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文化祭とお見合い前日


どのぐらいの時間が経ったのだろうか、

それほど長い時間は経っていないような気もするし一時間ほど経っている気もする


「ん?どうしたの?」


俺が急に動き出したからか唯さんが心配するような声をあげた


「どのくらい時間経ったのかな〜って思って」


お見合いが決まった日からあまり唯さんの顔を見て話すことができていなかった

今回も座っている唯さんの足の方を見ながら話している


「15分ぐらいかな?」


唯さんはスマホの時計を見ながらそう答えた

俺と唯さんがこうし始める頃からずっと時計を見ていたわけではないので曖昧な答えになっていた


「そろそろ戻ります?」


俺がそう聞くと唯さんは残念そうに


「そうだね、みんな心配してるかもしれないし、」


と答えた




その場所から少し移動をした

移動中は唯さんに肩を貸してもらったり転ばないように手を繋いでもらっていた


「二人が無事で良かったけど、心配したよ!」


みんなと合流してすぐに俺は芽依さんに怒られていた、

急に飛び出してしまったのだ、怒られて当然だろう

芽依さんは俺のことを心配して怒ってくれた

そんな状況が嬉しくて失礼ながら笑みがこぼれてしまう


「なんで笑ってるの?」


隣から唯さんが不思議そうに聞いてきた


「俺あんまり人から心配されたことなくて、怒られることはもっと少なくて、昔はお母さんが良く心配してくれたなって思い出して」


「なんかそう言われると、」


芽依さんはそう言うと俺の頭をワシャワシャ撫でてきた


「はい!これで終わり、次からは気をつけてね」


その後は少し談笑をしたり

各クラスをまわったり、

あっという間に文化祭は終了した

保護者たちが参加する一般公開の思い出が強すぎて二日目の記憶はほぼなかった

というか松葉杖なのでほぼ動く気にならなかった



「ただいまです」


唯さんの家に帰ってきた

そんなに日付は経っていないはずなのにもうずっとそうしているような気分になってきた


「お帰り〜学校どうだった?」


家の中に入るとエプロン姿の唯さんが迎えてくれた


「疲れました、とても」


「もうすぐご飯できるから待っててね」


唯さんはそう言うと再びキッチンに戻った



そこから数分して料理が運ばれてきた

ご飯を食べている最中は特に何もなくいつものように雑談をしていた

明日お見合いに行かなければいけないのが嘘のようだった


「そういえば純平くん、明日出かけるんでしょ?車出そうか?」


唯さんは言葉を濁してそう聞いてくれた


「お父さんが車で来てくれることになっているので大丈夫です」


嘘のようだと思っていたのが見透かされたようだった

唯さんに聞かれた途端急に現実味を帯び始めた


「そっか、大丈夫なら良かったよ」


「心配してくれてありがとうございます」


定型文のような言葉を交わしたあと

何を話してよいのかわからなくなってしまった

さっきまで何を話していたかも

明日のお見合いどうなるんだろうか、

そう思いながら唯さんの方を見た


「…」


唯さんは悲しそうな表情をして黙っていた






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