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26.まずは装備から


「ではルタ、聞いて喜べ。我らが貴様に新しい仕事をくれてやる」

「おっ、おおおお仕事ですか?! ぼくに?」

「いちいち大げさにどもるな。うっとうしいぞ」

「すすっ、すみませえん……」


キリシマとルタのやり取りはまるでお笑い漫才か寄席で落語でも見ているようだ。少し横暴な主人のせいで涙目になりっぱなしのルタには可哀想なでこぼこコンビだが。と、バーレッドは苦笑いで見守る。

ぺこぺこと頭を下げるルタに対し主のキリシマは彼の顔に照準を合わせて分析画面を開くと、


「ルタ、貴様を我等のパーティに迎え入れる。悪漢(エネミー)討伐に同行してもらうぞ」


ビシッと天井へ指差しポーズを決めながら新しい仕事の内容を告白した。


「エーーッッ?!!! そ、そそそれって! ぼくがご主人さま方と一緒に冒険して戦うってことですかぁ?!!!」


キリシマの大胆な宣言にルタはきゅうりを見て総毛立つ猫のように驚いて飛び退き耳と尾を震わせる。


「そういうことだ」

「む、むりむりむり! 絶対むりです! 自分なんて! し、しし死んじゃいますよぉ!」


目から益々大粒の涙を噴出し鼻水のおまけつき。両手を顔の前で一生懸命振り、ルタは無理を連呼した。

「ふむ」と眉をひそめるキリシマの横でバーレッドも表示されたルタのステータスを覗き込み、彼が気後れしている理由を察する。


手伝い屋:ルタ・イィロソ。竜人族。回復士。レベル4。装備品なし。

特殊スキルは治癒魔法。対象一人のHPを30パーセント回復する技能。未強化。

加えて、アイテム類の管理倉庫機能。サイズや重さ問わず200個までの道具や装備品をカバンに所持出来る。

以上。


「確かに心もとないステータスですね……」

「そうでしょう?! わかってくださいますか? バーレッドさん!!!! でもこれが自分には普通なんです!」


ルタは声を大にして同意を求め訴えたが、バーレッドもキリシマの作戦に一度賛同した人間だ。ルタを戦闘要員に招き入れることに賛成できるかと言えばまだ首を傾げたくもなるが、何かしら彼なりの考えがあるのだろう。ともなれば、キリシマを信じよう。

バーレッドは爽やかな表情でルタの前に片膝をつくと、


「大丈夫。君を死なせはしないよ。僕らが守るから」


頭を垂れて彼の同行を乞い願う。まるで騎士の誓いのような上品な所作に思わずルタも泣き止んでたじろいでしまった。


「でっ、でもでも……っ!」

「貴様は死なん。我々がついているのだぞ?」

「う、うぅ~~……わ、わかりましたよぉう……」

「貴様の主人と友だ。安心しろ」


強い口調でバーレッドに続くキリシマ。緊張状態にくらくらしてきたルタの思考が揺らぐ。

命令を一方的に出すだけだった主達が自分に頭を下げて頼み事をしている。生まれてからこれまでに一度も見たことのない状態に、ルタも了承せざるを得なくなってしまった。

とはいえルタのパラメーターは低いどころではない。二人のプレイヤーと比べてレベルも天と地の差があり実戦経験もゼロ未満。

不安だらけで震えているルタを見て、バーレッドは心配していたがキリシマは自信に満ち溢れていた。頭の回転が早い彼はすでにこのことに対する処置を思い付いていたのだろう。


「そうと決まれば先ずは装備を整えることから始めよう」


キリシマが指をパチンと鳴らし、所持アイテム画面の一覧から譲渡を選択する。すると、ルタの両手に抱えきれないほどの装備品が乗せられた。



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