5.子は親の言う通りに。
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ボクたちが通されたのは、当主――リカルドさんの私室。
ジャックさんを先頭に足を踏み入れると、そこには独特な緊張感が漂っていた。部屋の中にいるのはボクとアーシャ、ジャックさんにリコさん。そして、リカルドさんだけ。
厳格そうな顔立ちをしたリカルドさんは、椅子からゆっくりと立ち上がった。そして表情を一つも変えずに、少しずつジャックさんのもとへとやってくる。
「………………生きていたか」
「残念ながら、な」
それが、この親子にとって久々の会話だった。
彼らはしばし睨み合って、互いの出方を探っている様子だ。特にジャックさんの方は一つの隙も見せず、何かがあれば即座に反撃できるように構えていた。
ボクが見てきた親子たちとは、決定的に違う。
一緒の部屋に。そして手を伸ばせば届く距離にいるのに、ひどく遠かった。
『――ライルは、絶対に修繕師なんかにさせない!』
その光景を見ていると、嫌な幻聴が聞こえてくる。
思わず眉間に皺を寄せると、アーシャがそのことに気付いたらしい。
「ライル……? 気分が悪いのなら、少し外に――」
そして、気遣うように声をかけてくれた。
その瞬間だ。
「そこの娘は死霊術師の子、だそうだな」
沈黙を破って、リカルドさんがそう口を開いたのは。
部屋の中にある緊張感が、いっそうに強くなる。ボクとアーシャは思わず息を呑み、対面する親子の方を見た。
するとそこには、リコさんを顎で示しながら侮蔑の表情を浮かべるリカルドさんの姿。彼は軽く鼻を鳴らした後に、こう続けた。
「死霊術師は卑しい職業だ。死者の骸を扱うなど、汚らわしい」
それに対して、肩を震わせたのはリコさんだけではない。
必死に堪えてはいるが、ジャックさんも同じ。この場の意味合いが違えば、今すぐにでも殴りかかっていただろう。拳を震わせながら、彼は最愛の人のために侮辱を耐えていた。
だが、そんなジャックさんの想いを踏みにじるように父親は告げるのだ。
「お前は家に戻り、相応の相手と婚姻を結べ」――と。
その直後、ジャックさんはついにリカルドさんの胸倉を掴んだ。
そして叫ぶ。
「断る……! そして、今すぐ謝罪しろ!!」
紹介の意味がなくなったのだ。
そうなればこれ以上、謗りを甘んじて受ける必要はない。
しかし、ここで手を出してしまえば壊れてしまう。決定的に、何かが壊れる。
「ジャックさん、落ち着いて!」
「離せ、ライル!! オイラは……!!」
そう感じて、ボクはとっさに二人の間に割って入った。
胸倉を掴む彼の手を剥がそうと必死になって、力を込める。しかし、そこはやはり一流冒険者の腕力だろう。結局、ボクは彼が拳を上げないようにするだけで限界だった。
そんなこちらの様子を見て、リカルドさんはまた鼻を鳴らす。
そして、こう言った。
「子は――」
すぐ傍にいたボクには、それがハッキリと聞こえる。
彼は、本当に冷たい声色で言ったのだ。
「子は黙って、親の指示に従っていればいい」――と。
それを耳にした瞬間。
「…………あ」
ボクの中で、糸のようなものが切れた気がした。
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修繕師寄り?なラブコメです(*‘ω‘ *)
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