2.ライルを支えてくれる存在。
少しずつ、書いていく。
あとがきの新作もよろしくです。
「ライルのご実家に挨拶、ですか?」
「うん、突然のことで悪いんだけど。ボクの家庭事情を話したのはアーシャしかいなくて、他にこんなことをお願いできる人がいないんだ」
「そ、そうですか……」
翌日、店を開ける前にボクはアーシャに相談をした。
すると、どういうわけか彼女は一瞬だけ顔を赤くして狼狽えてしまう。事情を話すと咳払い一つして、気を取り直すかのように頷くのだった。
「向き合う覚悟が、できたのですか?」
「…………」
そして、そう訊いてくる。
ボクはアーシャの問いかけに対して、しばし考え込んだ。正直なところ、いまの自分が真っすぐに父と向き合う勇気や、覚悟があるとは思えない。
それでも、このままではいけない。
そんな漠然とした気持ちが、先日から胸を締め付けていた。
「分からない。でも……」
「なるほど。つまりは、出たとこ勝負、ということですね?」
「……うん」
そんなこちらの胸中など、お見通しということか。
アーシャは鋭くそのように指摘した。対してボクが力なく頷くと、どこか考え込むようにしてから質問してくる。
「ライル、焦ってはいませんか……?」
「……それ、は」
「こういった問題の解決は、一朝一夕でいくものではないと思います。きっと長い時間をかけて、少しずつ絡み合った糸を解くように、緩やかに解決するのだと」
「………………」
たしかに、彼女の言う通りだった。
今まで多くの修繕依頼をこなしてきたけど、簡単に終わったものは少ない。今回の話で一番近いのは、現在進行形で修練に励んでいるコルネだろうか。
ボクは少年が成し遂げると信じているが、たしかに時間は多くかかると思った。
だとすれば、ボクの気持ちはどのように向ければ良いのか。
「ひとまず、深呼吸ですよ。……ライル」
「アーシャ……」
いつの間にか、暗い表情を浮かべていたのか。
少女が傍までやってきて、そっと手を取って顔を覗き込んできた。そして、穏やかな笑みを浮かべてこう言うのだ。
「大丈夫です。少しずつ、少しずつで良いのですから」
「……うん、そうだね」
「それでもライルが、何か行動を起こしたいのなら――」
いつも、ボクを見てくれていた。
いつも、ボクを支えてくれていた。
いつも、ボクの心に癒しを与えてくれた。
そんな彼女は、今までのように口にする。
「私も一緒に、行きますから」――と。
それを聞いて、ようやく呼吸ができたような感覚を抱く。
そして、ボクは小さく感謝を口にするのだった。
「ありがとう、アーシャ……」
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