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繰り返し

それから一時間ほど経った

事前に校庭で待っていた親たちが校舎に入ってくるのが窓から見ているとわかる


俺はあれからここでずっと窓の外を眺めていた

特に何かがある訳では無いがただ窓の外を眺めていた

せっかくの文化祭

このままでは良くないと思い松葉杖を片方だけ持って教室の外に出る

人が多いのは好きじゃないのであまり人がいないような道を通り自動販売機の目の前まで来た

文化祭なのにいつでも買える自動販売機というのもおかしな話なのだが各教室を周るのは

(今は人が多そうだから、あとで)

と自分の心に言い訳をして先延ばしにしている


カシャ、カシャ、カシャ、


自動販売機の中に100円玉一枚と10円玉2枚を投入した


ピピッ


紙パックのイチゴオレを選択する

出てきたイチゴオレを右足を地面に着かせないようにして屈みながら取る


移動に邪魔だからという理由で片方だけ持ってきた松葉杖を左手に持ち右手にイチゴオレをストローを刺して持つ

そのイチゴオレを少しずつ口に運びながら移動をする


不意に自分のクラスがどうなっているか見たくなってしまった

別に自分のクラスに行ってもおかしくはないのだがなぜか忍者のように隠れながら移動をした


やっぱり模擬店をやっているクラスがある階は異様なほど人が多い

気が遠くなるような思いでその人混みを見つめると

その中に見知った姿があった、

来てくれたんだ、

そんな思いが俺の胸に溢れた

信用していなかったわけじゃないが

小学校、中学校と俺の親は来てくれなかったので

唯さんが来てくれたのがとても嬉しかった


「唯さ、、ん」


俺が名前を呼ぼうとしたとき目の前に嫌な光景が広がった


「あ、お姉さんかわいいじゃん、ちょっと来てよ

家のクラス楽しいと思うよ、」


「ごめんなさい、人探しをしていて」


異様なほど人がいるのになぜか他の音が無くなったかのように話し声が聞こえた


「まぁまぁいいじゃん、はい、入ろーね、」


俺の頭には昨日クラスメイトの女子と話した内容が頭に浮かぶ


「ねぇねぇ、桜井くん、聞いた?」


「ん?」


「あの先輩の話」


「先輩って?」


「聞いてないの?」


「うん、特には」


「なんかこのクラスにその先輩が狙ってる人がいるんだって、」


「はぁ」


「それでその人と付き合うためかな?明日手伝いに来るらしいよ」


「へぇ〜」


「へぇ〜って気をつけなね、」


「ん?俺が?なんで?」


「だってまた優愛ちゃんといい感じなんでしょ?

その先輩いわゆるヤリモクってやつらしいよ

可愛ければ誰でもいいってうわさだけどね

ほら、優愛ちゃん可愛いから」


そのクラスメイトはそれだけ言って自分の作業に戻ってしまった


昨日は話半分で聞いていたのだが

今その話を思い出して、目の前の光景と重ねてしまう


「お姉さんさ連絡先交換しようよ彼氏いる?」


「いや、それは、」


「いいじゃんいいじゃん、はい、スマホゲット、

おっ、パスワードかけてないの?」



なんで人は大勢いるのに

なんでみんな話しているのに

なぜ、二人の会話だけ雑音ではなくしっかり聞こえるのだろうか、

唯さんは抵抗しているようだったけど

その人が唯さんの腰に手を回して連れて行ってしまった


何故か俺はその光景を冷静に見ていた

俺の体から血や涙がなくなったのかと

自分がロボットになったのかと

思うほど冷静に、


その直後

ものすごい吐き気が襲ってきた

近くのトイレに駆け込むと

松葉杖ともう中身の入っていない紙パックをその場に投げ捨てるように置いた


ただ夢中に、

ただ自分の気持ち悪さを無くすために

他のことを何も考えず

ただただ吐いた

嗚咽だけ出てその他は何も出なかった



その後俺は

紙パックと松葉杖を回収し

いつもの教室に向かった

何かをやる元気もなく

なく元気もなく

ましてやあそこで助けに行けるような元気も

なかったのは元気なのか、勇気なのか

その違いを考えることもできなかった

教室に戻った俺は

教室の真ん中に座り

ただ黒板を眺めた

ここじゃない何処かに思いを馳せるようにして

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