5.ライルの帰宅。
逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……(〆切&原稿
頑張ってます。遅くなり、申し訳ございません。
――関係が近くなればなるほど、想いは伝えにくくなる。
もしかしたら、祖父と父はそのような距離感だったのではないか。ボクはアーシャの言葉を聞いて、居てもたってもいられなくなった。何故なら祖父がずっと、父であるシャッツとの関係を修復したがっていたことをボクは知っていたから。
あれほどまでに真摯に花冠を作る姿に、嘘などあろうものか。
幼いボクの記憶の中のローンド・ディスガイズは、決まって『家族の話』になると悲しげな表情を浮かべていた。
彼らの間にあったことをボクは詳しく知らない。
それでも、そこにあった『願い』の形は理解していた。
「ライル……少し、休みましょうか?」
「ううん、大丈夫だよ。アーシャ」
「そう、ですか……」
気持ちが、とにかく急いている。
アーシャがそんなボクを見て、気遣うように言ってくれた。それでも自分は、今すぐにでも父との関係――いいや祖父と父、そしてボクの三代に渡る因縁に決着をつけたい。こんなに悲しい気持ちになるのは、今日限りで最後にしたい。
そんな思いが湧き上がって、歩調を速めていた。
付き添いの少女は慌てた様子で横に並んで、一生懸命についてくる。
「ライル……」
そして、なにか言いたげにボクの名前を口にした。
しかし言葉は続かずに、沈黙する。
彼女には申し訳ないけれど、今ばかりは気遣う余裕がなかった。
緊張や焦燥で舌が上手く回らず、気の利いた言葉は口にできないと思う。その中でボクは手のひらに滲んだ汗を握り締めて、心の底に顔を出した不安を押し込めた。
背を向けるのは、今日で終わりにする。
そして、祖父の望んだ『家族』の在り方を始めるのだ――と。
「……ついた、ね」
「ここが、ライルの御実家……ですか?」
「うん……」
そんな想いを胸に抱いて。
ボクたちはついに、ライル・ディスガイズの生まれ育った家へとたどり着いた。
どこにでもある平々凡々な家の玄関先に立って、改めて深呼吸をする。アーシャの顔色を気にする暇なんてなかった。ボクは意を決して、呼び鈴を鳴らす。
すると、よく聞き慣れていた女性の声がして。
ゆっくりと扉は開かれた。
「…………ライル?」
「……ただいま、母さん」
ボクたちを出迎えたのは、母――ミラ・ディスガイズ。
顔を見るのは、いったい何年振りだろうか。彼女は少しだけ驚いた後、瞳を微かに潤ませてボクのことを抱きしめた。
そこに言葉なんてない。
そこに言葉なんて、必要なかった。
こうしてボクは、久方ぶりの帰宅を果たしたのだ。
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