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ハズレ判定から始まったチート魔術士生活  作者: 篠浦 知螺


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拘束された教師達

 フレイムハウンドとの和解交渉が終わったのは、まだ夕方前の時間でした。

 夕食の時間までには、まだ間があるので、先生達が拘束されているラストックの

 施設を下見に出掛けました。

 次の救出作戦では、一番最初に着手する場所であり、ここで手間取ってしまうと、後の予定が遅れる心配があります。


 先生達が拘束されている場所は、駐屯地から見て、ラストックの街を挟んだ反対側にあります。

 敷地の広さは学校の校庭程度で、教室ほどの面積の二階建ての建物と厩を兼ねた倉庫があり、残りが更地になっていて、ここで訓練が行われているようです。

 拘束されている先生は六名で、男性四名に女性が二名、理科の古館先生を除いて、中年のおじさん、おばさんばかりです。

 先生達は、騎士タイプ、術士タイプを問わず、シーカーとしての訓練を受けていました


「もっと姿勢を低くして進め! そんなんじゃ丸見えだぞ!」


 ロープを張ったり、板で作った障害物が置かれていて、そうした障害物を除けながら、先の状況を探っていく訓練は、テレビで見た軍隊のトレーニングのようです。


「馬鹿野郎、迂闊に顔を出すな! ガキ共も一緒に全滅するぞ!」


 リーゼンブルグの騎士達は、実戦に出る時には、先生達が生徒を率いる形で森を進む事になると言って訓練を進めています。

 先生達も、自分達のシーカーとしての能力が、生徒の生死に関わると言われれば、嫌でも熱心に取り組むしかありませんよね。


 ですが、バステンが探った所では、それは先生達が訓練に熱心に取り組むようにする嘘で、実際には、本職のシーカーの前を歩かせる囮役として使われる予定なんだとか。

 シーカーとしての役割を果たせれば生き残れるが、魔物の接近に気付けなければ一番最初に犠牲になり、それによって本来のシーカーに魔物の存在を知らせる役目だなんて、当人たちは思ってもいないでしょうね。


 この施設にいるリーゼンブルグの騎士は三名で、夜間は宿直担当の一名を残して駐屯地へと戻ってしまうそうです。

 先生達は、建物の二階で生活しているそうで、下宿の僕の部屋よりも少し広い程度の個室と、共同のトイレ、浴室、台所などがあり、夜間は二階に上がる階段に鍵が掛けられるそうです。

 全部の窓には鉄格子が嵌っていますし、夜中に火事にでもなったら全滅ですよね。


 それにしても、六人に対して宿直が一人というのは、少し手薄に感じられるのですが、もし脱走した場合には、生徒に罰が与えられると言われているので、先生達も脱走を企てられずにいるようです。

 それに、敷地の外には出してもらえないので、外部の状況も全く分からず、脱走の計画すら立てられない状態のようです。

 夜間の警備が手薄なのは、こちらに取っては好都合なので、作戦決行前に連絡を取って、準備しておいてもらう事にします。


 救出作戦の時には、宿直の騎士を眠らせて階段の鍵を開け、置いてある小型の馬車をザーエに牽いてもらって駐屯地へ移動して、同級生達と合流し、そこからヴォルザードに移動します。

 階段の鍵は、宿直用の部屋の入り口に掛けてあるのを確認済みなので、眠らせた騎士は二階に閉じ込めておく予定です。


『それにしても……何だか薄汚れて、やつれて見えるんだけど……』

『あまり良い待遇とは言えませんから、仕方無いかもしれませんね』


 生活する為の設備は一応整っているそうなんですが、水や火は自分達で賄わなきゃいけないそうです。

 魔道具に魔力を流して水を出したり、調理用や風呂を沸かす火を点けるみたいなんですが、訓練でヘトヘトにされて魔力も消耗していて、最低限の水や火を賄うのがやっとのようです。

 風呂桶を満たすほどの水や、それを沸かす火は、数日に一度が限界のようです。



『風呂は何日に一度、洗濯の水にも困り、調理も上手く出来ないし、ろくな食材も与えられていないという状態です』

『なるほどねぇ……』


 僕の担任の佐藤先生なんか、日本に居た頃は厚化粧で若作りしてたらしく、化粧をしていない顔を見た時には、誰だか分からないぐらい老け込んで見えました。

 他の先生達も、程度の差はあれども随分と歳をとったように見えてしまいます。

 全員の顔からは生気が失われた感じで、気力で何とかしているという印象です。

 これでは、いくら使い捨てにするつもりでも、役に立たない気がしますよね。


『フレッド、同級生達の情報は伝わってるのかな?』

『それも教えてもらえていないようです。 フナヤマの件、五人、五十人と実戦に出た者が戻っていない事、全部伝えられていないようです』

『それは、悪い情報が伝わって、先生達が動揺したり反発したりするのを防ぐため?』

『そうだと思われますし、この後も生徒との接触は極力避けるようです』


 どの道、先生達に接触するにしても、騎士が一人になる夜になってからなので、アマンダさんに頼んで、何か差し入れを持って行く事にしましょう。

 一旦ヴォルザードに戻って、ドノバンさんへの報告や夕食を済ませてから出直して来る事にしました。


 ギルドに戻る前に、同級生達が働かされている城壁工事の現場へ行ってみました。

 今朝の時点では、反発していた鷹山達も、クラウスさんの話術に丸め込まれて、やる気を出していましたが、城壁工事は重労働ですからゴネたり揉めたりしていないか心配でしたが、その心配は、どうやら杞憂で終わったようです。


 近藤達を中心として、監督している工事の担当者や守備隊の人達と、手や顔を洗いながら、一日の感想を和気藹々と話していました。

 まぁ、ガセメガネは、例によってぼやいていましたが、新旧コンビや鷹山も輪に加わって、なんだか一体感を感じます。

 ここは、僕は顔を出さない方が良いように感じますね。


 監督してくれている皆さんの表情を見ても、今日の作業は問題無く終わったようですし、この調子ならば、みんながヴォルザードの人達に受け入れて貰える日も遠くない気がします。

 近藤も新旧コンビも鷹山も、体育会系で基本スペックならば僕よりもずっと高いですし、真面目に働けば認められて当然なんですよね。

 こうして僕の居ない場所で、みんなが街の人と交流を深めてくれるのが一番良い形なんでしょうけど、僕だけ参加していないので、ちょっとだけ疎外感を感じてしまいました。

 本当に心が狭い奴だと自己嫌悪に陥りそうです。


 気を取り直して、ギルドへと移動して、ドノバンさんにフレイムハウンドの一件について報告しました。

 アマンダさんの店の前での騒動から、決着までを順を追って説明したのですが、さすがのドノバンさんも、ニャーンをリボンで飾り付けてたところでは笑いを堪え切れませんでした。

 うん、何となく一本取った気分ですね。


「なるほどな、それじゃあ、そいつらは三人組に戻ったって事だな?」

「はい、多分そうなると思います」

「分かった、それとなく気を配っておく……それにしても、オーランド商店か……」

「何か、拙い事でも……?」

「まぁ、簡単に言っちまえば、金に飽かして色々やってくるって事だ、少し気を付けておけよ……」

「そう言われましても……」


 オーランド商店絡みで問題が起こるとすれば、間違いなくベアトリーチェとの仲が原因だし、僕からどうこうしている訳じゃないけど、フラフラしてるのがいけないんだよね。


「ふん、女の不始末は、男が始末するもんだぞ」

「はぁ……こういうの慣れてないんですよねぇ……」

「くっくっ、ならば勉強だと思ってなんとかしろ、でないとまた下宿の人達に迷惑が掛かりかねんぞ」

「はぁ……分かりました」


 やっぱりベアトリーチェの接近は防がないと駄目だし、路チューは拙いよね。

 次に会った時には、ちゃんと釘を刺す事にしましょう。


 ドノバンさんへの報告も済んだので、下宿に戻ってアマンダさんに事情を話して、先生達に持って行く差し入れを頼みました。


「まったく、なんて酷い仕打ちをするんだろうね、腕によりを掛けて作ってあげるよ」

「ありがとうございます、ただ、あんまり急にボリュームを増やすと体が受け付けないと思うんで……」

「分かったよ、料理に関しては、あたしにドーンと任せておきな」

「はい、お願いします」


 夕食まで、もう少し時間がありそうなので、眷属のみんなの訓練を見に行きました。

 ラインハルトを目印にして飛んだ先は、魔の森の随分と奥のようです。


『ラインハルト、ここは、どの辺りなの?』

『魔の森を南側に徒歩で二日ほど進んだ辺りですな』

『そう言えば、この辺りの地形ってどうなってるの?』

『カミラの部屋で地図を御覧になったでしょうが、魔の森は、南に行くほどに広がりながら、北の険しい山地から、断崖の続く南の海岸まで続いています』


 カミラの部屋でみた地図には、旧リーゼンブルグ、今のリーゼンブルグとランズヘルトしか描かれていませんでしたが、北は万年雪を抱く峻厳な山地で、南側は海だそうです。

 魔の森は、南側にある別の大陸へと続く陸地部分いっぱいに広がっていて、元々は、隣の大陸から、木の魔物トレントが大量発生し押し寄せて出来たものだそうです。

 南側の大陸は、魔物の支配する大陸と言われていて、魔物の大量発生は、南の大陸から押し寄せて来るものだと考えられているそうです。


『えっと、つまりは、より魔物の密度が濃い方向へ進んで来たって事なのかな?』

『いかにも、その通りです』


 オーク程度では相手にならなくなったので、実戦に即した連携を訓練する為に、更に強い魔物を求めて移動してきたそうです。

 この辺りには、腕利きの冒険者も足を踏み入れて来ないそうで、森は鬱蒼とした原生林で、まるで人の気配はしません。


 その原生林の中に、直径30メートルほど、ぽっかりと木の生えていない場所があります。

 良く見ると、生えていないのではなく、根本から切り倒されているようで、どうやら、ここが狩場のようです。

 森の奥からは、ガウガウと、アルト達が威嚇する咆え声が聞こえていて、暫くすると十数頭のオーガが姿を現しました。


 アルト達が狩場にオーガを追い込むと、影の中からツーオが飛び出して来てククリナイフを振るい、あっと言うまにオーガを肉片へと変えてしまいました。

 こうした演習を繰り返しながら、手に入れた魔石で強化を繰り返してきたので、ツーオの動きは、速さも、力強さも増したようで、動きを目で追いきれなくなっています。

 うん、みんなに襲われたなら、瞬殺される自信があるよ。


 アルト達も、更に力強さが増しているように見えます。

 能力に差が出来てしまうと困るので、マルト達を呼んで強化しましたが、もちろん可愛らしさが失われないように気を配りましたよ。


『ケント様、連携の訓練は明日までにして、明後日は、ザーエ達に馬車の扱いを教え、闇の曜日は昼のうちに全員を配置に付けようと思っております』

『うん、分かった、じゃあ、明後日は守備隊の馬車を借りられるようにするよ。 それと眠り薬の手配もしておかないとだね』

『ラストックの騎士達の巡回の時刻や、当番の騎士も洗い出してあります。 今の所は問題無しですな』

『三日後、万全の状態で作戦に臨めるように、準備を整えておいてね』

『了解ですぞ、お任せくだされ』


 下宿に戻ると、丁度夕食の時間で、アマンダさんは、差し入れ用に鍋一杯のスープと山盛りのサンドイッチを作ってくれていました。


「うわぁ、こんなにたくさん、ありがとうございます、後でお金は請求して下さい」

「いいんだよ、ケントには、何度も街を守ってもらってるからね、これはサービスさ」

「いやいや、こんなにしてもらっちゃ悪いですよ、下宿代に上乗せして払いますよ」

「いいんだよ、子供が遠慮するんじゃないよ!」

「でも……じゃあ、今度何か買って来ますよ、クッキーとかケーキとか」

「クッキー! 雌鶏亭のクッキーがいい!」


 クッキーと聞いた途端に、メイサちゃんが反応しました。

 もしメイサちゃんに尻尾があったら、ブンブン振り回しているでしょうね。



「はいはい、雌鶏亭のクッキーね、了解です」

「そう言えば、ケント、例のゴロツキ共はどうしたんだい、話は付いたのかい?」

「はい、きっちり話は付けてきましたので、フレイムハウンドの連中がちょっかい出して来る事は無いはずです」

「例のリボンは、役に立ったのかい?」

「はい、勿論ですよ」


 フレイムハウンドとの一連のやり取りを、リボンの使い方も含めて説明すると、アマンダさんは笑い転げ、メリーヌさんも口元を押さえて肩を震わせ、メイサちゃんは微妙な表情をしてみせました。

 たぶん、欲しかった綺麗なリボンの使われ方に納得できなかったのでしょうね。


 夕食の後は、ざっと汗を流して着替えてから委員長のケアへと向かいました。

 今日はマノンともベアトリーチェとも会っていないけど、汗臭いのは駄目だもんね。


「健人、ここに来る前に、他の女の子と仲良くしてたでしょ?」

「してないよ、今日は誰ともハグもキスもしてないからね」

「じゃあ、なんで今日は石鹸の匂いがするの?」

「今日は、あちこち動き回って汗かいたから、汗臭くないように、お風呂に入ってから来たんだよ」


 委員長は、じーっと僕の目を見詰めた後で、ようやく納得したようです。

 うん、全部僕の日頃の行いが悪いせいだよね。


「疑ってゴメンね……」

「ううん、日頃の自分を振り返ると、疑われても仕方無いかと……」

「うふっ、ホントだよ、女の子に会いに来るのに、別の女の子の匂いを二人分も付けてくるなんて、彼氏失格だよ……」

「か、彼氏……?」


 疑問を口にしたら、委員長に頬にキスされました。


「こんなに、いっぱいキスしたのに、違うの……?」

「えっと……それは……」

「ふーん……やっぱりヴォルザードで直接対決しないと駄目なんだね」

「いや……それは、その……」

「大丈夫、あと四日でヴォルザードに行けるんだもんね」

「ひゃい、そうなんですけど……」

「負けないからね……」


 エルナが戻って来るまでの間、委員長は僕の肩に頭を預けて、ぎゅーっと強く抱き付いていました。

 

 委員長の部屋を後にして、今度は先生達が拘束されている建物へと向かいます。

 驚いた事に、宿直担当の騎士は、酒瓶まで持ち込んでいて、チェスのようなボードゲームをやりながら、チビリチビリと酒を舐めています。

 自分で眠るのを待っていたら、まだまだ時間が掛かりそうなので、眠り薬を投与して退場してもらいました。


 宿直担当の騎士が寝込んだのを確認して、先生達が居る二階に移動しました。

 二階には、小さな常夜灯がいくつか灯されているだけで、夜目が利かなければ、かなり薄暗いようです。

 やる事も無く、昼間の訓練で疲れきっている先生達は、すでに床に入っているようです。

 バステンに調べておいてもらった、担任の佐藤先生の部屋をノックしました。


「先生、佐藤先生、起きてくれませんか……」


 ドアをノックして呼びかけても、すぐには返事はありませんでした。


「先生……佐藤先生……」

「誰……こんな時間に何の用です?」

「先生、国分です、差し入れを持って来ました」


 名乗った途端、ドアが凄い勢いで開けられました。


「国分君……あなた、無事だったのねぇ……」

「せ、先生、苦しい……」

「あぁ、ごめんなさい……えっ、でも、あなた、どうやって……まさか幽霊じゃ……」

「大丈夫ですよ、ちゃんと足ありますから、ほら……」


 佐藤先生にお願いして、他の先生達も起こしてもらって、共同スペースに集まってもらいました。

 同級生達の情報は与えられていなかったそうですが、僕の事は、一人で魔の森に向かい、もう魔物の餌食になっていると言われていたそうです。

 その僕が姿を見せたので、佐藤先生だけでなく他の先生も、僕が幽霊ではないのかと疑った後、良く生きていたと揉みくちゃにされました。


 差し入れのスープを温め、サンドイッチと一緒に食べてもらったのですが、まともに調理された物を食べるのも久しぶりだそうで、社会科の千崎先生などは涙を流して喜んでくれました。

 先生達が差し入れを口にして、人心地が付いたところで、これまでの状況と救出作戦について話をしました。

 船山が死んだ事を告げると、みんな言葉を失った後で、悲しみに暮れたり、怒りを露にしたり、感情を抑えきれない様子でした。


「という訳で、三日後の夜、多分このぐらいの時間になると思いますが、先生達を迎えに来ます。 その後、同級生達が居る駐屯地に移動して、みんなでヴォルザードを目指します」

「移動は、徒歩なのかい? 馬車を奪った方が速いんじゃないのかい?」

「移動には、馬車を僕の眷属のアンデッド・リザードマンに曳いてもらいます」

「馬じゃなくて、魔物に曳かせるのか?」

「はい、馬だと、馬車に繋ぐ作業が要りますし、指示を出して操る必要もありますが、僕の眷属ならば、馬車を曳く支度も自分で出来ますし、細かい指示を出す必要もありません」


 当日に驚かないように、代表してザーエを紹介したのですが、みんな腰を抜かさんばかりに驚いていましたね。


「ケント様の眷属で、ザーエと申します、お見知りおきを……」


 ザーエが流暢に言葉を話し、騎士の敬礼をして見せると、ようやく先生達も安心したようです。

 ついでと言っては何ですが、バステンとミルトにも出て来てもらって、紹介を済ませておきました。


「先生達には、ラストックの駐屯地に残っている同級生のクラス別のリストを当日に渡しますので、担任のクラスの点呼をお願いします」

「馬車は何台用意するんだ?」

「五台の予定です」

「もう一台増やせないか?」

「もう一台ですか……うーん……」


 保健体育の加藤先生が、馬車を増やすように言うのは、僕らの学年が六クラスだからです。

 六クラスを五台の馬車に乗せようとすれば、当然、何処かのクラスや、それぞれのクラスが、分かれて乗り込む必要があり、混乱する可能性があります。

 六クラスを六台の馬車に乗せるならば、それぞれのクラスに馬車を割り振れば良いので、混乱は少なくて済みます。


「一台だけ馬に曳かせるなんて無理だろうし、アルト達から何頭か選抜して曳かせるか……」

『ケント様、何なら私が曳きましょうか?』

「バステン、大丈夫……?」

『生身の頃では無理でしたが、今ならば何の問題もありません』

「分かった、それは戻ってからラインハルト達と一緒に考えよう。 加藤先生、それはちょっと保留にして下さい」

「六台用意するのが難しいなら、私のクラスを分けて乗せるようにするから、相談しなさい」

「はい、その時は、よろしくお願いします」


 先生達を一番最初に助け出すのは、場所が離れている事もありますが、同級生のみんなをまとめてもらう為です。

 五十人を救出した時は、リーゼンブルグの方でグループや班の構成をしていてくれたので、そのままでもまとまって行動できました。

 ですが、今度の場合は、そうした構成無しで、更に人数が増えるので、まとまって行動させるのに時間が掛かる可能性が高いと感じました。

 そこで、先生を中心にしてクラスごとに行動させようと思ったのです。


「それじゃあ、決行までに、また連絡に来ると思います、バレないように準備して下さいね」

「ドーンと大船に乗ったつもりで任せておけ!」


 一番若い古館先生が、胸を叩いて笑って見せると、他の先生達も笑顔になりました。

 でもね、それじゃあ駄目だと思うんですよねぇ……


「古館先生、そんなに元気な顔しているのは、今だけにして下さいよ。 昨日まで死にそうな顔してた先生が、急に元気になったら絶対怪しまれますからね」

「うっ……確かにそうだな、じゃあ……頼む国分、早く助けてくれ……こんな感じか?」


 古館先生は、死にそうな感じを演じてみせましたけど、かなりの大根ぶりで、他の先生からも苦笑いされていました。

 とりあえず、作戦当日までに連絡を入れる約束をして、ヴォルザードへと戻りました。

 さぁ、いよいよ本番という気分になってきましたよ。

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本当に心が狭い奴だと自己嫌悪に陥りそうです。 そうやって自省して態度に出さないだから他のアホ同級生より何年分も大人だよケント
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