第四十八話 誰にだって幼馴染みはいる
話して分かったのは、プリメラは男爵家の次女だと言う事。だから公爵家の令嬢である私と話すのに緊張していたそうだ。
そして、手芸が趣味だと言う事。 貴族の女の子としては正直珍しい。令嬢方は自ら作るよりプロに任せた方が確実だと判断する子が多いから。
令嬢と聞くと 裁縫やお菓子作りなど、可愛らしい趣味を持っていると思われがちだが、実際は作る過程ではなく出来上がりを楽しむだけだ。軽食くらいしか作れない私でさえ令嬢の中では『料理が出来る部類』に入るくらい、お嬢様の女子力は軒並み低い。
その点、プリメラはめっちゃ良い子そうです。皆が思い描く令嬢像、少なくとも私は物凄く好きなタイプ!あ、勿論恋愛的な意味ではないですよ。
いくら友達作りに必死だと言っても、性格が合わない苦手なタイプだったら無理する必要はない。そう思ってたけど、プリメラとは気が合いそうだと思う。
普通のご令嬢の趣味は、お茶会だったり外商を呼んでのショッピングだったり……ケイトの影響で園芸くらいしか趣味がない私には理解出来ん。
でもプリメラとは色々と話が合った。手芸についてはよく分からないけど聞いているのは楽しかったし、私の話も聞いてくれた。
まだまだ交流が足りないけど、少なくとも第一印象はとても可愛くて良い子だ。
出来ればもっと話してみたいんだけど……うん、ここは攻めの姿勢で!
「プリメラ様、お昼はどうなさるの?」
「お昼、ですか?」
今日はまだ二日目と言う事で授業は午前中だけ、内容も説明や配り物だけで眠ってしまいそうなほどつまらなかった。
高校二年を五回もやってれば、新入生とは言え新学期にする事くらい予想がつく。そして実際予想通りだったし。
さすがに入学二日目で居眠りなんてマネ出来なかったけど。ただでさえ私は目立っていると聞いたばかりなのに。
そうして何とか授業を終えて、私は隣で筆記用具を片付けているプリメラに声をかけた。
学園でお昼を買えるのは食堂と購買だが、寮の方にも食堂と購買はあるしオズタウンに出れば選択肢は無限大。
出来れば一緒に食べたいと思って声をかけたが、プリメラがどこを使うのか……何より先約があったりしないかな。
「私はこのまま学園の食堂に行くつもりなのだけど、良かったらご一緒にどうかしら?」
「え……?」
「勿論、無理にとは言いませんけど……」
「い、いえ!マリアベル様さえ良ければ、是非」
良かった、結構ドキドキだったんだよー。
ホッとして胸を撫で下ろした後、帰る用意を始めた。
今日貰った教科書何かはロッカーに置いていくとして……置き勉とか、ありだよね?ゲームのマリアベルはその辺きっちりしてたけど、持って帰るの重いし。あ、でも魔法学のは楽しそうだから少しずつ持って帰ろう。
私がロッカーで教科書の選別をしていると、後ろから声が聞こえた。二人分、一つはプリメラのでもう一つも女の子の。
振り返ったら、プリメラが鮮やかなオレンジ色の髪をした女の子と話してた。
「エルちゃんもお昼一緒に行かない?」
「……あたしは良いよ」
プリメラの方はにこやかに話しているから知り合いなんだろうけど、もう一人のオレンジちゃんの方は苦い表情でそっぽを向いている。
揉めてる……?でもプリメラは楽しそうと言うか、笑顔だしな……。
「プリメラ様、お待たせしました」
鞄を肩にかけて二人に近付くと、プリメラの方は笑顔で出迎えてくれたがオレンジちゃんの方は更に眉間にシワが寄った。
え、ごめん、なんかお邪魔でした?
「マリアベル様、こちら私の幼馴染みでエルメールちゃんと言います」
「まぁ……初めまして、私マリアベル・テンペストと申します」
「知ってる。テンペスト家のご令嬢で王子の婚約者候補でしょ」
「後者は全力で否定します」
何、そんなに噂になってるの?
本当にやめて下さい、下手したら鬼よりも嫉妬に狂った女の子よりも恐ろしい王子の幼馴染みさんが出るから。
「あの、もし宜しければお昼エルちゃんもお誘いしたいのですけれど……」
「プリメラ、あたしは……っ」
「勿論!大歓迎ですわ」
友達が増える可能性はいくらでも!
そして可愛い女の子は目の保養ですし。
エルメール……エルちゃんはつり目だけど愛嬌のある顔立ちだし、髪もショートカットで活発な印象の可愛い子。これまた学園では珍しいタイプだな。
「それじゃあ早速行きましょう。エルメール様も食堂でよろしかったかしら?」
「様なんて、つけなくていいよ。あたし貴族じゃないから」
「へ……?」
「ただの平民だから、あたし」




