9.継がれる絆。
親子って、難しいです。
あとがきの新作もよろしくです!
この章のエンディングは、今日の夜に!
「おめでとう、ジャック! リコ!!」
「二人とも決まってるわよ!!」
――あれから、いくらか時が流れて。
今日はジャックとリコの結婚式、その当日。リンドの時ほどではないが、式場には冒険者を中心として多くの人が集まっていた。ジャックは大勢の仲間たちを見て、自然と笑みをこぼす。
リコも、そんな彼を見て柔らかな笑みを浮かべていた。
だけど分かっている。
自分たち、いや――ジャックは仲間たちの中から『彼の姿』を探していることを。
結局、息子の結婚式にリカルドは姿を現わさなかった。それもそのはずだろう。あのように啖呵を切って、家を飛び出し、彼の望まぬ結婚をしたのだから。
そんなことは、あの日から分かっていた。
それでも、どうしても探してしまう。
もしかしたらを考え、何度もそれらしい人影を見ては落胆した。
「ジャックさん……!」
「え……?」
そんな時だ。
人の波を掻き分けて、あの青年が姿を現わしたのは。
正装こそ身にまとっているが、上手く整え切れていない。そして、目の下には大きなクマを作って、髪の毛はボサボサだ。とても結婚式の会場にはそぐわない出で立ちの彼は、小さな箱をジャックに差し出す。
「ライル、これって……?」
「依頼の……! 大切な想いのこもった品です……!」
ジャックが訊ねると彼――ライルは、息も絶え絶えにそう答えた。
どれほどの時間をこの品の修繕に費やしたのか。いまの青年の姿を見れば、その苦労は明らかだった。しかし、そこまでの何かを自分は依頼しただろうか。
そんな疑問を抱きながら、ジャックはその小箱を開けた。
すると、そこにあったのは――。
「これって……」
たった一つ、綺麗な細工の施されたブレスレットだった。
取り出してみると、どこかで見た記憶があるように思える。たしかこれは、二つで一つ。一対のブレスレットだったはず。彼はそれを知っていた。
何故ならこれは、亡き祖母の形見だったのだから。
そして、
「あぁ……!」
ジャックはふと、ある幼い日のことを思い出すのだった。
◆
そこでは、葬儀が執り行われていた。
死者との最期の別れを惜しむ人の列ができており、自分はそのうちの一人だった。しかしそんな中でも、ひときわ大きな声で泣いていた人物がいたのだ。
憶えている。
それはジャックの父、リカルド。
この葬儀は、彼にとって最愛の母――ジャックにとっての祖母のものだったのだ。いつもは厳格で、何があっても強い表情を崩すことのない父が、あまりに大きな声で泣いていた。それが深く印象に残っているのはきっと、ジャックにとって唯一の光景だったからだろう。
ジャックは、知らない。
あの厳しい父が、その日以外に人目をはばからず涙した光景を。
それほどまでに、祖母との別れが辛かったのか。
いいや、考えるまでもないだろう。どれだけ歳を重ねようとも、どれだけ経験を積もうとも、大切な人との別れが辛くない人などいない。
その中でも、リカルドはとにかく大声で泣き続けた。
まるで『子供』のように、ずっと……。
◆
「…………あぁ、そうか」
それを思い出して、ジャックは小さくそう声を漏らした。
あの日の父の姿はまるで『子供』のそれだったが、その理由がようやく分かった気がする。何故なら彼は、間違いなく『子供』だったのだから。
それもそのはずだ。
親にとって、子にとって、その関係は生涯に渡って『親子』であることに変わりはないのだから。
「……あぁ、オイラたちはホントに、馬鹿だな」
それを『想い』ジャックは、ブレスレットを優しく胸に抱きしめる。
そんな彼の手は、静かに震えていたのだった……。
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