第五十五話 校長先生の話って眠くなるよね
え、いきなりどうしたの?
今、部活の話でしたよね?何で急に生徒会?何より私まだ入学したて、ピッカピカの一年ですよ?制服だってまだまだ新品みたいですし……それは学年問わずか、金持ちばっかだもんな。
兎に角、生徒の頂点『生徒会』なんて入れる立場じゃないと思う。いやまず生徒会って入りたいです良いですよて入れるもんじゃないでしょうよ。
「カトレア様、話の意味がよく……」
「あぁ、ごめん!そうだよね」
「いいえ。あの、生徒会と言うのは?」
「私の友人が生徒会に居るんだけど、人手が足りなくてね……」
現在の生徒会には会長、副会長、会計二人に書記が一人の計五人。
少ないようにも感じるが、行事になれば学年クラスで実行委員を選出するので普段ならばそれで事足りるだろう。しかし、本来ならば後一人、書記がいるはずなのだと言う。
「でも生徒会の役員は通常選挙なんかで決めるものなんじゃ……?」
「選挙……?いや、うちは毎年上位貴族の中から選ばれてるよ?」
まさかの、この世界選挙無かった……!
でもよく考えたら王も貴族も世襲制だもんな。選挙いらないか。
「でも私はまだ入学して間もない一年生です。そんな私が生徒会だなんて、先輩方から選ばれた方が……」
「今の二、三年は一年の時に勧誘されて断った人達だからね、今更言っても仕方ないんだ」
「なるほど」
なりたい人ならすでに入ってると言う訳ですか。選挙がないから基本立候補、それで足りなければ先生や役員自ら勧誘に向かう、と。
生徒会って面倒なんですね。上位貴族でありながら過去一回も誘われなかったマリアベルは、やっぱり人望と性格の悪さかな。
「それで……どうかな?すぐに決めなくてもいいから一度体験してみない?」
「そんな軽くていいんですか生徒会」
体験って……生徒会って全校生徒の模範で代表ですよね?良いのかそれで、駄目だろ。
懇願する目が期待に満ちてて断り辛い……元々流されて生きてますからね、断るって苦手なんだよー。
「えっと……」
「一度顔を出してみるだけでも……ダメかな?」
美形のしょんぼりした顔に勝てると思いますか?
少なくとも、私は無理だ!
「……一度だけ、なら」
「本当!?マリアちゃんありがとうー!!」
さっきまでの悲しそうな様子は何処へやら、めっちゃ明るくなったカトレア様は私の手を握って笑顔だ。
変わり身早いな、予想はしてたけど。こう言う展開だと分かっていても騙されちゃうんだよ。カトレア様演劇部の王子様だし、一般人の私には見抜けないよねー。
私の座右の銘の一つ『諦めが肝心』。
「時間取らせちゃってごめんね。放課後、迎えに来るから」
「カトレア様がですか?」
「うん。頼んだ張本人として、エスコートさせて頂きます」
「でも部活……」
「今日はまだ台本が上がってなくて自主練なんだ」
それはつまり自主練の邪魔にはなっていると言う事なのでは……あ、でも元はカトレア様のお誘いだしな。よし、気にしないでおこう。
「それじゃあ、授業頑張って」
「はい」
片手をひらひらさせて去っていく姿も美しいなぁ。
背筋が伸びてる人は綺麗だって聞くけど、そこに顔面が備わってるんだから最強だね。
カトレア様を見送って、教室に戻ったらエルが私の席に座っていて、プリメラとサーシアと三人で喋っていた。
サーシアがどっかに行ってないかと期待してたけど……よく考えたら隣の席だもんな。
「おかえりー」
「おかえりなさい」
「ただいま」
「誰だった?ケイトさん?」
「いいえ、カトレア様」
ケイトの名前が他の人から聞こえてくると変な感じだな。一応歳上だから敬称がついてるのが余計に、そう言えば歳上だって事を思い出した。
エルが退いてくれたから、席に着いて次の授業の用意をする。次はなんだっけ、数学?
「カトレア様……って事は、マリアちゃん演劇部に入るの?」
「演劇部じゃなくて生徒会の勧誘」
「生徒会……?」
意味が分からないと言った様子で首を傾げる二人の気持ちは物凄く理解出来た。演劇部の先輩に会って生徒会に誘われるって何だそれ。
カトレア様はすでに一年生の間でも有名だから、余計に繋がりが掴めないのかも知れない。カトレア様と知り合いだって知った時もびっくりされたけど。
「生徒会の役員が足りないらしくて。カトレア様の友人が役員なんだって」
「あぁ、それで……確かに、今年は色々と大変そうだものね」
「え……?」
え、何それ知らないんだけど。カトレア様も何も言って無かったよ!?
「今年からルーナ王子が生徒会長になったから、役員の方も色々大変なんだってさ」
「……へ?」
サラッと爆弾発言が投げ付けられたんだけど。
エル、今誰が生徒会長だって?
「ルーナ王子は、まだ二年生じゃ……」
「王族は一年で副会長やって、二年で会長になるんだよ?」
え、当然でしょ?みたいな体で話してますけど知りません。何その王族補正、迷惑だから今すぐ廃止してくれないかな。貴族平民平等唱えるならちゃんと貫けよ!いくら綺麗事上等の保護者アピールだからって少し位護ってますを装え!貴族じゃなくて王族だから例外措置とかふざけろ!
と言うかカトレア様も言ってくれれば断ったのに……!
「入学式で挨拶してたじゃん」
「……そう、だったネ」
私が覚えてなかっただけの自業自得だったらしい。
だってサーシアに気を取られてて……入学式の話なんてつまんないから聞いてないよ。
放課後……どうしよう。




