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大切なものは、


その後はいつものように唯さんと話したり一緒にゲームをしたり、

でも心ここにあらずのような感じだった

何をやっていても上の空


「大丈夫?疲れてるならもう寝る?」


唯さんは心配そうに俺に声をかけてくれた


「大丈夫です」


唯さんに手紙のことを話す勇気はでず答えを濁してしまう

その度に俺の心はモヤッとした



「純平くんゲームうまくなったよね」


二時間ほどゲームをしたあと唯さんが話しかけてくれる


「ありがとうございます」


俺はぼーっとしていて返事を適当に返す言わばロボットのような対応をしてしまった


「純平くん、なにか悩み事?」


「いや、」


「ねぇ、私じゃ力不足かな?」


「そんなことは、、」


「じゃあなんで話してくれないの?」 


唯さんの声が少し強くなった


「私って必要ない?」


「えっと、あっと、」


また逃げの答えを探してしまっている自分が嫌になる、

でもあの件を唯さんに話そうとするとストッパーがかかったように言葉が出なくなってしまう

本当は話したほうが良いことはわかっている

頭ではわかっているはずなのに

何故か心は理解できなかった


「ごめんね、熱くなりすぎたね、ちょっと外で頭冷やしてくるね、先寝てていいよ」


唯さんはそう言うと玄関の扉を開けて外に出ていってしまった


「待ってください」


俺にそんな事を言う資格はないのにとっさに口からそんな言葉が出る


唯さんを追いかけようとして立ち上がる

いつもの癖で右足から立とうとしてしまった

俺の右足は悲鳴を上げてその場にうずくまることしかできなかった


またやってしまった

また愛想を尽かされただろう

母親にも、あのときの優愛にも

俺には人に愛される才能はないのだろうか

いや、無意識に自分を守るための言い訳を考えてしまうようなやつに人に愛される資格なんてないのかもしれない


手紙を読んだときの不安の正体が少しわかった気がした

俺は多分唯さんと離れたくなかったんだろう

唯さんと一緒にいたかったのだろう


なんてこんなことを考えても後の祭りだった

残った部屋にはまだ熱がこもっているゲーム機と

動きたいのに動けない俺がいた

頭の中ではさっきの唯さんの悲しそうな声がずっと響いていた

本当に大切なものは失ってから気づく

俺は何回気づけば気が済むのだろうか

学ばない者は成長できない大馬鹿だ

そしていざというときに踏ん張れないやつはゴミだ

俺はその両方を併せ持ってしまった

本当に自分が嫌いだ



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