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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
リズワディア学園編
50/192

月夜、骸の行進【3】

「あれは……飛竜(ワイバーン)!?」


空を見上げた教師の男が悲鳴じみた声で叫ぶ。


「飛竜だと!? こんな、時に!」


それに釣られて見上げた者達は見た。空を覆いつくす、猛スピードて飛来する竜の群れを。


「なんと言う数だ……っ、これは、もはや群れなどではない!!」


「撃ち落とせぇっ!! 学院内には一般人も居るんだぞ!!」


魔術師達が一斉に杖を掲げ、上空に向け放出魔法を放つ!


炎、氷、風、雷、水、岩。様々な属性の砲弾がワイバーンにぶつかるも、ワイバーンはそれをものともせずに向かってくる。


「こ、こいつら……ゾンビだっ、ドラゴンゾンビだぁぁ!!」


暗闇の中、ようやく人の目で正確に捉えられたその姿は、身体のあちこちが腐敗した翼竜の姿。


「来るなっ! 来るなぁぁぁっ!!」


「馬鹿野郎っ、後ろだ!!」


「えっ? ぎ、がっ…あぎっ、ぎャああああアアアッッッ!!!!」


半狂乱していた教員の一人が、真上から急降下して来て背後に降り立った腐竜に身体を貪られ断末魔を上げる。

だが、その断末魔は響くことなく怒号に遮られる。


「ちくしょうっ、どんどん来やがる!」


「聖術師はどうした! 聖術師は居ないのか!?」


「後方で負傷者の治癒を……っ!」


「馬鹿野郎! 全滅したくなけりゃ今すぐ連れて来い!」


魔法を放ちながらジリジリと後退しながら魔術師達が叫ぶ。


だが生半可な魔法では、腐肉を守る竜の鱗さえ突破できない。


竜はお伽噺正しく、圧倒的な力を持って人間を蹂躙するのだ。

その身が朽ち果て、操られてなお、その存在は常人が越えられない大きな壁となる。




「『光の牢獄リヒト・ゲフェングニス』!」


突然、人を喰らおうと降下してきた腐竜達を光が包み、強力な魔力の檻となり動きを止めてしまった。


「これは……聖術!」


「来てくれたのか!?」


アンデットや、闇の眷族に対し圧倒的に有効な力を持つ、通常とは違う系統の魔法。

聖なる力を行使する魔法、聖術。

『光の牢獄』は、その中でも上位に属する簡易封印魔術なのだ。

ドラゴンゾンビに有効な聖術を使う聖術師の登場に、歓声が沸き立つ。


「お待たせ致しました! 神聖ウルキオラ教団が『代行者』ベルナデット、参上です!」


その歓声に答えるように空中から降り立ったベルナデットは華麗に名乗りを上げ、双銃を構えた。


ガゥンッ、ガゥンッ!


轟音と共に放たれた魔弾が光の牢獄に捕らえられていた数体の腐竜の頭を吹き飛ばし、一瞬で行動不能に追い込んだ。


「代行者流強化術式、『聖王女(アーネスト)』!」


右手に持った魔銃『ミストルティン』の撃鉄を引き、ベルナデットは銃口を自分のコメカミに突きつけトリガーを引いた。


ガチッ。


振り下ろされる撃鉄と、その撃鉄を受け発動する魔術。


ベルナデットの身体が一瞬光った次の瞬間、ベルナデットは空中、それも腐竜の目の前に居た。


「ちょいやーーっ!」


どこか気の抜ける掛け声と共に振り上げられた片脚が、腐竜のアギトを砕き、一撃で腐竜を仕留める。


「まだまだです!」


肉塊と化し、落下をし始めた腐竜を足場に、ベルナデットは更に高く飛び上がり、遥か上空で旋回する数百の腐竜達の前に躍り出た。

腐竜達が、自分から現れた獲物(ベルナデット)に食らい付こうと翼を羽ばたかしベルナデットに群がって来る。


四方八方に腐竜達が群がる中、ベルナデットは身体を捻りながら両手に持つ魔銃の引き金を、恐るべき速さで連続で引いた。


「とやあああああぁぁーっ!!」


腐竜を一撃で屠る魔力の弾丸が弾幕のように放たれ、群がって来た腐竜の頭を砕き、鱗を穿ち、翼を貫き、あっと言う間に十数体の腐竜を幾百の肉片へと変える。


「―――ふんっ!」


滞空時間が過ぎ、落下し始めた事に気づいたベルナデットが、自分の落下するであろう地点に向け『フェイルノート』の銃口を向け、撃鉄を引いた。


ガチッ。


撃鉄が振り下ろされ、魔術が発動すると銃口から光が放たれ地面にぶつかる。


「死しているが故に恐怖を覚えない、と言うのは弱点でもあるんですよ?」


重力に引っ張られ落下して行くベルナデットは、何処か近くで今回の事件を眺めているであろう下手人を思いクスリと笑う。

ベルナデットが言う通り、目の前で十数体の竜が瞬殺されたと言うのに、腐竜達は落下する獲物(ベルナデット)にまたしても群がる。

その獲物は、自分達を一瞬で肉塊に変えることができる存在だと言うのに。


ガチッ、ガチッ、ガチッ、ガチッ。

ガチッ、ガチッ、ガチッ、ガチッ。


双銃の撃鉄を降ろしトリガーを引くそれを四度繰り返し光を様々な方向、場所に撃ち付けながらベルナデットは落下する。


腐竜の(アギト)がベルナデットを捉えようとするが、口内に直接魔力弾を叩き込み、頭を吹き飛ばす。


が、数が多すぎる。先程瞬殺した数を、軽く凌駕する数の腐竜が落下するベルナデットに追いすがる。


「……我らは神の使徒、神罰の『代行者』。その意味を、知れ!」


ベルナデットが言い終わるや否や、ベルナデットの背後から、数える事すら億劫になるような数の光の条が伸びて腐竜達を貫いた。


一撃はそれほど強くない。竜の頭を貫きはするものの、破砕には至らない。だが、まるで無数の槍に突き上げられたように光の条に貫かれ腐竜達の動きが縫い止められた。


スタッ。


落下をしていたベルナデットが空中で半回転し、地面に着陸する。

乱れた髪を払い、魔銃のシリンダーマガジンから役目を果たした薬莢を弾倉から排莢しながらベルナデットは光の槍に貫かれた腐竜を見上げた。



「『無垢なる聖槍イノセンツェ・ランツェ』」


 

四肢を、脳髄を、翼を、悉くを貫かれた腐竜達が、肉片を残さず(・・・)消失した。


無垢なる聖槍イノセンツェ・ランツェ。聖術において頂点に位置する最上級広範囲浄化魔法。

本来三人以上の聖術師が発動のために数分かけて詠唱することが最低限の発動条件とされてる大魔法。


それをたった一人で、ベルナデットは魔銃を用いて発動させた。


からくりを明かすならば、計九発放った光が、一発目に着弾した光は中心点。そして其処を軸に八角形になるように地面に打ち込まれたのだ。


上空から見たならばそれはまるで巨大な魔法陣のようで、真実魔法陣であった。


詠唱を必要としない魔銃を利用し、大量の魔力とある程度の広さがあれば発動できるようにした大魔法は、本来降り注ぐものであったが、地上から延びる草花のように天に延びて、死霊を貫き、魂を沈め腐した身体を灰へと変えた。


「……まさか、これだけやっても半数に届かないなんて思いもしませんでしたよ」


薬莢を一発一発装填しながら、ベルナデットは大きなため息をついた。

アンデット、そして闇の眷属に対して絶対的な殲滅力を誇る一撃を持ってしても好転しない状況にベルナデットは軽く呆れた。


「後は各属性の魔法に『聖王女(アーネスト)』、『聖騎士(パラディン)』が二つづつ。……ケチらず『無垢なる聖槍』を補充しておけばよかったですよ。……ってああっ!? そんな事を言っている間に『聖王女(アーネスト)』が切れてしまいました! あう~、高価な弾がどんどん消耗していきますぅっ。……!?」


食費を削らねば……と涙ながらに決意したベルナデットは見た。

先ほどまで自分が居た、遥か彼方の空を飛ぶ何かを。


「あれは……人?」


細長い何かに一列に跨った三人の女性。ローブを着て居る事からここリズワディアの関係者だと分かる。


そしてベルナデットはまたしても見た。二人の女性に挟まれ真ん中の位置の女性の、その身体の大きさに対し圧倒的なまでの大きさを誇る、その胸を!



「……間違いない。あの子がヤシロさんの言っていた、『選ばれし少女』! イケナイ、このままじゃ間に合わなく(・・・・・・)なる」


眼を魔力で強化し望遠鏡に届くほどの視力を得たベルナデットの眼は、眼鏡を掛けた少女を捉え、捉えた瞬間にベルナデットは駆け出していた。

聖属性を持つからアンデットに圧倒的に有利なベルナデットさん無双状態です。伊達や酔狂でシスターはやってない、という事でしょうか(笑)

そして勇はまだまだ出てこない。


感想お待ちしております!(返信できてませんが、ちゃんと読ませていただいてます!)




ps:

(以下先代勇者は隠居したい(仮題)とは全く関係のない話題になります)




少し話題が遅いですがインフィニット・ストラトス、八巻ようやくでましたね。ISの二次創作をやってた(更新できずエタってます)身としては嬉しいのやらなにやら、困惑しております。

そしてまさかのとある人物のナノマシン疑惑!

いやぁ、私の二次創作のでもナノマシンを自身に投与してるって設定だったので驚きです!

……まぁ私がそうかもと思っただけで真実違うかもですがね(笑)



四ヶ月ぶりに更新しよっかな……(笑)





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