醸し出している。この季節に墓参りをする人は、まずいない。だから余計に周囲の物音が、ハッキリと聞こえるような気がした。
ボクとアーシャは雪を軽く掻き分けながら、目的の場所に到着。
そして、ふと気付くのだった。
「あれ、誰かきたのかな……?」
祖父の墓前には、ささやかな花束が置かれている。
つまりボクたちより先に、誰かが季節外れの墓参りをしたということ。だけど、いったい誰なのだろうか。祖父の関係者で、そんな変哲な行動を取る人が思い浮かばなかった。
考えても、きっと答えは出ないのだろう。
だが、それでも気になって仕方がなかった。
「ねぇ、アーシャ。誰だと思う……?」
「……さぁ、分かりませんね」
「うーん……」
そう思って傍らに立つアーシャにも訊ねるが、やはり答えは出てこない。
そんな時だった。
「あぁ、ここにいたのですね?」
「え……その声、って――」
またずいぶんと、懐かしい声が聞こえたのは。
ボクが驚いて振り返ると、そこにいたのはエルフの男女だった。
そして、男性の方には馴染みがある。
ボクはどこか嬉しくなり、その青年の名前を口にした。
「ティロー、ひさしぶり!」
するとエルフの青年は、一つ小さく笑った後にこう答えるのだ。
「……えぇ、ご無沙汰しております。ライルさん」――と。
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