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運命


入るときになんて声をかければよいのだろうか?

しきたりなんてわからないので、高校で職員室に入るように失礼しますと声をかけて入った


「えっ、」


中に入った途端相手からそんな声が漏れ出した

俺も相手の姿を確認し声が漏れた


「唯さん?なんでここに」


おかしい、

俺の頭に過ったのはそんな言葉だった

だって唯さんはそんな素振りなかったと思う

俺が不思議そうに唯さんを見ていると、


「まず、座ろっか」


俺は唯さんに促されて席に座った

毎日顔を合わせていたはずなのになぜか緊張してしまう


「ええっと、どうしよっか?」


「どうしましょっか?」


唯さんも俺と同じように緊張しているのだなとわかった

そして、本当にどうしよう

まさか相手が唯さんだとは微塵も考えていなかったので不思議とおかしいほど緊張してしまう


「唯さんはなんですお見合いを?」


緊張していたからか明らかにデリカシーに欠けた質問をしてしまった


「親がね、少し付き合いのある会社の人だから顔合わせぐらいしてくれないかってね」


「なるほど、」


どうやら唯さんの親の会社と家のお父さんの会社は知り合いだったらしい


「びっくりだよね」


そう言って笑みをこぼす唯さん

その笑みで俺も少し緊張が解れた気がした


「こういうのって何すればいいのかな?」


少し時間が経ったあと唯さんが困ったようにそう質問してくる


「俺もよくわからないです」


俺もわからないのでそう答えるしかなかった


「とりあえず外でも行く?」


唯さんに誘われて俺は快く頷いた



「まだそんなに時間経ってないのに懐かしいね」


さっきまで気づかなかったのだがきれいな着物に身を包んでいる唯さん

その姿に目を奪われてしまい反応が少し遅れた


「そうですね、10月頃ですもんね」


唯さんと並んで散歩をした

あまり会話はなかったけれど

それでも、それで良いと思えるような良い時間だった


「そろそろ疲れたね、休憩しようか」


その言葉に促され近くにあった椅子に座った


「やっぱり私ね相手が純平くんで良かった」


俺で良かったと言われると嬉しいがやっぱりという言葉が引っかかった

がそれは口に出せず話を続けた


「俺も相手が唯さんで良かったです」


唯さんの言葉と共鳴するように心から漏れた言葉を口から出した


「そっか、」


唯さんはそれだけ言うと黙ってしまった

だけどそこに悲しい雰囲気は含まれてなく

どちらかと言うと照れているのかと思った


今しかない、

唯さんに思いを伝えるなら今しかない

そんな考えが俺の頭の中を巡った

その考えが頭の中を一周し、また一周し、

そのたびに俺の心臓の音はドクン、ドクンと強くなっていく気がした




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