表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

小説家になろうラジオ大賞

約束していた年賀状だが、膝に矢を受けてしまってな

作者: 塩谷 文庫歌

旅の途中で立ち寄った小国。

良心的な通行料を支払うだけで入国が許可された。

冒険者は厄介者、歓迎されない国が大半なのだが。

武器防具を装備したままで素通り、これは異例だ。

つまり……噂ではなく、本当に魔王に狙われているのか?


「おい待て! そこのお前」


 到着早々、衛兵に呼び止められた。

 値踏みするような鋭い視線。年末で物入りな時期、言い掛かりをつけて小遣い稼ぎって魂胆か。思わず舌打ちしたが罰金よりは安上がり。少々握らせて追い払おうとした、その時だった。

 

「その顔、見覚えがあるぞ」


 なんだって?


 冒険者稼業は半分盗賊。心当たりが無くても先方様は恨み骨髄なんてことはザラだ。知らぬ間に指名手配されていたか?

 慎重にナイフへ手を伸ばしていく。


 が。

 鈑金兜を脱いで「フデマメだよ、覚えてるか?」と笑顔を覗かせた。名は初耳だが見覚えがある。数年前まで、墓荒らしや迷宮探索で何度か顔を合わせた同業者。さりげなくナイフから手を離し、握手した。


「故郷で家業を継いだが、人手不足で。色々と借り出されて窮屈な生活だよ」


 寂しい瞳で笑った。

 引退していたのか。



「昔はお前のように冒険者だったが……膝に矢を受けてしまってな」



 賢明な判断だ。


 膝を壊すと、速度と威力を奪われる。

 冒険者を続けていたら、次に落とすのは、命だった。


「だが、探していた()は手に入れた」


 本人は満足そうに「あれで家族が助かると良いが」と独りごちて腰袋を探り、「丁度良かった」と紙片を取り出した。

 フデマメの探し物に興味は無いが、自由と引き換えの衛兵暮らしで、家族を救えるなら上々だ。

 己より家族を優先する者は多く、それより多く喪った姿を見てきた。


「出しそびれていた、約束の年賀状だ」


 他愛の無い話題に出ていた。

 用件を直接書く、()()()()

 謹賀新年?


「いまさら年賀状、か? だが、この体では……な?」


 疎遠になっていた釈明。

 同意を求められても困るが……いや、待てよ?

 ()()()()()()()()()()()()()、そんな約束だった。


「投函しようにも、膝に矢を受けてしまっては、な?」


 が。

 どう考えても膝と年賀状は無関係。

 さっきもピンシャン歩いてただろ。


「今夜は1杯奢ろう。渡したい物もある」


 年始の挨拶、そんなに大事?

 酒を振る舞うほどのことか?





 ここは……城?

 衛兵だ、城の警備もするのか。

 酔っぱらってても、大丈夫か?


 夜の城内に俺がいて良いのか?


「よく来た、勇者よ。歓迎する」

「あんた、王様やってんのか!」

「この鍵を託そう」


 なんだこれ。


「鍵? あ~、鍵! 思い出したフデマメこれ()()()()()だな?!」

「これを使って、我が宝、私の娘を、悪魔の儀式から守って欲しい」


 あれが、膝をダメにした家族(原因)

 メッチャ可愛い~!!


 ん?


「家族って、お姫様じゃねぇか!」

「どうだ、やってくれるか? 勇者ケツプリン丸よ」

「はい、お引き受けいたします」

「ああ、ケツプリン丸さまっ!」

「っていうかさ? どこのどいつだ、変な()()()つけた奴ッ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なるほど、「膝に矢を受けてしまってな…」というネットミームがあるのですか。 冒険者は危険と隣り合わせな稼業なので、後遺症が残るレベルで負傷した場合のセカンドキャリアは確かに重要になってきますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ