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野人転生  作者: 野人
欲望の都市

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くたばるときは前のめりで

コミック十一巻、発売中です!

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よろしくお願いいたします。

 背中からどろりと体液が漏れるたび、体は確実に死へと向かっていく。


 荒い吐息をこぼすたび、命が削られていく感覚がする。


 熱に震え、痛みに歯を食いしばるたび、後悔の念が押し寄せてくる。


 なぜ? なぜ? なぜ?


 そんな思いがぐるぐると頭を巡る。


 森を、自然を舐めたから? それもあるだろう。


 しかし、根本的な問題はそこじゃない。


 俺がひよったからだ。


 体面を繕うため、命懸けの小遣い稼ぎをやることになった。


 裏の美味しい仕事は、すでに事務所のやつらが押さえているからだ。


 揉め事を嫌った俺は、そこで引いてしまった。


 違うだろ。俺は裏ギルドの構成員になったんだろ! 恨まれようが、揉めようが、下の人間から仕事を奪うべきだったのだ。


 いや、あいつらが率先して俺に美味しい仕事を回すべきだった。


 それがなかった。つまり、舐められていたのだ。


 それなのに、へらへらと……。


 その結果がこれだ。


 覚悟を決めたつもりで、甘さが抜けていなかった。


 冒険者は舐められたら終わりだなんて言っておきながら、俺は犯罪組織に身を置いているのに舐められた。


 だから、死ぬのだ。


 こんな無様な死に方があるか? 必死にもがいて、肩肘張って、舐められないように頑張って……。


 その挙句、俺の能力不足で舐められて死ぬのだ。


 滑稽だ。あまりにも滑稽だ。


 俺を観察している神も大笑いだろう。


 いやだ。そんな死に方はいやだ。


 助けてくれ、誰か。パピー、助けてくれ。


 死にたくない、死にたくない!


 助けてくれぇーーー!!


「たひゅけて……」


 俺の必死の叫びに応えるほど、体に力は残っていなかった。


 俺の口からこぼれたのは、なんとも情けない声。


 自らの愚かさでくたばる馬鹿にふさわしい、間抜けな声だった。


 だけど、この状況で何ができる?


 生きたいと願うことは、救われたいと願うことは許されないのか?


 ピンチのときに颯爽と現れたヒーローに命を救われる。


 慰めに、そんな妄想をしてもいいじゃないか。


 くそったれな現実に、せめてもの慰めを……。


 このままくたばるには、あまりにも救いがないじゃないか……。





 チリっと、焦げたような匂いが鼻を突く。


 発熱とは別の、体の中から湧き上がる熱。


 体に感じた熱は、自分自身への強烈な怒りだった。





 救いがない? お前は祈って、何かに救われたことがあったのか?


 転生前も、転生後も。


 お前が本当につらかったとき、祈りはお前を助けてくれたか?


 いいや、そんな経験は一度もない。


 俺はいつだって、自分で自分を救ってきた。


 手を貸してくれる人はいたかもしれない。でも、それは俺が自分で立ち向かったからだ。


 泣き喚いて、すべてを他人に委ねて、ただ救われるのを待つ。


 そんなザマで、今まで生きてこられたか?


 地元のヤバい先輩に絡まれたとき。


 空手の試合中に、足を骨折したとき。


 派遣社員にパワハラするクソ社員を黙らせたとき。


 お前は誰かに祈って、救われたのか?


 違うだろ、ヤジン。


 お前はいつだって、自分で自分を救ってきたじゃねぇか。


 パピー、助けてくれ? 違うだろ、ヤジン。


 パピーは危険な森の中、たったひとりで取り残されているんだ。


 助けてもらうんじゃねぇ。お前がパピーを助けるんだろ!





 体を無理やり起こす。


 今まで感じてきた痛みを、すべて濃縮して脳に直接流し込まれたような激痛が神経を巡る。


 食いしばりすぎて、奥歯が削れる音が聞こえる。


 それでも、体は動く。


 立ち上がると、ぶるぶると体が震えた。


 痛みや熱のせいじゃない。


 これは、アドレナリンが大量に分泌されているからか。


 一歩踏み出す。


 死ぬほど痛いが、さっきよりはマシだ。


 アドレナリンが切れたときが怖いが、今はこれでいい。


 救われるんじゃない。


 俺がパピーと俺自身を救うんだ。


 これは無駄な足掻きかもしれない。


 苦しむだけかもしれない。


 それでも、くたばるときは前のめりで。

カクヨム様で先行公開中。

こちらも、よろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
なろうアプリで読みましたが、あっちはまだイイネ機能がないですね。 ペタンコ
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