くたばるときは前のめりで
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背中からどろりと体液が漏れるたび、体は確実に死へと向かっていく。
荒い吐息をこぼすたび、命が削られていく感覚がする。
熱に震え、痛みに歯を食いしばるたび、後悔の念が押し寄せてくる。
なぜ? なぜ? なぜ?
そんな思いがぐるぐると頭を巡る。
森を、自然を舐めたから? それもあるだろう。
しかし、根本的な問題はそこじゃない。
俺がひよったからだ。
体面を繕うため、命懸けの小遣い稼ぎをやることになった。
裏の美味しい仕事は、すでに事務所のやつらが押さえているからだ。
揉め事を嫌った俺は、そこで引いてしまった。
違うだろ。俺は裏ギルドの構成員になったんだろ! 恨まれようが、揉めようが、下の人間から仕事を奪うべきだったのだ。
いや、あいつらが率先して俺に美味しい仕事を回すべきだった。
それがなかった。つまり、舐められていたのだ。
それなのに、へらへらと……。
その結果がこれだ。
覚悟を決めたつもりで、甘さが抜けていなかった。
冒険者は舐められたら終わりだなんて言っておきながら、俺は犯罪組織に身を置いているのに舐められた。
だから、死ぬのだ。
こんな無様な死に方があるか? 必死にもがいて、肩肘張って、舐められないように頑張って……。
その挙句、俺の能力不足で舐められて死ぬのだ。
滑稽だ。あまりにも滑稽だ。
俺を観察している神も大笑いだろう。
いやだ。そんな死に方はいやだ。
助けてくれ、誰か。パピー、助けてくれ。
死にたくない、死にたくない!
助けてくれぇーーー!!
「たひゅけて……」
俺の必死の叫びに応えるほど、体に力は残っていなかった。
俺の口からこぼれたのは、なんとも情けない声。
自らの愚かさでくたばる馬鹿にふさわしい、間抜けな声だった。
だけど、この状況で何ができる?
生きたいと願うことは、救われたいと願うことは許されないのか?
ピンチのときに颯爽と現れたヒーローに命を救われる。
慰めに、そんな妄想をしてもいいじゃないか。
くそったれな現実に、せめてもの慰めを……。
このままくたばるには、あまりにも救いがないじゃないか……。
チリっと、焦げたような匂いが鼻を突く。
発熱とは別の、体の中から湧き上がる熱。
体に感じた熱は、自分自身への強烈な怒りだった。
救いがない? お前は祈って、何かに救われたことがあったのか?
転生前も、転生後も。
お前が本当につらかったとき、祈りはお前を助けてくれたか?
いいや、そんな経験は一度もない。
俺はいつだって、自分で自分を救ってきた。
手を貸してくれる人はいたかもしれない。でも、それは俺が自分で立ち向かったからだ。
泣き喚いて、すべてを他人に委ねて、ただ救われるのを待つ。
そんなザマで、今まで生きてこられたか?
地元のヤバい先輩に絡まれたとき。
空手の試合中に、足を骨折したとき。
派遣社員にパワハラするクソ社員を黙らせたとき。
お前は誰かに祈って、救われたのか?
違うだろ、ヤジン。
お前はいつだって、自分で自分を救ってきたじゃねぇか。
パピー、助けてくれ? 違うだろ、ヤジン。
パピーは危険な森の中、たったひとりで取り残されているんだ。
助けてもらうんじゃねぇ。お前がパピーを助けるんだろ!
体を無理やり起こす。
今まで感じてきた痛みを、すべて濃縮して脳に直接流し込まれたような激痛が神経を巡る。
食いしばりすぎて、奥歯が削れる音が聞こえる。
それでも、体は動く。
立ち上がると、ぶるぶると体が震えた。
痛みや熱のせいじゃない。
これは、アドレナリンが大量に分泌されているからか。
一歩踏み出す。
死ぬほど痛いが、さっきよりはマシだ。
アドレナリンが切れたときが怖いが、今はこれでいい。
救われるんじゃない。
俺がパピーと俺自身を救うんだ。
これは無駄な足掻きかもしれない。
苦しむだけかもしれない。
それでも、くたばるときは前のめりで。
カクヨム様で先行公開中。
こちらも、よろしくお願いいたします。
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