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act.48「風紀委員と生徒会 その1」

 能力評価試験は特に大きな波乱もなく進行していき、気付けば試験3日目となっていた。

 1回戦を楽勝だと言っていた芽衣ちゃんの言葉は嘘ではなかったようで、彼女たち2人も何なく初戦突破を果たしていた。

 そして、今日はいよいよ2回戦が行われる。


 もちろん俺たちの試合もあるのだが……それよりも注目すべきは他にあった。

 そう。芽衣ちゃん・美衣ちゃんのペアと、成田・牧原ペアが対戦するのだ。


 もう既に、校内ではその話題でもちきりだった。

 無論、Aランク同士の戦いだというのもあるのだろうが……ここまで話題になっているのは、それ以上にこの2組がそれぞれ生徒会と風紀委員のメンバーだということが大きな要因らしい。


 確かに今までの生徒会メンバーとのやり取りから、風紀委員と仲が悪いのは知っていたが……まさかそれが、全校生徒を巻き込むレベルのものだとは思っていなかった。


 珠々奈が言うには、


「この学校で生徒会と風紀委員は同じくらい権力を持っているので、この2つは昔からずっと仲が悪いらしいんですが……今はそれぞれの組織にSランクがいるので、特に……らしいです」


 とのことらしい。


 つまり……この戦いは、生徒会長の『綾瀬薫』と風紀委員長の『三峰涼』の代理戦争みたいな様相を呈していたのだ。これだけ注目を集めるのも、頷ける話だ。


 ちなみにその試合は、今日の第7試合。俺と珠々奈の試合が第2試合だから、一昨日みたいに見逃すなんて心配は無さそうだった。


 俺たちの対戦相手はまたもやBランクなので、力を発揮できれば十分勝てる相手ではあるが……芽衣ちゃんたちの試合が始まる前に敗退しました、なんてことになれば格好がつかないからな。ここは慎重に――。


『――速水珠々奈の一撃が決まったぁー!! 対戦相手の2人は立ち上がることが出来ない!! 芹澤・速水ペアの勝利です!!』


 ――あー、なんか勝ったみたいです。


「よしっ」


 珠々奈は脇で小さくガッツポーズをしていた。


 なんか今日の珠々奈さん、気合い入ってんなぁ……。

 一瞬で出番の終了した対戦相手の子たちが、もはや不憫で仕方なかった。


「――これで私たちのほうは片付きましたね。残るは芽衣と美衣の試合ですが……」


 試合を終えた俺は、他の生徒会メンバーと合流するために生徒会室へと戻る傍ら――珠々奈とこんな会話をしていた。


「……いよいよあの2人の実力が拝めますね」

「うん……」


 成田さんとは戦ったことがあるけど、あの時は途中で止められちゃったし……何より一対一だったのでシスター契約の力を知ることは出来なかった。きっと今回の試合で見ることのできる彼女の実力は、あの時の比ではないだろう。


「悠里先輩は、どちらが勝つと思いますか?」

「え……? そりゃ、もちろん――」


 芽衣ちゃんたち、と答えようとして、言葉に詰まった。

 芽衣ちゃんと美衣ちゃんの力も、相当なものだ。それは、彼女たちに稽古と称して散々痛めつけられてきた俺だからこそ、断言できる。

 でも、それ以上に、成田さんと牧原さんの力は未知数なのだ。


 それに……元はと言えば、俺がこの試験に参加することになったのは、成田さんたちと対戦するためだ。つまり、ここで芽衣ちゃんと美衣ちゃんが勝利してしまうと、俺が出場した意味ってなくなるんじゃないか? それって逆にどうなの?


「んううぅ……」

「……なんなんですか、いきなり唸り出して」

「いや、どっちが勝つのがいいのか、よく分からなくなってきちゃって……」

「そんなの、芽衣と美衣が勝つほうがいいに決まってるじゃないですか」

「でもそれだと、私たちが成田さんと戦えなくなるし……」

「別に、それならそれでいいじゃないですか。吹っ掛けてきたのは向こうなんですから、もし対戦出来なかったとしても、私たちが気にすることじゃないです。むしろそうなれば私たちにとっては、楽に優勝が狙えてラッキーなくらいです」


 まぁ……珠々奈の言うことも一理あるか……?

 でも、成田さんたちが2回戦で終わるとも、なぜか思えないんだよなぁ……。


 そんな会話をしているうちに俺たちは、生徒会室へとたどり着いていた。


「お疲れーっす」


「あ、悠里ちゃんと珠々奈! 試合はどうだった?」


 部屋のなかに入るなり投げかけられた綾瀬会長の問い掛けに、俺はピースをして答えた。


「もちろん、余裕でした!」

「よし、えらいえらい……まぁ、結果は実況で知ってたけどね」


 じゃあ、なんで聞いたんだ。


「……あれ?」


 俺は室内を見回し疑問に思う。

 室内には、会長と利世ちゃんはいたが、双子はいなかった。


「芽衣ちゃんと美衣ちゃんはどうしたんですか?」

「ああ。もう会場に向かったよー?」

「そうなんですか? 早いですね」


 まだ、結構時間に余裕があるはずだが……。


「2人で作戦を練るんだってさ」

「へぇ……」


 あの2人、本気で勝ちにいくみたいだな。


「さ、時間になったら私たちも観戦しに行くよ――」


 そう言って、会長はニヤリと笑みを浮かべた。


「――風紀委員との、大事な一戦だからね」

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