ゴールデンタイムにアニメ化できなくなりました
たまにつけてもらえる評価がやたら高くて泣きそうです。
部活の行き帰りの電車で掘り出し物の面白い小説を見つけたりするのは楽しいですよね。
魔法陣と魔法は判子と手書きのような違いがある。
その時のコンディションによって多少の威力や魔力効率が変動する手動の魔法に比べて、誰がどの様に使っても同じ魔力消費で精神力が要らず、同じ結果だけを出す魔法陣の有用性は高い。
だが、常に魔法陣を持ち歩くとかダサい、魔物との戦闘ぐらいで集中を乱していては冒険者などやってられないということで、冒険者たちには受けが悪い。
生活や大規模戦闘などでの戦術的価値は見過ごせないので、一つ新しい魔法陣を作り出せば一生遊んで暮らせるとさえいえる。
新しい魔法陣の開発は時間と資金と多大な労力が必要なので、簡単にはいかないのが現状なのだが。
どうして突然そんな話をしたのかというと、俺たちがウィザリアの王都の中心にある広場で水の魔法陣を使った噴水に見惚れていたからだ。
定期的に噴き上げられる水はその上下運動によって花や様々な幾何学模様を作り出していた。
科学で計算されつくしたものよりも、精密な魔法陣で描かれたそれの方がずっと幻想的だった。
「あなたたちは冒険者ですか」
おっとりとした男性が話しかけてきた。
冒険者だとわかったのは噴水に見惚れていたからだろう。
「ええ。すごいですね」
「この国にきた人は皆この噴水で足を止めてこの光景に見惚れるんです。私たちの国自慢の観光地の一つですよ」
そう言って誇らしげに微笑む男性はこの国のことが好きなんだと思う。
夜になるとライトアップされたりしないだろうか。
いかにもRPGのような石畳とレンガの町並みにところどころ施された魔導具の公共設備がアクセントのこの国は紛れもなく魔導国家だと実感した。
この世界の神は前世ほどではなくとも人間の世界に無干渉だ。
奇跡なんて何百年に一度しか起こらないし、人間や魔族のすることに何かルールを定めるわけでもない。
だから科学と同じように、魔法を発達させた。
自らを豊かにすることに、神を頼らない。
一部は神の権威を借りることで国というものを維持している国もあるが、神頼みではない在り方は実に俺好みだ。
さすがに完全に俺たちの住んでいた世界と同じレベルの文明を築いているわけではないが、生活する分にはギャクラやリューカよりも快適そうだった。
といっても、どこの国にも、表と裏がある。
表の恩恵である魔導具の店に俺たちはやってきた。
棚には細やかな装飾と魔石があしらわれた道具が陳列されている。
そこで俺たちは想像を絶するものを見た。
それはハート柄のレスラーパンツのようなものだけを身にまとい、目だけを隠す怪しげな仮面をつけたマッチョな男性であった。
しかも頭にはウサ耳がついている。そう、バニーちゃんとかがつけているアレだ。おっさんのウサ耳とか誰得なんだよ。わき毛が嫌な感じにアクセントになっている。
それだけならまだいい。いや、よくはないが耐えることができた。
もしかしたら中身はまともかもしれないからな。そんなことはないか。
そいつはこともあろうか俺たちが店に入ったことを確認すると、こちらを向いてこともあろうかこう言ったのだ。
「やあ、愛しのマイエンジェルたちよ。天使のゆりかごに御用かな?」
すぐに踵を返すことも考えたが、それよりも前にアイラが動いた。
腕輪からではなく、いつも持ち歩いている護身用の銃を懐から引き抜いて何の迷いもなく引き金をひいた。
パァン!
およそ王都の一等地にあるお店ではありえない音が響いた。
ある意味というか普通に暴挙なのだが、俺もやむなしと思えた。
「うおぉっ」
弾丸は狙いを過たず彼の肩口に向かって飛んでいった。
赤く風穴が空くことを期待したが、弾丸は肩口を貫くその前に見えない透明の壁に弾かれた。
おそらく条件指定型の結界だ。
結界には耐魔法結界というものはない。
純粋な魔力で攻撃してこられることはまずないし、純粋な魔力では属性魔法よりも威力が出ないからだ。
結界とは魔法と違い、よく解明されていない高位の術式の一つだ。
界術などと呼ばれる。
「ちいっ! 対物理結界か。厄介な物を。アイラ、マシンガン用意。結界が耐え切れない負荷をかけてしまえ」
「了解!」
うむ、前に俺のパーティーは誰もが躊躇わないだろうと思ったが、今ここで実証されたな。
アイラは躊躇うことなく腕輪に手をかけた。
むしろ俺が言わなければ、もっと威力のあるリボルバーとかを持ち出してきそうだったな。
「ちょっと待ちなさい!」
唯一の常識人のカグヤがアイラに制止をかけた。
後ろからアイラを羽交い締めにしている。
正面からなら百合百合しい光景になるのにな。
「どうしていきなり店で店主に発砲するの!」
「害虫駆除」
アイラ怖え。いや、けしかけた俺も俺だが。
「いやいやいや。銃もレイルに秘密にしとけって言われてたじゃない」
「でも本当に必要なときは自分の判断での発砲は許可されてるもん。今は本当に必要なときだと思った」
そうだな。こんな奴を社会にのさばらせておくわけにはいかないもんな。と実際は単なる理不尽な暴力にあたる行為をしておきながら、まるで正義の味方のようなことを思った。でも良いこのみなさんは真似しないでくださいね。とアニメならテロップが出る。いや、このおっさんが登場した時点でこの状況は映像化してはならない。
「レイルもけしかけない」
「ついノリでやってしまった反省もしてなければ後悔もしていない」
とまあこんな馬鹿なやりとりをしている間、店主のガチムチおっさんはこちらを見て意外な顔をしていた。
あれ? 襲われた側の顔じゃないな。
「ああすいません。今のはあれですよ、非殺傷の弾を飛ばすおもちゃです。うちのアイラがふざけました」
息をするように嘘をつくと、おっさんは俺らにこう問いかけた。
「お前ら……非合法反魔法ギルドの連中じゃあないのか?」
非合法の反魔法ギルド。これがこの国の裏側である。
魔法第一のこの国では、魔法関連の才能が全くないと生活しづらい。
魔導具や魔法陣の簡略化、魔石の利用方法などの研究や、純粋に魔法が中級以上だとかそういった能力だ。
もちろんそんなものがなくても、それ以外で結果を残したり、ばりばり働くことにより、認められている人物もいる。
だが、そんな者は一部であり、魔法関連の能力が低い者は差別の対象になりやすい。
そんな現状に異を唱えたのが、「反魔法団体」だ。
魔法に頼らない、誰もが才能、技能に左右されない国にしようという目標を掲げて立ち上がった。
とは言っても王族さえもが魔法至上主義のこの国において、そんな団体の活動が認められるわけもなく、"非合法"なのだ。
これだけ聞くと、まるで立派な団体のように思われるが、実際の活動といえば使えもしないくせに魔導具の買い占めをしたり、魔法関連の商品を扱う店に圧力をかけたり、優秀な魔法使いに刺客を差し向けたりだ。
つまりはその実態は単なるチンピラ集団である。
といってもこのおっさんがそいつらに対して関係があるなんて全然知らなかった。
おっさんにかまをかけたとかじゃない。単なる殺人未遂だ。
「詳しく聞かせてくれないか?」
「さっきの武器を持つあんたらになら……」
おっさんの話によると、おっさんは長い間この店を立ち退けだとか、店を売らないかなどと言って圧力をかけられていたらしい。
それをずっとはねのけていたのだが、3ヶ月ほど前から魔導具の素材になる魔石の輸入ができなくなったのだ。
どうやらこの国の西側に盗賊が増えて、危険度が高まったため、行商人が来なくなったというのだ。
魔石販売を行う商人たちもそれには困っているのだとか。
だがどう考えてもおかしいという。
それは魔石を積んだ馬車しか襲われていないのだ。
「魔石を強奪しているのはきっとあいつらの仕業です。このままではこの店も……」
「そうか……そんな理由があったのか。その格好もあいつらに脅されて……説明さえしてくれれば俺たちも攻撃しなかったのに」
「いや、アイラは説明どころか顔見るなり撃ったわよね。あんたも話させる暇なく追撃させようとしたわよね?」
「いえ、この格好は元からです」
元からかよ。そりゃあ団体も怒るよ。こんなのが優遇されて自分たちが叩かれたらそりゃあキレるさ。
「なるほど。事情はわかった。袖振り合うも他生の縁だ。攻撃のお詫びに俺たちがなんとかしてやるよ。それでチャラにしてくれないか」
「おお、いいのか!」
俺だってそんな人助けとかはガラじゃあないさ。
いや、犯罪行為をもみ消そうだなんてしてないよ? 本当だよ?
横でカグヤが呆れていたのを見て見ぬ振りをしながら計画を練る。
「よし、奴らのアジトごと中の奴らを皆殺しにしよう。悪事の証拠なんか後から探して見つからなければでっちあげるなりしてしまえば万事解決だな」
死人に口無しだ。いざとなれば奴らの内輪もめということにしてしまえ。
「そ、それはダメだ。俺のところはいないが、他の店では抗議にいった店員や店主、下働きなどが帰ってきてないんだ。人質にされてる可能性があるんだ!」
意外とこの店主、冷静だな。
だからこそ今まで切り抜けて残ってこられたのかもしれない。
「じゃあ人質の救出から先か。というか証拠がなくて国が動けないなら、人質さえ救出できれば被害者の訴えで国が大々的に動けるんじゃね?」
この前の奴隷商みたいに組織改造もいいけどな。
弱みを握り尽くしたあとで、美味しい妥協案でも持っていけば飛びつくだろう。
「そうね。まずはそいつらの情報を集めよう」
「ん? いつになく積極的だな」
こいつとは、なんていうかビジネスパートナーみたいな距離感がある。
こういうことに面白がったり、積極的に協力してくるのはロウやアイラの方が多いのだが。
今回は変態に協力するということであまりアイラは積極的ではない。
自分が発砲したということで、やめようとは言えないわけだが。
「理由はともかく、あんたが珍しく人の為になりそうなことを頑張ってるしね」
カグヤは変態でも大丈夫なのか。
もしかして過去に見たことがあって耐性がついているとか。
「お前らみたいなガキに大の大人が頼むのも示しがつかないんだが、本当に協力してくれるのか?」
ここで、「協力」とくるこいつの言葉選びは非常によい。
自分もなんとかするのに積極的に加わろうという意思が見える。
まあ、初対面の印象はともかく、こいつになら協力してもいいと確信させた瞬間だった。
「ああ。あくまで協力だけどね」
手紙は郵便局の設備、転送装置によって素早く届けられます。
安全かつ迅速で、郵便制度だけならば現代と遜色ありませんが、先行投資が大きすぎるのが問題で、民営化のメドは立ちません。
転送装置はテレポートとアポートを同時に行うタイプで、魔法陣の上30センチほどの空間同士を入れ替えるので、職員はまず初めに
「魔法陣の上には手紙以外絶対おくな。特に体の一部が入ったままで起動した日にはおしまいだと思え」
と忠告されるとか。




