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弱者は正義を語らない 〜最悪で最低の異世界転生〜  作者: えくぼ
最終章、争乱編

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183/200

崩壊

 彼らは亜空間を解いた。

 と、同時に周囲の反応を探って迅速に行動に移った。

 見張りをしていた男は機械族マシンナーズの姿を見るなり悲鳴をあげた。


「誰だ!」


 それに答えることなく、一人の機械族マシンナーズが攻撃した。重い物を、高い速度で、正確に。ただそれだけの、だがそれ以上に計算され尽くした動き。相手が反応するより速く、相手に致命傷を与える。全くの無駄もなく男の首が地面に落ちる。

 一人が向かえば他の個体は向かうことがない。同族が通信で密に連携を取れるからこその動きだ。誰かがいけば、他はいらない。そんな自信の表れだろうか。

 効率重視の殺戮劇が始まった。


「おい、応援を呼べ!」


 一人が叫ぶ。直後、喉に矢を受けて声も出なくなる。こひゅー、こひゅーと嫌な音を聞きながら彼は後ろに倒れこんだ。


「邪神様に連絡を……」


 手を伸ばした者はその先に自分の手首がもうないのを見た。綺麗な断面からは骨が見えていた。


 アイラも援護射撃こそするものの、人間が一人だけというのはややぎこちない。というのも、人間とはまるで可能な動きが違うのだ。

 あるものが邪神教徒の攻撃を防いだ瞬間、アイラが横から撃とうとしたことがあった。

 しかし攻撃を防いだ機械族マシンナーズはもう一本の仕込み腕を作動させて、そいつの頭を掴んだのだ。いや、掴んだつもりだっただけで、直後にそいつの頭は見るも無残なトマトになったのだが。


「ひいっ!」

「ナルマぁ!」


 だがそれはデタラメな、というわけではない。アイラの動きを邪魔しないように、それでいて的確に敵を捕捉していく様は駆け引きなどを一切抜きにした圧倒的スペックの違いが為せる技であった。アイラの銃弾は彼らに必ず躱され、時たま当たるかと思えばあっさりと弾かれる。それも敵と戦っている最中でさえ、だ。


「ちくしょぉ! 助けてくれぇ!」


 つまるところ、アイラは動きやすすぎて戸惑うのだ。

 信頼している仲間との息のあった動きとは違うが、何をしても直後に対応されるのはまるで自分が合わしてもらっているようで居心地が悪かった。

 実のところは機械族マシンナーズたちはアイラが戦っているのを楽しんでいたし、アイラの攻撃までうまく利用し、計算にいれて最も効率が良くなるようにと動いてはいるのだが、それがむしろアイラのメンタル面での妨げにさえなっていたというやや皮肉な結果でもある。高性能すぎる彼らの能力は、年頃の少女にして、仲間の役に立つことを喜ぶ冒険者の複雑な感情の機微にまでは及ばなかったということか。


「ぐわぁっ!」


 とはいえ、それは彼らが苦戦したわけでも、アイラが戦いに参加しなかったわけでもない。地下においての結果は圧倒的勝利である。下っ端程度では抵抗さえ許さずに葬られていく。たまに強いのが混ざっていても、逃げることはできずに一人、また一人と消されていった。

 残された牢屋から数人の捕虜らしき人たちを解放した。


「サーモセンサー、魔力感応オン。併用動作、生体反応検知。周囲ニ生体反応ナシ。現在階層ヨリ地下、反応ナシ」


 キノが機械仕掛けのデウス・エクス・マキナに報告した。


「コレヨリ地上ヘト向カウ。証拠隠滅起動」


 そんな音声と共に、死体がかき集められてきた。バシュゥ、と一人の腕から何かが放たれる。物言わぬ死体が焼き尽くされ、骨まで灰となった。攻撃手段として使わず、死体処理に使ったのは予備動作がやや大きいことと大量の死体を一度に処理した方が燃料を節約できるからだろうか。

 それを尻目にアイラはキノにあることを確認した。それはこの中に他の捕虜やレイルなどの仲間がいないかどうかだ。キノは首を左右に回転させて否定した。

 それを聞いたアイラは綺麗になった地下で、乱暴かつ大胆なことを提案した。


「面倒くさいなー。ねえ、この城、直接壊しちゃダメかな」


 もしもここにいたのがレイルであれば、その手があったか、と手を叩いていたことだろう。





 ◇


 俺たちは邪神との戦いを目前に、決意を新たにしていた。

 こういう体育会系なノリ嫌いなんだよな。そんな感じでダルそうにしているが、こういった士気高揚もバカみたいに強い相手と戦うには必要なことだと割り切って付き合っていた。


「本当なら各個撃破とかできたらよかったんだけどなー」

「各個撃破?」

「そうそう。せっかく空間転移なんてあるんだからさー。全戦力をわざわざ分断せずに、次々と全員で雑魚から落としていくのが一番勝率は高いんだよなー。代わりに他の場所の被害が大きすぎて提案できなかったけど」


 言外に各国の軍に役立たず、と言っているようなものだが、もともと下級魔物の集団か、人間相手を想定している兵士たちに災害級の魔物と下級の軍団の混成魔物軍に頑張れ、と放り出すのも非常に外聞が悪い。

 俺は周りを利用することはあれど、見捨てることはあまりなかったりする。かつて弱者であった自分としては、弱いことは悪いことではない、という意見を曲げたくはないからだ。


「で、この構成か」


 周りをぐるりと見渡す。

 アランはもちろん、カイ、聖女(セティエ)魔王姉(グローサ)にメイド長、魔王弟(グラン)まで出張っている。意外なのはアクエリウムからクイドの参戦である。エルフの里からは支援部隊が来てくれた。リオのお父さんを含めた獣人の族長が数人いる。リオやアークディア、ホームレスについてはロウやカグヤと共に他の場所についてもらっている。顔をよく知っているのはこれぐらいだった。


 他にも勇者候補が何人かいる。

 ラスボスを倒す時は四人だろう?

 そんなものを律儀に守る馬鹿がどこにいるのだ。

 いくメンバーそれぞれに見送りの人がやってきた。俺の場合はユナイティアの住人とギャクラの知り合いがほとんどか。


「一番死ぬのを嫌がるお前が、一番死にやすいところにいくとはな」


 ジュリアス父さんがそんなことをおっしゃる。今から頑張ってくる息子になんという言い草だ。死ぬとは微塵も思っちゃいないらしい。


「レイル!」


 呼びかけた方を見ると、二人の同い年ぐらいの男と女がいた。なんだか見覚えがあると思ったらキリアとカレンだった。指輪探しで迷宮探索の時にあった二人だ。

 この前は安否こそ確認したものの、サーシャさんの治癒とかで忙しくて挨拶だけで去ってしまったからなあ。


「おお! 擬神の時は大変だったな。あの時は忙しくてゆっくり話せなかったけど、また今度……」


「俺たちも連れていってくれ!」


 キリアが遮るように言った。


「あれから俺たち、必死で強くなったんだ! 俺たちだって戦える!」


「レイルに追いつきたくて……いっぱい頑張ったんだから! ……もう、置いてかれたくないの!」


 あー……そういや置いてったっけ。


「私だって戦えるもの。隣に立ちたいの!」


 必死で説得しようとする二人。

 なんだなんだとやや周りの視線が集まり、直後に何があったのかを理解されてしまう。心配そうに見守る者と、面白そうに生暖かく見守る者に分かれた。

 どう断るのか。そんな疑問の目を向けられてなお、俺は答えた。


「んー、いいよ?」


「ダメだって言われたって……えっ?!」


「だからいいよって。数は力だよ。できれば千人ぐらいで邪神袋叩きにしたかったんだけど、あまり防御力ないのを数だけ集めたってあっさり死にそうだしね。二人ぐらいねじこめる。だって俺、作戦指揮だし?」


 とんだ職権乱用である。

 だけど俺だって、こいつらの実力も把握せずに連れていって死なせるのも嫌だ。

 だからこう付け加える。


「でも危なかったら即帰すからな? 弱かったら、じゃない。戦えない、って思ったらだ。予告も警告もしない。俺の独断で即帰還させる。俺の空間転移ならそれができる。邪神を目の前にしていきなり気がついたらおうちだーなんてこともあるぞ?」


 というかこれは行くやつ全員に限った話だけどな。

 俺だって無理だと思ったら即逃げる。そりゃあもう、「俺帰るわ!」の一言がみんなの耳に届いたころには俺はもうおうちだ。

 そんなことにならないように頑張るんだけどさ。


「……わかった」


「私もそれでいい」


 そもそも邪神に挑むメンバーが最強から順に集めたとは限らねえしな。

 バランスよく、かつ他の場所にも対集団戦に向いた奴らを送り込んだからこのメンバーになっただけで。

 本当はカグヤとかロウとか連れてきたかった。超(俺の身が)心配。

 つーか邪神相手以外でロウとかカグヤとかサーシャさんとか知ってるメンバーがむざむざと死んでくるとか考えられない。


 それにしても、カレンは随分と可愛らしいのだけど、俺とアイラの関係を少し勘違いしているな。

 俺はアイラを隣に立つ、というよりはできることをなんでも任せられる、と思っている。結果としては背後を任せたりしているだけの話だ。


 最後にやってきたのはレオナだった。


「レイル様、私はユナイティア防衛の指揮にあたっているので祈ることしかできませんが、どうか、ご無事で」


 殊勝に両手を組んで上目遣いで懇願してくるレオナ。瞳は潤んでおり、その睫毛がそっと伏せられる。

 さすがにこれは演技ではないか。と憎まれ口を叩くのは、レオナから初めての心配らしい心配というものにどう対応していいかわからないからだったりする。


「あ、ああ」


「それとレイル様……いえ、帰ってきたらにしましょう」


 やめろそれは死亡フラグだ。

 こんな状況で口にできるはずもなく、やや嫌な予感をさせながら邪神の城の手前まで転移するのだった。





 ◇


 そこで俺たちは信じられないものを見た。

 いや、非常に納得もいくし、溜飲も下がる素晴らしい出来事なのだが、さすがにその非常識さは邪神といったところだろうか。


 転移した瞬間は確かにあった。

 俺たちが以前見たものと何も変わらないままそこにたっていて、城の周りを警備が取り囲んでいた。

 どこから奇襲してやろうか、幾つかある手段のどれを選ぼうか、などと思いを巡らせていたときのこと。


「なんだよ、あれ……」


 勇者候補の一人が呻いた。

 ごごごご、と嫌な音が地底から響く。

 地響きのような重低音は鳴り止むことなく、それが城から聞こえているとわかったときのこと。


「はあぁぁぁ!!??」


 邪神の城だったものが崩れ落ちて、瓦礫の山となってしまったのだから。

中の邪神さんは無事でしょうかね。


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