3.惑う気持ちと、願いの花冠。
五月末に紙コミックス2巻でますよ!
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――いったい、いつ以来だろう。
夕暮れの道を歩きながら、育った家を目指すのは。
「………………」
最後にここを通ったのは冒険者として、店を開くための資金を稼ぎに出た時だったか。それはもう帰路ではなく、二度と帰らないという強い意思を持っての旅立ちだ。
その頃はこうやって、家に帰ることになるなんて思いもしなかった。
それも、父との関係を見直すため、だなんて……。
「不安ですか、ライル……?」
「あ、ううん……ただ少し、不思議だなって……」
そう考えていると、声をかけてきたのはアーシャだった。
彼女はこちらを心配するようにして、ボクの顔を覗き込んでくる。それに対して、いつもなら笑って返せるはずなのだけど、今ばかりはどうにも難しかった。
不安が少しもない、といったら嘘になる。
しかし、それ以上に不思議な感覚が大きいのだ。
「不思議……?」
「いや……家に帰るのって普通のことのはずなのに、どうにも非日常感が拭えなくてね。それだけボクが、自分の問題から目を背けてきたのか、ってことだけど」
「……ライル」
そう、ボクは今まで見ないフリをしてきた。
他の人に家族の絆や、思い出の大切さを説きながら、自分自身はその問題に背を向け続けていたのだ。だからきっと不思議な感覚――言い換えれば、違和感が消えない。
地に足がついていないような、酩酊感に似たようなもの。
気を抜けば、膝から力が抜けてしまうかもしれない。
そう考えるとまた、肩肘に要らない力が入る。
踏み出す一歩がまた、ぎこちなくなる。
「ライル、安心してください。……大丈夫ですよ」
「アーシャ……?」
そんなボクの気持ちを察して、少女がそう声をかけてくれた。
そして、優しく手を取って笑いかけてくれる。
「貴方は今までずっと、依頼人の心に寄り添ってきたでしょう? その想いに嘘があったとは、私には思えません。だから、自信を持ってください」――と。
微笑みながら、アーシャは言うのだった。
ボクはそれを受けて、しばし黙り込む。そうしていると、
「……さて! せっかくの機会ですし、手土産なしでは失礼ですよね!!」
「え、アーシャ……!?」
先ほどまで柔らかく笑みを浮かべていた彼女は、また違う表情を浮かべた。
咲き誇る花のような明るい笑顔で、近くにあった露店を指で示す。見ればそこにはがらくたから土産品まで、多種多様なものを揃えた店が並んでいた。
公爵家の令嬢が立ち寄るような場所ではなく、しかしアーシャは何の抵抗もなく店の商品に目を通し始める。どうやらボクは相当、暗い表情をしていたらしい。
「ライルのご両親は、どのようなものがお好きなのですか?」
「そ、そうだね。昔の話だけど――」
だから、少しでも心配をかけないように。
ボクは努めて明るく答えて、彼女の質問に答えるのだった。すると、
「あ、れ……これって、造花の花冠?」
ふと、とある店の前で足が止まる。
そこにあったのは小規模な花屋さんで、老齢の女性が一人で店番をしていた。だがそんな中でも、ボクが目を止めたのは本物の花束ではなく、造られたそれ。
色褪せてはいるものの、ずいぶんと丁寧に作られた品だった。
「花冠には、願いを込めて……か」
そして思い出すのはある日、アーシャと話した昔話。
彼女の両親が互いを想っていた証として、聞かされたものだった。
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