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45 (隼一) 仕事だけでなく

最終回です!

あの日、やや強引にでも汐崎の実家に帰るようにさせて、良かった。

家族とのわだかまりが無くなり、あの日から汐崎は見違えるように変化した。

思い詰めたようなくらい表情は消えて、雰囲気が柔らかくなった。




そして今日もまた、二人で残って仕事をしてる。

パソコンから顔を上げ汐崎に目をやれば、パチリと目が合い驚いた顔をされた。でも、その後には・・・ふわりと笑ってくれる。


ああ、かわいい。


俺も頬が緩む。


・・・白状しよう。汐崎に惹かれてる。

たかが十八歳の女の子だと思ってたら、とんでもなくイイ女だった。

彼女から目が離せない。



まあ、汐崎にとっては俺は恋愛対象に成り得るのか、イマイチ自信がないのだが。

彼女が俺に向けてくれる視線は熱い。

だけどそれはあくまでも仕事に関してのもの。

俺を尊敬し、俺のように仕事ができるようになりたい、なんて嬉しいことを言ってくれる。

カワイイ奴だ。


でも、以前に比べて、俺を男として見てくれてるような気もする。

俺がしたことに対して、赤くなったり、慌てて逃げて行ったり、恥ずかしがっているような動きを見せる。それがまた可愛い。




変わったのは彼女の表情だけではない。

ダークグレイのスーツからシフォンのブラウスとスカートに装いを変えた汐崎は見違えるように可愛くなった。まだ慣れないのか、もじもじとしてる様子が堪らない。


汐崎の実家に行った後日、明るい色の、可愛らしい服が大量に送られてきた。

でかいダンボールの箱を開け、汐崎は目をパチクリさせていた。

添えられていた手紙によれば、汐崎が家を出てからの三年の間、母は買い物に行く度、娘に似合うだろう服をせっせと選んでいたらしい。

空っぽだったクローゼットが一気にいっぱいになった。

でも、これまでお洒落には無縁で生きてきたらしい彼女は、それらを持て余してしまったようだった。

「着たいけど、どう組み合わせていいか分からないです」と、明らかに戸惑っていたので、全身コーディネートしてやった。

俺が買ってやった服じゃないけど、俺が選んだ物で可愛く着飾るのは楽しい。


それ以来、「申し訳ないからいいです」と辞退する汐崎を押し切って、毎朝のコーディネートと髪のセットを勝手にやっている。



靴を・・買ってやりたい、と思う。

黒いハイヒールを二度脱がせてやったけど、ピンクのとびきり可愛いハイヒールを脱がせてみたい。変態クサイけど。

綺麗な曲線の脚だ。男なら目が行くのは当然だろう。








今まで、仕事は一人でするものだった。

一人で何でも出来ると思い上がっている訳ではない。

自分の仕事は自分のもの。それ以外を他の奴に託す、という意味でだ。


でも、汐崎と仕事をしていると、その境界が無くなるような感覚になる。

通訳をしてもらっている時でも、汐崎は俺の意図を読み取り言葉を選んで、付け加えて伝えてくれる。だから驚くほどやり易い。

もう、なくてはならない存在だ。

誰かに対してそんな風に感じるのは初めてだった。




「桐谷さん。今日の会議の議事録、確認してください」

「ん。ありがとう」

受け取った書類に目を通す。話し合ってる時には、汐崎が何を言ってるのかサッパリ聞き取れないが、こうして文書に起こしてもらえるとよく分かる。

「・・・やっぱり、お前は最高だな」

「え?」

「言葉の選び方、説明の上手さ、相手への返し方。本当に素晴らしいと思う。

汐崎と組んでから、取引の成功率もグンと上がった。全部、お前の成果だ」

「そ、そんな・・」

あわあわと手を振り、謙遜する汐崎。でも、頬は赤くて、口元も緩んでいる。

照れてるな、これは。


「これからも、一緒にいてくれ。頼りにしてる」

「はい!」

元気良く返事された。ピンと伸びた背筋、真っ直ぐ見上げる真剣な眼差し。



汐崎はまだ十八歳。

まだまだイイ女になるだろう。

ゆっくり成長を楽しませてもらうか。

まあ・・、あんまり可愛いと手を出したくなるんだが。



汐崎の情緒が発達するのを待ってるんじゃ俺もオッサンになってしまいそうだし、ちょいちょい意識させてやらないとな。


今度の土日は皆でショッピングじゃなくて、二人で水族館でも行くかな。

映画もいいか。

きっと、どこに連れて行っても汐崎は、目を大きくして驚いて戸惑って、でも最後には可愛い顔して笑ってくれる。

そんな反応を思い浮かべただけで顔が緩んでた。慌てて引き締める。




仕事が生き甲斐、仕事漬けの毎日だったけど、楽しみを見つけた。

こういうのも、いいものだな。

週末が楽しみだなんて、ガキの頃以来だ。






山本にはどこまでバレているのか、含みを持った笑顔を向けられる。


「ずいぶんと外堀から固めているみたいですけど、桐谷さん。

本人の気持ちをハッキリさせる前になし崩しで手出ししちゃダメですよ」

「・・・分かってる」

「あの子は、私達の大事な妹的存在であり、癒しの存在なんですからね!」

「分かってるって。・・・大事にしてるだろ」

「ふふふ。そうですね。今までの桐谷さんからは想像もできない過保護っぷりですものね。まあ、陰ながら応援してますわ。

何かあったら勿論鈴音ちゃんの味方ですけど」

「・・・」



強力な味方をつけたな、汐崎。

汐崎に早く俺を意識してもらえるようにアプローチしてかないと。

しばらくはこの曖昧な関係が続きそうだ。

まあ、それはそれで、楽しいかな。



これで完結です(@⌒ー⌒@)

たくさんの方に読んでいただき、うれしいです。

また、感想を書いてくださった方、本当にありがとうございました。大感激です!


まだ書きたいことが残っているのでいずれ番外編を書きたいです。


明日は、『戦場の女神と呼ばれるからには』の番外編を投稿します。よろしくお願いします!

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