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番外編 14 シャルルと桐谷さん

翌日の会議は無事終了。上手くまとまったのでホッとした。

皆がそれぞれ立ち上がって雑談を始めると、シャルルが待ってましたと言わんばかりに駆け寄ってきて私の手を握った。流れるような動作だ。


『スズ、やっと話ができるネ。今日はこの後、時間ある?

うちを見に行く? あ、お休みの日はわかった? デート、楽しみだネ』

『シャ、シャル。あの、そのことだけど・・』

状況が変わったことをなんて説明しようか私が狼狽えていると、桐谷さんが横からさっと私の前に出てきた。

こちらもさりげない動作でシャルルの手を私の手から引き剥がす。



「悪いがシャルル。汐崎への誘いにオッケーは出せない。

自分の恋人にちょっかいを出している男のところになんか、やるわけないだろ」


桐谷さんはそう言うと私の手からシャルルの手を引き剥がし、私にフランス語で伝えるよう目で合図してきた。


『シャル、えっと・・』

恋人、なんて単語を使う日が来るなんて・・とドキドキしながら、昨日想いを通じ合わせたのだと説明した。


シャルルは目をカッと見開いて叫んだ。

『ウソでしょ!? 昨日は恋人じゃないって言ってたのに!』

『ごめんね、シャル。桐谷さんには恋人がいるから諦めなきゃって思ってたんだけど、私の誤解だったの』

『なにそれ!? せっかくチャンスだと思ったのに!』

シャルルが私に腕を伸ばす・・よりも素早く、桐谷さんが私の前に出た。


「もう汐崎にベタベタ触れるな。俺の女だ」


俺の女だ、なんて訳すのは恥ずかしい。

なんてことを言わせようとするんだ。この人は。

口ごもって俯くと、桐谷さんがニヤッとイジワルに笑いながら、私の頬をすっとなぞる。

な、なにするんですか! と言いたくなるのをグッと堪え、両手で赤くなってるだろう自分の頬を隠すように押さえていると、シャルルがすごい勢いで私の肩を掴んできた。

綺麗な顔の、どアップに驚く。


『・・シたの? スズ。シャチョーさんと寝たの!?』

なんて質問するのよ、バカ!って普段だったら怒ってたかもしれない。

でもシャルルの目が鬼気迫るほど真剣だったから、勢いに押されて『うん』と答えてた。

そして、それを聞いたシャルルは『うわあーー!』と叫んでその場に蹲った。


『・・・スズの大事なバージン、ボクが欲しかったのにぃー!

ああ、なんてことだ! スズのハダカ、ボクも見たかったのに!』


頭を抱えて叫んでるシャルルを見下ろして、桐谷さんが「おい、なんて言ってるんだ?」と尋ねてくる。

え? これを訳すの?

無理無理無理。こんな変態発言、聞かなくていいよ!

なに言ってんの!? シャルってば。このエロばか!

寝たってそういうこと?

昨晩は一緒に寝たけど、その・・最後まではしてないのに、うんって言っちゃったよ。



「おい、鈴音?」

「・・っ」


さっきまで仕事の延長で名字で呼んでいたのに、急に名前で呼ばれて、スイッチを押されたみたいに昨晩の出来事が頭の中で蘇る。

目の前の桐谷さんのスーツの中のハダカを思い出してしまう。

勝手に頭に回想される、昨晩の出来事。


・・桐谷さんの声。息遣い。

触れ合う身体の熱。

何度も私の名前を呼んで、好きだって言ってくれた。

大きな手が私の身体をなぞると、触ったところからゾワゾワして熱くなって・・、もう、めちゃくちゃ恥ずかしくてやめて欲しいのに、だんだんおかしくなってきちゃって。

わけがわからなくなった。

怖いのに、やめて欲しいのに、逃げたいのに。

なのに、真っ直ぐに私を見て好きだって言ってくれるのが嬉しくて、女として求めてくれるのが嬉しいとも思った。


「鈴音、可愛い」「好きだ」「気持ちイイか?」「その顔、堪らないな」


桐谷さんはちょっと意地悪で、私が泣いてもやめてって言っても「可愛い」とか「大丈夫だ」って言ってちっとも止めてくれなかった。

・・まあ、もちろん本心から嫌じゃなかったけど。


けど、本当に、身体全部がどろどろにとろけちゃうかと思ったんだから!


あれは駄目だ。

あんなの、本当にみんなしてるの?

あんなことしてたら、おかしくなっちゃうよ。本当に、もう。


それなのに、最後に桐谷さんに言われた言葉は「これで終わりじゃないからな」なんだもの! どういうこと!?

あれ以上、どうなるっていうの!?

だって・・



「鈴音? 赤い顔して、ナニ思い出してるんだ?」

「!?」

耳元に息を吹きかけられてビクっと肩を震わせると、桐谷さんがニヤーっとイジワルな顔で覗き込んできた。

「な、な、なんでも、ありません!」

「ふうん? やらしいなあ、もう」

くすくすと楽しそうな桐谷さん。

うー、全部、見透かされてる。くやしい・・。


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