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7.ライルの過去と、深まる溝。

あとがきの新作も、応援よろしくです_(:3 」∠)_

紙コミックスも発売間近!!









「どうして認めてくれないんだ、父さん!!」

「うるさい! お前まで、あのろくでなしの後を追うのか!!」




 それは、修繕師になりたいと、父に伝えた時のこと。

 ボクの言葉に父――シャッツは激昂し、互いに唾を飛ばしながらの口論になった。彼は祖父のことを『ろくでなし』だと語り、罵り、そして嘲る。その上で、ボクにもそのような馬鹿げたことはさせられない、と言ってくるのだ。

 しかし、そのことがボクにとっては承服できない。

 お爺ちゃんは決して『ろくでなし』などではなかった。それは、むしろ――。



「父さんの方だよ……!」

「なに?」

「『ろくでなし』は父さんの方だ!! だって――」



 ボクは、それまでずっと抱えてきた感情を爆発させる。




「お爺ちゃんのお見舞いにだって、一度もこなかったくせに!!」――と。




 父さんは病床に伏せった祖父が、余命幾ばくもないことを知りながら。

 それでも、頑として見舞いにはこなかった。結局お爺ちゃんの最期を看取ったのはボクで、葬儀こそ形式的に上げてはいたが、棺を見る父の無関心な表情は忘れられない。

 そんな人に、どうしてボクは認めてもらおうと思ったのか。

 そう考えてボクは、あらかじめまとめておいた荷物を手にした。



「……おい、ライル。お前、まさか――」

「ボクは自分の力だけで稼いで、修繕師になってみせる」

「…………っ!」





 そして、父の声に耳も傾けずに実家を出たのだ。









「そう、だったのですね」

「いままで隠しててごめん。こんな話、誰にもしたくなくてさ」

「……いいえ、話してくれてありがとうございます」



 ボクの話を聞き終えたアーシャは、何故か感謝の言葉を口にする。

 気を遣ってくれているかも、しれない。そう考えると、申し訳なかった。




「ライル。落ち着いたのか」

「え、ジャックさん……?」




 そう考えていると、声をかけてきたのはジャックさん。

 リコさんと一緒になって屋敷を出てきた彼は、どこか呆れたような表情をしていた。しかし作り物ではない笑みを浮かべて、こう続ける。



「ありがとうな、ライル。……お陰様で、清々したよ」

「……え?」



 その言葉に、ボクは思わず首を傾げた。

 するとジャックさんは、リコさんの手を取りながら言う。



「ライルの言葉を聞いて、さ。決心がついたんだ。――たとえ親に認められない婚姻だったとしても、オイラはリコと一緒に歩んでいこう、ってな!」



 ――だから、ありがとう、と。

 ボクはその感謝を耳にして、全身から血の気が引いていく感覚を覚えた。そして思い出すのは、リンドさんの『誰からも祝福されたものでなければ』という言葉。

 次に脳裏をよぎったのは、どういうわけか父の怒った顔だった。




「だ、だめです……!」

「……ライル?」

「ここでもし、認めてもらえないと……取り返しがつかない……!」

「……………………」




 するととっさに、そんな言葉が口をついて出ていた。

 ここで引いてしまえば、逃げてしまえば、きっと苦しむのは二人になる。そんな予感がボクの中に生まれて、どうにかして二人を止めないといけない、そう思ったのだ。

 そして、それは二人も理解しているのだろう。



「は、はは……参ったな」

「えぇ、そうね……」



 彼らは互いに顔を見合わせて、苦笑していた。

 分かっている。しかし、状況が最悪なのだ、と。



「どう、したら……」




 ボクはそんな二人を前に、拳を震わせるしかできない。

 こうなった責任は、ボクにあった。


 だから、なにか手を打たなければならない。

 そう考えていた時だった。





「ライル・ディスガイズ様、旦那様がお呼びです」

「…………え?」




 屋敷の使用人さんが、そうボクに声をかけてきたのは。





 


https://book1.adouzi.eu.org/n0367ib/

下記リンクから新作です。

ラブコメです(*‘ω‘ *)



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