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番外編 13 (隼一) 抱きたい

パシッと頬に痛みを感じて動きを止める。

「ス、スミマセンっ!」


咄嗟に反撃してしまったらしい鈴音が青い顔して謝ってくる。

まあ、悪いのは初心者相手に調子に乗った俺だろう。

構い過ぎて猫に引っ掻かれた気分だな。


「別にいい。・・それより、キスは気持ちイイだろ。恥ずかしがることない」

ポン、と頭を撫でてやると、うー・・と唸ってる。

ますます猫っぽい。


「は、恥ずかしいに決まってます。なんか、桐谷さん、いっぱい触ってくるし。

ま、待って、って言ってるのに。なんで待ってくれないんですかぁ・・」


真っ赤な顔で恨みがましく俺を睨んでくる。

そんな顔は可愛いだけで逆効果だぞ。涙目がめちゃくちゃソソられる。


「ああ。お前があんまり可愛いもんだから、止まらなかった」

しれっと言ってやれば、鈴音はさらに顔を赤くした。


「私、れ、恋愛とかしたことなくて。初めてなんです。こういうの。色々と。

だから、その、もうちょっと、ゆっくり、進めて欲しいと言うか。

そういう知識も何も無いし、心の準備が整うまで待って欲しいと言うか・・」


焦りながらモゴモゴと俺に話す鈴音の様子がおかしくて、俺は笑いそうになるのを堪えた。必死だな。




そうだな。本当だったら、ここで引いて、大人の余裕を見せつけてやらなきゃいけないところなんだろうけど・・。

生憎、俺はそんなお優しい草食系じゃない。ガンガン攻めたい肉食系だ。

欲しいものは欲しい。

欲望には忠実に生きてきた。身体だけと割り切って過去には何人かの女とも付き合ってきた。

けど、好きな女との真剣なお付き合いというものは俺も経験がない。

一応、本人の希望くらいは聞いておこうか。

・・取り入れるかどうかは分からんが。

とりあえず、落ち着かせるために二人でソファに座り直す。



「鈴音、参考までに聞いておきたいんだが、お前は俺と、どんな付き合いをしたいと思ってる? 」

「どうって、言われても・・。私は、き、桐谷さんといられれば、それでいいんですけど」


一緒にいるだけで満足か。それはそれは。

俺は少しわざとらしく深いため息をついた。残念だ、と首を振る仕草付きで。



「お前には悪いが、俺はもう三十過ぎのオジサンだ。

ガキみたいな恋愛ごっこじゃ満足できない。

離れて過ごしてるならまだしも、手を伸ばしたら届く距離にいるのに我慢なんてできない。心も、身体も繋がって、満たされたい」


向かい合って、じっと目を見つめる。


「・・・鈴音。俺はお前を抱きたい。

知識なんていらない。俺が手取り足取りお前の身体にみっちり教えてやるしな。

お前の心の準備とやらが整うのはあと何分だ? 悠長に待ってやれないぞ」

「な、なんぷん!? ちょ、ちょっと、そんなっ・・」

押しに弱い鈴音は、俺の言葉にぐるぐると頭を悩ませているようだ。

もう少し押せばイケる。


「そんなに難しく考えなくていい。怖くない。気持ちイイことだ」

言い聞かせるみたいに耳元に囁くと、ぶるりと体を震わせた。耳が弱いのか。


「鈴音、・・好きだ。お前は?」

「・・きです」

「もう一度」

「すき、です。桐谷さん」

「ああ。俺もだ」


甘い言葉の後に柔らかくキスをする。

何度も何度もちゅっちゅと触れるだけのキスをして、舌でそっとなぞり、だんだん触れる面積を広げていく。

焦らずにゆっくり。じれったくなるキスを繰り返すと、こわばっていた鈴音の身体から次第に力が抜けていき、うっとりと身を任せてきた。


「そう。それでいい。

引っ掻くくらいはいいけど、殴るのはもう勘弁してくれよ」

「・・しません。もう。イジワルですね」

鈴音が拗ねたみたいにくちびるを尖らせる。

「鈴音が可愛いからイジメたくなるんだ。しょうがない」



抱き寄せて、少しずつキスを深くしていく。

吸って絡めて舐めて、甘い鈴音の口の中を掻き回すと、苦しそうな声が漏れる。それがなんとも色っぽい。

キスに気を取られてぼんやりしている隙に、鈴音の服を脱がしていった。

薄いピンクのシャツから出てきた肌は真っ白で、滑らかでみずみずしい。


自分の状況に気づいて隠そうとする鈴音の腕を掴んでシーツに縫い止める。


「やあ、き、桐谷さんっ! は、恥ずかしいぃ・・」

「大丈夫。ほら、キスは好きだろ? キスに集中しろよ。

あとは、俺に任せろ。気持ちいいって思ったら素直に感じるといい」

「そんなの、わかんな・・っ! やっ、くすぐったい! ・・んっ」


そのまま曝け出された素肌を、見せつけるように舌でなぞっていくと、笑いを含んだ声が艶っぽく変化していく。

ああ、堪らないな、これは。慣れた女ばかり相手にしてきたせいか、初心な反応が新鮮だ。まあ、それも、惚れた女だからか。



そのままじわりじわりと攻め続けると、許容範囲を越えたのか、鈴音はポロポロと涙を流す。

ヤメテと震えながら、俺にしがみついてくる。


ヤバい。・・・俺、どエスかも。

泣き顔、可愛すぎる。もっと泣かしてやりたい。俺の名前を呼んで泣かせたい。


「お前、最高だ。可愛い。・・・鈴音」


今まで味わったことのない昂りを感じる。

すぐにでも押し入りたい気持ちを抑え込み、鈴音のカラダにひとつずつ快感を教え込んでいった。



夜は長いから、ゆっくり味わわせてもらおう。



ムーンさまには行きません。すみません(^_^;)


次話は鈴音視点で翌日の場面になります。

この夜の続きは皆様の脳内で・・・よろしくお願いします。

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